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悪役令嬢の恋を応援したい!  作者: 鮇 天魚
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久しぶりに投稿です!

  



セレネ様とお互いに名前を呼び合うようになって数時間、私たちは色々な事を話した。

好きな物や好きな事など他愛もない事を話したりセレネ様の恋の話をしたり…。


頬を赤らめ瞳をキラキラさせて『殿下のこんな所が』とか『殿下のあんな所に』とか…ヘリオス殿下の事を語っているセレネ様は恋する乙女そのもので、気高い美しさを持っているだけではなく少女のような愛らしさも持ち合わせているセレネ様が尊すぎて、ただただ話を聞きながら相づちを打っていた。

推しが目の前に実在していると言うのはなんて幸せなんだろうか。画面越しでは声はあるものの立ち絵やスチルの静止画しかないが身ぶり手振り、セレネ様のひとつひとつの仕草がほんと可愛い。


語彙力を失い、胸が暖かくなるようなフワフワした幸せ気分で紅茶を一啜りした時、先程まで乙女の顔で殿下の事を話していたセレネ様の表情が急に険しくなった。



「カップの取っ手に指を入れて持つのは間違いですわ。」


「へ?」



唐突にカップの持ち方を指摘され、変な返事しかできなかった。

スッとセレネ様はご自分のカップを優雅に持たれると何も言わず私を見つめてくる。

その視線に緊張からか、ドキドキしながらその行動の意味を必死に考え、自分の手元とセレネ様の手元を見比べと、カップの持ち手に指をいれて持ってる私と違い、セレネ様は器用に人差し指と中指、そして親指の三本でカップの持ち手を摘まむように持っていらっしゃった。


なるほど!と、思い一度カップをソーサーに置いて同じように持ち直す…が、



「手が震えてますわよ、揺らさずに静かにお持ちなさい。」


「は…はい…。でもですね、これカップが落ちてしまいそうで…。」



指で摘まむ持ち方は思った以上に難しく、カップを持つ手がプルプルしてしまう。

貴族の人ってこんな持ち方で毎回紅茶を飲んでるの?もしかして指の筋肉が発達してるんです?指相撲強そう。


カップを落とさないよう必死に持ちながら、紅茶を飲んでみようと意気込んでいると再びセレネ様から厳しい声が向けられた。



「飲むときは顎を上げては行けません!カップを傾けて!………そうですわ。」


「はい…。」



セレネ様の指導のもと、何とか持ち手を摘まんで紅茶を一口飲む事に成功した。

まさか紅茶を一口飲むのにこんなに技術と気合いが必要になるなんて思いもしなかったよ。

見てるだけの時はあまりにも簡単そうに、そして優雅に飲んでいらっしゃるから気にしてなかったけど、貴族の人って努力の塊だよね。それを微塵もみせないのだから格好いいなって思っちゃうし尊敬してしまう。


私も努力し続けていれば、いつかは紅茶を優雅に飲めるような貴族らしい振る舞いが出来る日がくるのかしら?




*****




セレネ様直々という、とても厳しくもありがたーいマナー講座のお陰で、何とかお茶の飲み方は及第点をいただけた。

次に軽食のマナーへと移ろうとした時、コンコン…と、二人の動きを止めるかの様にノックの音が鳴り響いた。


お互いに顔を見合わせ、同じように窓の外を見る。

ついさっきまでは明るかった空も今では夜の帳が降りて真っ暗だった。

どうやら思いの外長くマナー講座を行っていたらしい。


こんなに集中して何かをやるなんて久しぶりだな、と思いに耽っていると「ふふふ」と可愛らしい笑い声が聞こえ、つられて笑ってしまった。



「どうぞ、お入りなさい。」



一足先に落ち着きを取り戻したセレネ様が扉の向こうへ声を掛ける。

静かに扉が開くと、セレネ様と同じ夜色と月色を持つ弟君、セイアッド君が入室してくる。そのまま一直線にセレネ様の傍へ足を進めるとフワリと微笑み会話を始めた。



「姉上、何時間も出てこられないので心配しましたよ。」


「ごめんなさい、セイ。彼女とのお話がとても楽しくて時間を忘れてしまいましたわ。」


「元庶民のご令嬢が姉上の美しさに嫉妬して何かしたのでは…と思ったのですが、楽しまれたのなら何よりです。」


「彼女はとても心優しいご令嬢です。セイが心配するような事は何一つ起こりませんよ。」


「心優しいのは姉上の方ですよ。こんなにも長くご歓談されるなんて…彼女が羨ましいです。」


「まぁ、セイったら…ふふふ。」



あぁ、なんて麗しい光景なんだろうか。

美人な姉弟って、並ぶととても絵になりますよね。所々、弟君に貶されているような気がするけど気のせいでしかない気がするもの。

ごめんね、大好きなお姉さんを独占しちゃってて!


