少年との出会い
よろしくお願いします。
ここはいつもとちょっと違う森の中。森の名前は、「逆さ虹の森」。動物達と少女が楽しげに仲良く暮らしている森です。そんな逆さ虹の森も冬の間はちょっと静かな森に変わります。この物語はそんな動物達が静かに過ごしている時に起こった物語です…
吐く息は白く、風はヒューヒューあちら此方で吹いています。湖は凍りありとあらゆる生物は静かに過ごし、周りはシーンと音が反響している。夏の間とは全く別の森になっています。
そんな森ですが、おや?森の中で大きな声が響いているようです。いったい何でしょうか?覗いてみましょう………
森の中には2人の子供がいた。1人は泣いている少年で、もう1人は少年を何とか笑顔にしようとする少女である。
「びぇぇぇぇぇん!えーんえんえんえん!、えーんえんえんえん!、すん、ひっくひっく……ぐすん、げほ」
少年の泣き声は森の中全体に響きわたっている。まるで雛が餌をねだるように甲高い声で泣いていた。短時間に喉を酷使しすぎたのだろう。咳《せき》込んでいる。
少女は少年の肩をさすりながら
「なっ泣かないで、泣かないでよぉ〜もぉ〜。泣きたいのはこっちだよぉ〜」
少女は少年を必死で泣きやまそうとしたが、すっかり途方に暮れていた。ああ、いったいどうしてこんなことになってしまったのか…あたしは冬の間に一緒に遊べる友達が欲しかっただけなのに…
始まりはしんしんと雪が降っている日のことである。
森の中にポツンと1人でいる少女がいた。彼女の名前は白雪。雪女の少女である。
白雪は今日はいつもと比べてしょんぼりとしていた。今日は、遊び相手がおらず1人で遊んでいたからだ。もちろん毎日1人ぼっちなわけではない。夏の間は逆さ虹の動物達も楽しく毎日を過ごしている。
しかし、そんな動物達も冬の間は静かに寝床で過ごす者が多い。そんな静かに過ごしている動物達を毎日引っ張り起こすのは少々気が引けたのだ
だけど、やっぱり1人で遊ぶのは寂しいのである。遊ぶなら、1人で遊ぶより、2人の方が良い。そう思っていると突然森の奥から声が聞こえてくるではないか。
(うん?何だろ、いったい?)お人好しのキツネさん?それとも暴れん坊のアライグマさん?それとも歌上手のコマドリさん?白雪はワクワクしながら声がする方向に、ザクザクと降り積もった雪を踏みみしめながら近づいていく。
それは近づくたびに段々と大きくなっていった。ぅーうーとうなり声のようにも聞こえる。少女はウキウキワクワクしていた。(誰かなー?食いしん坊のヘビさん?でもないし、いたずら好きのリスさんでもないかな?臆病者のクマさん???)
そんなことを思いながら、そろーりそろーり音の方に近づいて木の陰から見てみる。すると森の中で何かがうずくまって居た。それが何なのかよく分からないので目を凝らしてみると一人ポツンと少年が座り込んで居た。
少女は嬉れしくなった。自分の他にも外に出ている子がいたのだ。木の陰から思わず身を乗り出し声をかける。
「ねぇ、君ー‼︎いったいどうしたの?どこか怪我でもしたの?」
少女の声にビクッと肩を反応させて少年が少女の方を向く。
少年は男の子にしては小さく、長袖と長ズボンを履いているが、上着も何も羽織って居ない。顔は涙でグズグズになり、声は泣きすぎてひくっひくっとひきつっている。体は膝を抱えこむように体育座りをしていて、顔だけを少女の方に向けていた。そんな中、少女はニコニコして笑顔で言う。
「大丈夫?立てる?」少女は少年は少女の方をみるとしばらく目を丸くして見ているが、はっと少年はそっぽを向いてまた丸くうずくまった。
「ええーー⁈何で無視するのよー!」
あんまりな態度だったので仕返しに肩をグイ後ろに押す。そうすると
ドサッ…少年が後ろに倒れこむ。
「うっ」
「う?」
「うわぁああああああああん!うわぁああああああああん!」
そうして場面は最初に戻る…
少女は少年を何とか元気づけようと励ますが中々泣き止んでくれない。(うーんどうしよ、私にできること、うーん、うーん、あっそうだ!)
少年の背中をポンポンと優しく触る。
「ねぇねぇこれ見てみて、ほらほら!」
少年は首をいやいやするように左右に振る。少女は諦らめないで根気強く少年に呼びかける。
「お願い、ちょっと、ほおーんのちょっとだけでいいから目をあけて、ね?」
少年は少女の諦めない様子に恐る恐る目を開ける。
すると
「ぅわあ、すごくキレイ、すごい!すごい!」
少年は少女の手のひらに作られた雪の結晶に眼を奪われました。
「よかったぁ、やっと泣き止んでくれた。さっきはごめんね、あなたの名前は?わたしは白雪よろしくね!」
そう言って手を差し出して笑顔で白雪ちゃんは言いました。
それに少年は
「うん、僕の名前は武よろしくね」
手で涙をぬぐいながら|武君は自己紹介をしました。
「たけしくんっていうんだ、ねぇ、たけしくん一緒に遊ぼう!あたし1人で退屈してたんだー」
「えっでも…」少年は躊躇がちに言いながら、
「やっぱり…ダメ?」少女は不安そうに言った。
「ううん、そうじゃなくて僕引っ越しするんだ一ヶ月後に」
たけし君はお父さんの都合で引っ越しが多くて中々友達が出来ませんでした。今回もあまり馴染めないまま、引っ越しが決まってしまい、それが寂しくなって思わず着の身着のまま家を飛び出してしまいました。
「そっかーあたしと遊ぶのが嫌じゃなかったんだ。良かったー。なら一緒に遊ぼう!一ヶ月の間」
たけし君はその言葉にとても嬉しくなりました。
「うん、これからよろしくね!白雪ちゃん」
こうして2人は引っ越しをする期間の間仲良く遊ぶことになりました。
読んでもらってありがとうございました。