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38 自覚しましょうね




「何をしているのですか?……」

「アレスさん……!」


 はっと後ろを振り返るとそこには呆れた顔をしたアレスさんが立っていた。いつもの服装とは違い、金の刺繍が入った白のマントで身を包んでいる。ああ……今の会話を聞かれていたらしい。


「あら、アレス先生……。実はライムさんが……」

「フヒヒ……カナリア先生。ライム殿……いえ、ライムさんは少々特殊でして。プレートには『補助魔法』のアビリティしか記載されていませんが、複数の『補助魔法』を使えるのですよ。今の魔法も『補助魔法』の一つです……」

「そ、そうでしたか……。随分と特殊な魔法を使うのですね。まぁアレス先生が言うのであればそうなのでしょう」


 カナリア先生は渋々という感じで、無理やり納得したようだった。確実に今のは私がやらかした……。それをアレスさんがフォローしてくれたんだ。どうやら、アレスさんは学内でも高位に立っているらしい。服装もカナリア先生より豪華だ。アレスさんは護衛だったはずだけど、教員も兼任しているのかな?


「ところで、ライムさん」


 キッとアレスさんはいつものニヤニヤをやめて私の方を睨んでいる。シオンたちは「あーあ」と哀れみの表情で見ている。うう……。


「は、はいっ……」

「少しよろしいですかな? ヒヒヒ……カナリア先生、ライムさんをお借りしますね」

「ええ、しかし事務的な説明はまだですので後ほど連れてきてくださいな」

「わかりました」


 私、どこに連れて行かれるのでしょうか。


「ライムさん着いてきてください」


 そう言ったアレスさんの後ろを着いていき、廊下の先の角部屋まで来た。

 そっと部屋の案内文である『マキア』に触れると「『特別教務室』……部屋には防音魔法が施されており、室外にいる者は一切の干渉ができない……』と記されていた。


「ヒヒヒ……ライム殿」


 アレスさんと私は部屋の硬い椅子に座る。うん、予想はできていますよ。

 私とアレスさんは向かい合うと、少しの間沈黙が訪れた。アレスさんが最初に口を開く。


「自覚が足りませんね」

「はい……」

「ヒヒヒ……あなたの目的はなんですか?」

「学園を卒業することです……」

「それはあなたの事情がバレても問題ないと?」

「いえ……」

「あなたはご自身でも知っている通り……ああ、わかっていないのかも知れませんが……普通ではありません。魔法力は常軌を逸している。それでも、軽々しく……魔法を使うとはどういうことなんでしょうねぇ」

「すみません、でした……」


 ぎゅっと自分の拳を握る。

 そして、アレスさんは続ける。


「あなたの魔法はあなたが思うより遥かに強大です。それを赤の他人が知ったらどうなるか、あなた自身が身をもって知っているのではないですか? だから、隠していたのでしょう?」

「はい……」

「フヒヒ……いや私がどうこう言うつもりはありませんがね……これでもあなたを守る立場にあるのですよ」

「アレスさんが?」

「ええ、国王に頼まれましてね」


 そういえば、国王様の手紙にアレスさんを特別教員に就かせると書いてあった。


「アレスさんはピアノの護衛さんでしたよね?」

「あなたの護衛にもなりましたよ、ヒヒヒッ」

「わぁ」

「間抜けな返事ですな」


 アレスさんはやれやれといった風に顔を横に振った。でもなんで国王様が私を見てくれるんだろう?魔法力があるから?


「もちろん、あなたが特殊であるから護衛についたのもありますが」


 私の考えを汲んだようにアレスさんは答えてくれた。


「フヒヒ……ピアノ様と仲が良いからです」


 その答えは予想外だった。


「……ピアノ様は王女であるが故、親しい友達というものを作られませんでした。ですから、やっとのことで身分を隠して学園の入学試験に忍び込み、ライム殿に出会ってから、ピアノ様は大層喜んでおられました。命さえも救われピアノ様にとってもはやライム殿は大切な存在なのでしょう……」

「ありがとう、ございます?」


 ピアノがそんなことを思っていてくれたなんて……。お礼を言わなくちゃいけないのは私の方なのに。


「つまり、ピアノの友達だから、私も守ってくれるということでしょうか?」

「……そうですな」

「ありがとうございます」


 今度はしっかりお礼を言えた。


「それより……ライム殿には魔法の基礎を学んでもらわねばなりませんね……フヒヒ……あなたは無知すぎる」

「申し訳ないです……」

「手紙にも書いてあったように、私はあなたの特別教員となります。魔法時計が赤く光る日にまたここの教務室にきてくださいね……」


 アレスさんはニヒッと笑ってテーブルに頬杖をつくと、もう片方の手で私に魔法時計を差し出した。






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