二人の会話を聞きながら、先程教えてもらったマナーをしっかりと意識しながら紅茶を啜る。

美人さんを見ながら飲む紅茶を一段と美味しい。


ふと、弟君と目が合うと何やら驚いた顔をされた。

何だろう?しっかりとマスターしたつもりなんだけど変な所あったかな?



「さすが、姉上です!!この元庶民に完璧なお茶のマナーを教え込むとは!!」



なんだ、変な所があったんじゃなくて逆に完璧だったのね。良かったー、セレネ様のご指導が無駄になってなくて!!


再び姉弟の話に花が咲く。

美味しい紅茶もあるし、何時間でも眺めていられそうだなと微笑ましく眺めていると弟君が私の方に向き直り声を掛けてきた。



「姉上の素晴らしいご指導のお陰でお茶の飲み方は板に付いたよう様だがいつまで要るつもりなのかな?」


「へ?」


綺麗な笑顔のわりに冷たい言葉と空気。セレネ様に対する態度と大違いでついニヤニヤしてしまいそうになるのを我慢しながら言葉の意味を考える。

そう言えば、さっき窓の外を見たら真っ暗だったような…。


……やばい?!

そうだよね!こんな遅くなるなんて、ただでさえ迷惑をかけてるのに更にセレネ様にご迷惑がかかるよね!!お夕飯の時間だってあるだろうし!何のんびりしているのかね私は!!


それに、私の家の方にも迷惑かけてるかも…だし?



「セセセレネ様、私こんな遅くまでお邪魔してしまってご迷惑をっ」


「謝らなくて平気ですよ、こちらこそ時間を気にかけるべきでしたね。」


「いえ!私は大丈夫です!!」


「そう、ありがとう。玄関までお見送りしますね。」


「はい!!ありがたき幸せ!!」



何気ない会話をしながらセレネ様と一緒に玄関までを歩く。

来たときは気にしてる余裕なかったけど、長い廊下を歩いているとこのお家の大きさを実感する。階段も多くて大変そうだなとか思ってしまうけどスカートの端を少し摘まんで優雅に降りる姿を見たら全部吹き飛んだ。

ただ歩いている姿でさえ美しい。


玄関まで辿り着くと、すでに送り用の馬車が用意されていた。

セレネ様が普段使用している馬車には劣るが、これもすごく立派な作りをしている。



「今日はありがとう。こんなに充実した時間は久しぶりでした。」


「いえ、こちらこそ…憧れのセレネ様とたくさんお話できて嬉しかったです。」


「……また、一緒にお茶しましょうね?」



はいっ、セレネ様の照れ顔いただきましたー!!!

頬を赤らめてそっぽを向きながらお誘いしてくださるなんてなんて可愛らしいのか!!!

私が見とれて返事がないのが不安なのかチラチラ気にしてこっちを見る仕草プライスレス!!心のスクショで永久保存ですよ!!



「もちろんです!!こちらこそよろしくお願いします!!」


「ありがとう。では、今日は気を付けてお帰りになってくださいね。」



「はいっ、ありがとうございます!!では、また!!」



セレネ様の女神スマイルと次への約束。

唐突に前世を思いだし転生というSF(少し 不思議)的な展開に動揺もしたけれど、まだまだ私の人生は始まったばかり。これからセレネ様の為に頑張って行こう!!


決意を新たに馬車へ乗り込もうとした時、セレネ様が何か思い付いたかのように声をあげる。



「そうだわ、セイ!あなた、シャルロッテさんを送って差し上げて?」


「はっ?!」

「へ?」



ニコニコ上機嫌なセレネ様の唐突な提案に弟君と私の間の抜けた声が重なる。


中身の濃い一日はまだまだ終わらないらしい。



お家に帰るまでがイベントです(笑)

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