第3話 初めての大学。前編
「あら、ユーリがお弁当を忘れてるわね。使い魔にしては鈍臭いわね。持って行ってあげようかしら。」
そう言うとマクーニャは家のドアを開けた。
「 えっとユーリは、大学で授業って言ってたわね。」
「それじゃ大学ってところに参ろうかやよ。たしかあっち行ってたわね。」
…………
俺の名前は美川。ただの学生だ。俺は今授業中なのだが、寝ている。昨晩深夜バイトで疲れているのだ。ん?
「こんばんは!!私はマクーニャ。何やってるの?」
「なんだ知らない女だな。背中に羽がある?俺は今、バルハラ王国を築いているんだ。」
「そうなの。でもこれ夢よ。現実を生きなさい。夢で築いても何も得ることは出来ないやよ。」
「え?夢。はっあ!!」
授業中の前で大声を出して目覚めてしまった。そして現在、俺美川を含む他数名は廊下で立たされている。
「お前らもか。寝てたのか?」
「ああ、なんか夢に女の子が出て来て……」
「俺もそうだった!!」
「え?」と俺たちは驚きの表情を浮かべ、
「お前らうるさいぞ!!」と教授が言って来た。
その頃マクーニャは大学の海が見えるテラスのベンチで座っていた。
「せっかく知らない人の夢に出てやったのにユーリの情報何も聞けなかったやよ。」
「人間ってやっぱり脆い生き物ね。少しのことで動揺しちゃって……」
「ってあの姿はユーリ?ユーリじゃないの!!ようやく会えたやよ。ユーリ!!」
ん?誰かの視線が感じる……あれはマクーニャか?
「お弁当忘れてたやよ。本当に世話がやける使い魔やね。」
マクーニャが僕に話しかけてくれる。使い魔って……もう使い魔確定なのか。
「ありがとう。って言うか使い魔って言うのはやめろよな。」
マクーニャが僕の言い分を軽く流しながら、笑顔を見せて来る。
「ふふふ……初めて大学ってところに来てみたやよ。」
「そうか。初めてだったな。ここは都内だけど自然豊かだろ。海も見えるし、いい環境だと思うよ。」
「良いわね。悪魔もここは居心地が良いと思うやよ。」とマクーニャと話していたら……
「んぅ。私はお邪魔だったかな。ユーリくん。」
40代ぐらいのおじさんでちょっと小太りの人が話しかけて来た。
「いや、お邪魔じゃないですよ。岡村教授。あ、この子は……ちょおま……」
マクーニャが急に前に出て「私は悪魔兼サキュバスのマクーニャ。大悪魔になるためにここに来てるやよ。」
「いや、堕悪魔だろ。お前は。」
「なんでよーーーー。私は大悪魔になる女なの。サキュバス、悪魔なの!!」
とマクーニャは僕に向かって叫んでいると……
「私は岡村謙吾。オカケンって呼んでくれ。ところで本当に悪魔なのかな?」
岡村教授はマクーニャに話しかけた。いつもと違う感じだ。授業でもこんな雰囲気は出したことない。
「そうやよ。悪魔やよ。この悪魔の羽が証拠よ。魔界から大悪魔のなるために、この下界人間界に来てやったわ。よろしくやよ。」
「ちょっと、お前……教授、違うんです!!この子は中二病なんです!!」
すかさず僕は隠そうとするが岡村教授は興奮した面持ちで
「そうか。悪魔か。私はね。この教授生活20年、人間学を論じて来た。一方、悪魔関連の研究もやっているんだよ。
教授の肩書きは表顔で、本当の裏の顔は、全国オカルト研究部会長兼学校内オカルト研究部顧問だからね。」
「オカ…研究?……???」
マクーニャは目が点になっている。さらにオカケンは真剣な面持ちと目線でマクーニャを見る。
「私はね。今まで海外に行ったら必ず悪魔祓いの現場に行ってその表情を見るのは大好きなのだよ。除霊されている悪魔の苦しそうな姿が……」
「悪魔になんて事言うのよ!!訂正しなさい。そして私に謝りなさい。」
マクーニャは怒っている反面、オカケンは興奮気味でウキウキと話している。
「ところで君は何が出来るのかな?悪魔って言うと色々とあるけれど……」
「そうね。私は大悪魔を目指す、サキュバス。寝ている人の夢を自由自在に操ることができるやよ。それと魔道具を使えば……キャッ。」
いきなり、マクーニャの肩を握って来たオカケンは
「素晴らしい!!君は私の探し求めていた人材だ。もしよければ給料を出すから、定期的に話を聞かせてくれないかね。」
とマクーニャが教授の部屋に連れて行かれる。
「ちょっと待ってくださいよ。岡村教授!!これ以上はセクハラですよー。」
とツッコミを入れる僕。その瞬間、マクーニャとラムと違った視線を感じた。
「ん?なんだ。この目線は?背筋がゾッとしたんだがなんだったんだ?」
知らない目線を気にしつつ、マクーニャと教授が部屋に入ったので僕も入って話を聞いていた。
「それじゃ月給3万、実習につき5万プラスで、週3日2時間オカルト研究部に顔出してくれ。君の話を期待しているよ。」
ニコニコした岡村教授がマクーニャと話している。
「オカケンも分かってるわね。悪魔はトップに立つべき存在なの。人間の分際でここまで話が分かるのは珍しいやよ。」
マクーニャもニコニコして岡村教授と話している。
「それじゃまた3日後来るやよ。お茶とお菓子用意しといてね。」
マクーニャが岡村教授に伝えると岡村教授は軽い会釈をして「用意してるよ。そっちこそ忘れずに来てよ。」親指を立てて僕たちを見送ってくれた。
「いい人やったやよ。お金ももらえるらしいし、お菓子も食べれるし、ここは良い所やよ。景色も綺麗だし。」
マクーニャは大学を気に入ったようだ。
「よかったじゃねーか。お前の就職先決まって。」
「私の大悪魔伝説がここから発信されるのよ。なははははーーーーーー。」
この駄悪魔が……と心の中で叫んでいるといきなり……
「あの!!ユーリくんですか?」
背の小さく、顔が女の子っぽいが服装が男装の子が話しかけて来た。