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悪役令嬢の恋を応援したい!  作者: 鮇 天魚
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向かって右側の光景……



「セレネ様、こちらのお料理もいかがでしょうか?」


「セレネ様、お飲み物が空ですわ! 私、お願いしてきます!」


「姉上の好きな果物があちらにあったので持ってきました。」


「ふふ、二人ともありがとうございます。それにセイも、いただきますわね。」



向かって左の光景……



「殿下、休み明けの行事についてなのですが……」


「メルク、折角の休暇なんだからその話はまた後にしようよ?」


「そうそう、剣技大会に参加しないメルくんが気にしてもねぇ。」


「先輩。行事とは進行してくださる方がいるからこそ開催できるのですよ。」



…………なぁにこれぇ。



私を真ん中に、お互い干渉しないようにでもしているのか左右で別れてグループになっている。


まぁ、立食形式だし好きなようにお喋りするのは悪くないのだけど……


え、なんで急にハブられてるの私?


ここまで私を引っ張ってきたメルクよ、何故私を放置するんです?


しかも、セレネ様の所に行こうとすると然り気無く邪魔されて輪の中に行かせてくれないし……。


なのに放置!!


折角、セレネ様とのお出掛けなのにご一緒出来ないなんて、目の前にあるキラキラなお料理達も美味しくな……美味しく……


うん、楽しそうに談笑されているセレネ様を観賞しながら食べるお料理プライスレスっ!


しかし、どうしたものかな。


こうしてセレネ様を一日中眺めているだけでも楽しいのだけど、本来の目的はセレネ様と殿下の甘々イベントを堪能する事。


この別荘イベントは初日から甘々な展開なはずなのだけど、やっぱり二人きりじゃないから発生しないのかな?


子爵家コンビと楽しそうにお話しているセレネ様を見ていると、何事もなく平和に楽しく過ごせればそれはそれで良いのかもしれない。だけど、折角ならお二人がイチャイチャしている所を見たいし、もっと距離を縮めて欲しい。個人的な願望として。


と、なるとのんびりと食べている場合ではないね。


もぐもぐ、ゴクン。


口の中に入っていた料理を飲み込みグッと左右を確認する。


右にはセレネ様のグループ。


左には殿下のグループ。


さて、どっちに向かうべきか。


自分の気持ち的には今すぐにでもセレネ様の所に行って楽しくお話したい。だけど、さっきからメルクに妙な邪魔をされているし、二人の距離を縮めるにはメルクを何とかしなければ変わらない気がする。


となると選択肢は一つ、まずは殿下のグループに入ることから始めよう。


そして、うまく誘導してセレネ様のところと合流させる。



「よしっ!」



気合いを入れて殿下達の所へと足を向ける。


無計画感半端無くて胸が緊張で少しだけドキドキするの落ち着かせるように小さく深呼吸してから声を掛けようとしていたら、殿下が私の姿に気づいてくれててを振りながら先に声を掛けてくれた。



「やぁ、アントス嬢。楽しめているかな?」


「はいっ。景色は素敵ですし、お料理も素晴らしくて感動してました!」


「それは良かった!」



ひぇ、イケメンの笑顔が眩しい。


キラキラと効果音が付きそうなくらいの良い笑顔に邪な考えがあるのが申し訳なってくる。


殿下ってセレネ様と同じでビックリするくらい良い人だし純粋な方なんだよね。


まぁ、だからこそ周りの悪意ある言葉に流されてしまってセレネ様を傷つけてしまった訳なんだけれど……。


でも、今は以前のただ優しいだけの笑顔じゃない。優しいなかに芯の強さを感じられるようになった気がするもの。


だからこそ、今の殿下とセレネ様のイチャイチャが見たいのだ!!!


と言うことで、まずは会話を続けなければ。



「あの、剣技大会? と言う聞きなれない言葉が聞こえて気になったのですが……。」


「あぁ、学園内だけでの行事だからあまり馴染みないかもね。」


「そうなんですね、初めて知りました!」


「それに、男子学生がメインだから知っても女の子にはつまらないかも。」



そう言うと、殿下は少し困った顔をして笑った。


剣技大会。


初めて知った……なんて言ったけれど、もちろん知っている。これもゲーム内でイベントとして行われるからだ。だけど、殿下の言う通り、この剣技大会は学園の催し物ではあるものの参加は男子のみ。しかも自由参加なのメルクのように参加しない人も多いいし、学園のイベントでありながら騎士を目指しているアレスルートでしか出てこない。


……あれ? 確か、殿下は剣の腕は良かったと思うんだけど何でイベント無かったんだろう?



「殿下は参加されるんですか?」


「え? ……いや、僕は……」


「良く聞いてくれました! アントスさん!!」


「へっ?」



素朴な疑問を殿下に投げ掛けると、予想外な所から声が掛けられた。



「メルク……その話は今は……」


「いいえ、折角ですから言わせてください!! 学園の催しなのに参加率は毎年3割りを切っています。学園長からももっと参加率を上げるよう努力しろと言われているのです。殿下が率先して参加してくだされば他の者も参加せざるを得ないはずです!!!」


「いや……しかし……」


「“いや” も “しかし” もありません!!」



怒濤の勢いので話すメルクに思わず唖然としてしまう。


メルクが凄すぎて殿下は何も言えなくなっているし……。


これ、誰か止めなくて良いのかな? と、思って近くを見渡すとジョーヴェと目があった。



「あの……ハウ様。お二人を止めなくても良いのでしょうか?」


「ん~、こんなに激しいメルくんは珍しいけど……大体この話になるとこんな感じだから気にしなくて良いと思うよ。」


「はぁ……そうなんですか。」


「そ。運営の一部を任されているから必死になるのも解らなくはないんだけどねぇ。でも、観客のいないガランとした闘技場で試合するだけってのがつまらない殿下の気持ちもわかるかな!」


「あの、殿下の出たくない理由は違いそうな気がするんですが……」


「あはは! アントスちゃんは真面目だなぁ!」



ケラケラと笑い、冗談を交えながら剣技大会の事をジョーヴェは話してくれた。


大会は自由参加で大体が騎士を目指している者くらいしかいない。実力に自信がある者がマウントを取るために出ているらしいけど、それも数人だけ。


だからかわからないけど、禁止されているわけでもないのに応援しにくる観客はほぼ0で、ジョーヴェはメルクにしつこく頼まれたから出場するけどやる気が出ない……と。


なるほど、そんな裏事情があの大会にあったのね。



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