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31 わぁ、そういえば人見知りだった




 王国に向かう馬車の中。

 ライムと護衛についたアレスは向かい合って座っている。

 アレスさんとちゃんと向かい合うのは初めてだ……。


「…………」


 馬車の中は思ったより狭い。

 目と鼻の先にアレスさんの横顔がある。


「…………」


 じぃーとアレスさんを見つめていると、「む、ライム殿、どうかしましたか?」と尋ねられてしまった。


「あっ、いえ、なんでも……」


 反省、見過ぎちゃった。

 苦し紛れに質問してみる。


「あの……アレスさんは、『創生の魔術書』をご存知ですか?」

「…………」


 宮廷魔術師のアレスさんなら何か知っているんじゃないかと思って聞いてみたんだけど、アレスさんはニヤニヤするばかりで質問には答えてくれなかった。

 困ったぞ。この空気に耐えられないぞ……。


「ライム殿」


 と思っていたら向こうから話しかけてきてくれて「はひっ!」と思わず変な返事をしてしまった。


 アレスさんは宮廷魔術師だったから、『創生の魔術書』とかトードリッヒさんのことも知っているかもしれないと思ったんだけどなぁ。むむう。

 アレスさんは私の考えとは異なることを聞いてきた。


「ライム殿は王に何を願うのですか?」

「えと……私からお願いできるものなのでしょうか?  王から与えられるものだと思っていました……!もちろん、お断りするつもりではありましたが……」

「フヒヒ……なぜ、断るのです?」

「ほしいものもありませんし、私がもらっていい資格などありません」


 これは自分で言っていて落ち込むなぁ。

この力があっても役に立たないんだから。

 だからこそ、魔術書を探すくらいならできると思ったんだけどね、魔術書はどうやら私に解けるみたいだし。


「ライム殿は学園に入学すると言っていましたね?」

「ええ、そうですけど……試験自体が延期になってしまったので、また受け直すつもりです」


 試験の日程はまだ未定という話だった。

魔術書も当分探しに行けないかもしれない。まさか、学園に忍び込んでまで危険を犯すこともないだろう。デメリットが多すぎる。


 それにしても、何故か私の方が質問ぜめにあっているわ。普通の会話ってどうする……の??


「あ、の……えと、アレスさんは、トードリッヒさんと言う人をご存知ありませんか?」


 今度は私から違う質問をしてみる。

やっぱりアレスさんは何か知っているみたいだし、あわよくば情報が欲しい。


 アレスさんは相変わらず変な笑い方をしているが、さっきと比べてもかなり変だ。うん、顔が強張っている。ん……?と思ったらすごく険しい表情なった。どうやら、質問を間違えたらしい……。


「トードリッヒという名をどこで……?」


 今度は笑ってない。


 アレスさんは前のめりになって膝に腕をおき、金色の瞳は深く光った。


「え……と、たまたま森で会って……」

「森で??」

「はい、あのそれで、魔術書のことを教えてもらったんです。必要としていたので、私がかわりに探すことにしました」


 アレスさんの様子がいつもと違うからなんだか、詳しく話すのはやめておいた方がいい気がしてきたわ。いや、話して助力してもらったの方がいいのかしら?トードリッヒさんは秘密に〜なんてことは言ってなかった、けど! んーー!!


 悩んだ末にトードリッヒさんのことをアレスさんに伝えたのだけれど、やっぱり反応は薄くて「そうですか……」と真顔だった。アレスさんが笑わないこともあるのね。


「そろそろ……着きますよ」


 アレスさんはその後結局一度もフヒヒと笑わなくて、気まずい空気の中私たちは王宮に到着した。

 きっとやらかしたんだわ……。


 アレスさんと話して何か手掛かりを掴もうと思っていたライムはがくりと肩を落とす。



「ライム殿」


 馬車から降りようとした時、アレスさんから再び声がかかった。


「王への挨拶が終わりましたら、私と決闘しませんか?」








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