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「ポーンクラスかぁ……うーん」


 学園では目指す職種や扱えるアビリティの種類によってクラス分けが行われている。しかし、そのクラスが完全に個々で独立してしているかと言ったらそうではない。評価性の一面も孕んでいるのだ。


 上から、


 一定の魔法力を有することを条件とし、王政に携わる職種に就くために政治や国のことを中心に学ぶキングクラス。

 貴族や国に土地を収める領主の立場にある者を育成するクイーンクラス。

 騎士団や自衛団を育成するルーククラス。

商人や商業を生業とする者を育成するビショップクラス。

 魔法化学を主とし、国の発展に貢献できる者を育成するナイトクラス。

 その他、広い範囲で学び魔法力を養うことを目的としたポーンクラス。


 カナリア先生から教えてもらったクラスの知識は、大雑把に説明するとこんな感じだ。


 私は『補助魔法』のアビリティ()()を使えることになっているから、有無を言わさずポーンクラスになったのだろう。

 けど……、ピアノたちと離れちゃうのは寂しいなぁ。


 しかもこのクラス。

 あんまり評判が良くないみたいじゃない?

 どうやら、目指す職種に適正のない者はポーンクラス行きになるらしい。

 つまり、あぶれちゃった人たちのクラスってことよね?

 先行き不安だわ……。


「ライムはポーンクラスかぁ……。まぁ、今の状況からしたら妥当なんだろうな」

「僕は……ライムさんのこと尊敬してるからね!」


 シオンとジュエルはなんだか励ますように声をかけてくれる。

 シオンたちの後ろをちらりと見ると、確かにポーンクラスになった人たちは軽蔑の目で見られているようだ。

 視線が厳しい。

 ん?……何やら本を持って魔法を唱えている。


「この後は各自寮に戻って明日の準備だったな。俺も寮に戻るが……ライム、何かあったらすぐ言うんだぞ」


 本を持った少年がどこに駆けていくのかと目で追ったが、はたとシオンと目が合ってしまった。


 彼は目を細めて心配するようにこちらを覗き込んで「聞いてるか?」と言うと「まぁ、ライムなら大丈夫な気もするな」とふっと笑った。

 ジュエルも手を振って「何かあったら、魔法でドーンだよ!」と一言言うとシオンについていったようだ。

 ……ジュエル、さすがにそれはだめだよ。



「やっぱり、立場的にあんまりよくないのかな?」


 寮に向かうゴツゴツした石段の階段を登りながらピアノに聞いてみる。

 クラス発表を聞いた学生は皆、寮に戻っていた。


「そうねぇ。良いとは言えないわね……。ふ、でもねライム。安心していいわ!この私がいるんだもの!」

「えと……どういうこと?」

「あら、さっきの『マキア』を見なかった?特例として私は自由にクラスを行き来できるのよ!」


 さっきの、ということはやっぱりピアノのクラス分けのところに何か書いてあったのだろう。

 ピアノは仁王立ちで腰に手を当ててどやっと威張っている。

 まさか……?!


「王女様権限?!」


 ピアノはニヤリと笑った。


 そして「ライムが寂しいかと思ってね!」と勇ましく背中を叩かれたのだった。

 痛、さすがお姫さまだわ……!

 聞くと、ピアノはクイーンクラスに属するが特例として私が入っているポーンクラスにも顔出してもいいよってことらしい。

 王女様はなんでもありね。


「ライムは素敵な銀髪だし大丈夫だとは思うけどね。それじゃあ、私は大事な準備があるから……!」


 寮の部屋の前に来るとピアノは嵐のように去っていった。

 ……何の準備だろうと思ったけど、聞けなかったな。

 でも、ピアノと一緒に授業を受けられるのはありがたい。知っている人がいるのは心強いわ。


 私も明日の準備をすることにしよう。


 まず、必要になる『魔術書』と『歴史書』、『算術』に……『倫理書』。これに目を通しておくんだったっけ?


 うつらうつらしながら木のテーブルに肘を立て、本に目を通していく。

 ところがそんな眠気も、3冊目の『魔術書』を開いたところで目が覚めた。


 ……あー。破けてる、わね。


 はたから見るとなんの変哲もない本だけど、分厚い表紙をめくるとズタズタに引き裂かれている。『隠蔽魔法』と『切断魔法』がかかっていたんだわ。

 さっき、シオンたちの後ろでこそこそやっていた人かしら。


「ふぅー」


 くだらないわ。

 そんなことをして何になるっていうのかしら。

 力を持つ故に恐れられたり、酷い目にあったりしたけど……力が弱くても虐められるのね。


「普通に生きるって難しいのね」


 今まではモルモットにされるかゴロゴロするかのどちらかだったから、みんなが生活するような普通が正直わからない。

 その生活が……少し楽しみでもあったのだけれど。


 そんなことを小さめの木のベッドに横になって考えていたら、随分時間が経ったようだ。

小さな窓からは月明かりが差し込むが、外はもう真っ暗だ。

 ガタガタと窓を閉めると、入り口の方に人の気配を感じる……。


「誰……?」






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