113 堕としモノ
『あれ?』
「どうしたの?おねえちゃん」
長い髪をなびかせながら、ライムは辺りを見渡すが特に異変は感じない。
おかしい。今、絶対何か……。
『いえ、あのね、一瞬だけ魔力の反応があったような……』
「ほんと!?」
どうして何もなかったのに……。
あぁ、こんな時、『叡智魔法』だったら助けてくれたのかしら。
そんなことを思いながら、『探索魔法』の範囲を広げる。
そこで見つけたのは思いもよらないものだった。
『心臓……』
地面に散らばる大量の血とひとつの血塊。
私とレイラちゃんは魔力反応があった場所まで大急ぎで駆けつけたところだった。
『これ、こ、これはもしかして……』
「おとうさん。おとうさんの……!!」
『まだ動いているわ!!』
「…………っ」
ドクンドクンと脈打つ塊からは確かにトードリッヒさんの魔力を感じる。
さっきまではなかった。
気配も、魔力も、存在すらも感じなかったというのに……。
『レイラちゃん、平気?』
冷や汗を感じながら、隣にいるレイラちゃんに声をかける。
こんなに生々しいものに彼女が慣れているはずもないわ。
しかし、そんな心配をよそに彼女は、涙を浮かべて必死に心臓に寄り添おうとしている。
「おねえちゃん!!これ、どうすればいい?……おとうさんの、おとうさんのだよ……。まだ生きてるの……?」
全身に血を送るはずの運動はもう意味をなさないが、動いているということはまだ生きていると言ってだろう。
念のため魔法でも生存を確認しておく。
『…………』
「ど、どう?おねえちゃん……」
『レイラちゃん、トードリッヒさんは生きているわ』
「ほんとに?!」
『でも…………』
肉体がないのだ。
魔力で動く心臓はあっても、動かして生活するための身体がない。
だからどうあっても、生きているが人として生きていけるかどうか……。
「おねえちゃん、おしえて」
レイラちゃんが強い眼差しで問いかけてくる。
(ああ、こんなに強い子だったのね)
泣くばかりではない。
しっかり自分の強い意思を持って、懸命に生きているこの子はえらいと思う。
だからこそ、どんなに辛くても本当のことを言おうと思った。
『レイラちゃん……正直に言うけれど、、』
そこまで言いかけたところで、また別の魔力反応を感じた。
ボトリ……。
心臓のすぐ横。
またしても何もなかった場所に何かがある。
(今度は何……?!)
『レイラちゃん!下がって!!』
咄嗟に危険を感じ、レイラへ向かって叫ぶ。
幸いにも、レイラちゃんはすぐに声を聞いてくれて後方へ飛び跳ね、私の後ろへ隠れる。
『魔法防御っ!』
すぐに彼女ごと結界を貼り、一切の魔法を無効にすることに成功した。
警戒しながら、細目で現れたソレを観察する。
トードリッヒさんの心臓とは違う。
良くない禍々しさを感じる……。
見つめていると、ピリリと頭の中に電気が走ったような感覚があった。
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ぎ、ぎぎぎ………。
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『あ、あなたは……!!』
思わず、口を開き、驚きを言葉にする。
言葉は理解できないが、聞き覚えのある声……。
レイラちゃんも同じように受信したのか、両手で頭を抱えている。
『叡智魔法……!!どうして、いなくなったと思ったのに……!』
小さくなってわからなかったが、よく見ると目玉のようにも見える。
「…………!」
ドロドロと血が流れる中に、丸い形のした紅い瞳がギョロリと覗いているではないか。
『答えて……!!なぜ、ここに現れたの?!』
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ぎぎ、ぎぎぎ……、
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わからない……!
言葉が成り立っていないわ!
焦燥に駆られるライムだったが、再び魔法に頼ることを決めた。
(これならーー)
『意識言語化魔法!』
考えていることや思っていること、その内面を強制的に言語化させ、意思疎通を図る魔法。
半ば強引に作った魔法だけれど、果たして……。




