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25 目標をもらった気がしたよ




「私……私は、レイラちゃんとあなたのために、『創生の魔術書』を……探すわ』



 思っていたよりもその言葉はするりとライムの口から出てきた。


 言葉に出してようやくもやもやした自分の気持ちに気づいた。

 レイラちゃんをこのまま、この世界に閉じ込めておくなんて……やっぱり私にはできない。


 レイラちゃんはここでもパパと一緒なら楽しいって言っていたけれど……たぶん、トードリッヒさんの命はそう長くない。呪いを受けた者は遅かれ早かれ、普通の人より早くしんでしまうのだ。


 トードリッヒさんがいなくなった時レイラちゃんは、ひとりぼっちになっちゃう……。


 ライムはレイラちゃんが「ひとりぼっちはさびしいよ」と言っていたことを思い出した。


「その言葉を、どれだけ待ち望んでいたか……」


 トードリッヒさんはガタッと立ち上がり、わなわなと震えながら半歩足をライムへ向けた。


 トードリッヒさんが魂なき者たちを追い払うのにも限界がきていたのかもしれない。きっと、初めから私にお願いするつもりだったのかな……。


「お会いしてすぐに高圧的な態度をとってしまったこと、お許しください……」


 そういえば、初めて会った時のトードリッヒさんはやけに上から目線だったわね。


「脅してお願いを聞いてもらうのも一つの方法……よね?」

「ははは、ライム様が放漫な方であった場合はもとより頼むつもりはなかったのですよ。いくら、力を持って願いを叶えることができても、温厚な方でなければレイラも安心できないでしょうし……」


 本当にレイラちゃんのことが大切なんだな。

 少しだけ小さい頃を思い出して、本当のお父さんの姿がちらりと脳裏をかすめた。

 忘れたい記憶なのに、それは鮮明に私の中に残っている。


「ライム様」


 トードリッヒさんは隣まで来て、黒い手のひらをポンッとライムの頭の上に置いた。


「力を持ちすぎる者は、疎まれ、拒絶され、恐怖され、崇められ、自由に暮らす権利などもとから無いように、皆その力を求めるでしょう」


 低くて安心感のある声でトードリッヒさんは言う。

 ああ、以前にもこうやって……あの人に頭を撫でてもらったことがある……。


「トードリッヒさん……」

「辛いでしょう……。苦しいでしょう……」


 ………っ。

 幼い頃の記憶、痛み、恐怖……。

 そして、力を持つが故の苦悩。

 

 トードリッヒさんはそれを知っていてくれる。

 それだけで十分すぎるほどーー。


 ライムは床の方に目線を落とす。

 なんだろ?目頭が熱い……。


「しかし、あなたの優しさに救われる人はきっといます。あなたの魔法は、きっと誰かを幸せにする。私たちがそうであるように」


 トードリッヒさんはそっと手を下ろすと、


「私たちの願いを引き受けてくれて、ありがとう……」


 と、微笑んだ気がした。




===




 私が『創生の魔術書』を探すにあたって、トードリッヒさんからいくつか教えてもらったことがある。


 一つは、

『創生の魔術書』は各所に点在していること。


 同じ場所に何冊も保管されていないそうだ。

 これは、あまりにも重要な知識であるため国が秘匿しているからだそう。

 よって、力の乱用を防ぐためその存在も国王と何人かの宮廷魔術師しか知らない。


 魔術書は厳重な秘匿魔法がかけられており、信頼された宮廷魔術師しか解くことができないという。


 トードリッヒさんもその1人だったようで、ここリバーシの世界にある『第3巻 黒き魔法について』は王国区アーライザの王宮内から、盗んできたんだって。


「幻をかけておきましたから……」なんてトードリッヒさんは言っていたけど、バレるのは時間の問題じゃないのかなと思う。



「あと私が知っている限りでは、学園区スラスルナの学園内と魔法科学発展区ミザリの研究施設内に一冊ずつありますね」


 ドキリとした。

 魔法科学発展区ミザリには良い思い出がない。


「ミザリには母のライラが向かって捜索しているでしょうから、ライム様には学園区のスラスルナをお願いできますか?」


 よ、良かったぁ……覚悟はできてるけど、いきなりミザリに行くのにはハードルが高すぎる。

 こんな気持ちじゃ駄目だな……と思いつつもライムはほっと胸を撫で下ろした。


 ん?学園区って……?





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