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37 学園探索




「この青白く光っているものは何ですか?」


 ライムは手を伸ばしちらっとカナリア先生を見て尋ねる。

 しかしカナリア先生が答える前に私の手はその焔に触れてしまった。手先の焔は静かに揺らぎ、『文字』へと姿を変えた。


『エントランスホールーー学園の玄関口にある広間。赤い絨毯の中央には移動魔方陣が仕組まれており、集団での移動が可能となっている。移動魔方陣は学園外にある門へと通じる。集団で外出を希望するものは受付で申請を通すこと。他に、雑談スペースが設けられており学園の者は自由に利用可能。また、宣伝スペースには申請が通った内容のみ掲示することができる。詳細は……』


 どうやらこの青白い焔は学園施設の案内書の役割を果たしているようだ。目の前につらつらと青い文字が流れて、目を通した文字から消えていく。


「学園は広いですから迷ったり、不明な点があればこの『マキア』を開くと良いでしょう」

「『マキア』って言うんですね。あの……カナリア先生」

「何でしょう? ライムさん」


 いつも生徒から質問を受けているのだろう。カナリア先生は淡々とした様子だ。目つきが悪いのはもともとなのかな?


「この『マキア』は『投影魔法』でしょうか? すごいですね。焔に文字が組み込まれていて、それが魔力に触れると投影されるようになってる……!」


 今触って見てわかったけどこれを作った人はかなり柔軟な発想をしている。

 本来姿を映すだけの魔法なのに文字を焔に記憶させてから、魔力反応を通して指定した空間に投影されるようになっている。


 ……すごい!学園は私の知らない魔法で溢れているわ。魔法って色んな使い方ができるのね……。


 今までは何となくのイメージでしか使ってこなかったから新しい魔法が新鮮だし、楽しそうだ。

 でも期待とは裏腹に先生の反応はあまり良くないんだよね。


 ライムは先程カナリア先生に黒髪をいじられたことを気にしていた。


「触っただけでわかるのですね……。ええ、これはここの教師が作ったものですわ。この学園は基本的に教師が力を持ち寄って作られていますから、こんなことで驚くようではライムさんやっていけませんよ」


 カナリア先生はちょっと驚いた顔してからふんっと長い髪をなびかせた。


「あっ……じゃあさっきの魔獣の置物も……何かしらの意味があるのですか?」


 ジュエルがおどおどしながら後ろからちらっと顔を覗かせて聞く。カナリア先生の尖った目つきはぱぁっと柔らかくなって、「その通りですわ!」と言った。私と対応が違う……。


「実際の魔獣の心の臓を埋めてあって、不審な者がいたり危険を察知すると術者の意思に従って動くようになっていますの」


 カナリア先生がジュエルの方を見ながら生き生きと話している。するとシオンがボソッと耳元で教えてくれた。


「恐らく髪色のせいだろう。魔法力の高い魔術師の中では黒髪は『黒き魔法』を白髪は『天帝魔法』を使える者が多いと噂されているんだ。あくまで統計だから、事実ではない……。けど、そういうの信じる人もいるってことだ」

「『黒き魔法』は……」


 疎われているの?と聞こうとして止めた。

 シオンは嘘がわかる。私がそれを聞いたら、『黒き魔法』がどんなものは私が知っているのがばれてしまうだろう。それは、よくない。


「俺もあまり聞いたことはないけどな」


 シオンの優しさなのか話ははぐらかされてしまった。良くない魔法であるのは知られていることなんだろう。


 白髪と言えば、アレスさんも『天帝魔法』を使っていたような?……確かに綺麗な白髪だ。ジュエルもそうだ。じゃあ、ジュエルも『天帝魔法』を使えるかもってこと? それってすごい!! あ、でも噂なんだっけ……。



 その後、私たちは各部屋をまわっていった。

学生寮や食堂、ホール、魔法遊戯施設、特別学習室、職員室、図書館に、格闘訓練室などたくさんの施設があったけど、何故だか出会った人の視線は冷たかった。髪色のせいなのかなぁ。染めちゃおっかなあ。


 魔法事務管理室に向かう途中でライムは髪をいじりながら考える。今後あんまり髪色のことで騒がれるのはよくない気がする。私のメンタル的にもね……。


 ……減るものではないし、いっか!染めちゃお!

 そう思って、


「『変色魔法(ディスカラレイシャン)』」


 とこっそり唱えた。


 唱えるとライムの髪色は黒から美しい銀髪にふんわりと染まった。

 アレスさんやジュエルの髪色より若干銀色を入れてみた。一緒っていうのも変だし。銀色ってかっこいいわ。


 すると、魔力を感じて振り向いたカナリア先生があんぐりと口を開けてこちらを見ている……。

ちょっと綺麗にしすぎたのかな?と思っていたら、


「なっ、えっ……!!!あなたは『補助魔法』しか使えないはず……!!それも『黒き魔法』ってことなの?!いえ……違うわ。黒い覇気が出ていない……。まさか複数アビリティ持ち?! そんな情報はなかったは、ず……」


 目を白黒させて早口で言葉を並べていた。


「あっ、えと、うあ……」


 しまった……!!!簡単な誰でも使える魔法だと思って油断していた……!!アビリティをいくつも持っていることは普通じゃないって!!私は『補助魔法』しか使えない話だったって!!




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