期末テスト 6
私は今、何故か罪悪感に苛まれている。
「隼、フルーツゼリーもあるけど食べる?」
私が声をかけると、隼は見ていたノートから顔を上げた。
「ありがとう、遥。でも、コーヒーゼリーでお腹一杯だから大丈夫だよ。」
「そっか・・・。」
会話が終わるや否や、隼はすぐにまたノートに集中しだした。
他の三人は、少食の隼より長めにご飯をとった後、今は最後のデザートを食べている。
そんな中・・というより、隼はあのちょっとした嘘をついた事件以降、声をかけられた時以外は話さなくなった。
私が怒ったから凹んでる、なんて話だったのならまだ良かったんだけれど・・・。
「隼、そんなことでわざわざ嘘つかないの!普通に言ってこっちに来たらいいでしょ?」
「いや、普通に来れない場合があるし・・。」
怒る私に対し、隼は私と目を合わせないまま、援護を求めて圭吾くんを見た。
「まあ、たまにだけど、あるな。」
それに、圭吾くんは仕方なしにという感じで答える。
「・・・・。」
圭吾くんの仕方なしでもたまにという言葉と、順也くんがということを考えれば、本当なのだろう。
私からすると、抜け出すぐらいで嘘をついてと思っていたんだけれど、逆に嘘を付いてでも抜け出したいぐらい教えるのが日々大変だとも考えられる。
それなら、
「わかった。じゃあ、私が午後から順也くんを教えるよ。」
「「・・・え?」」
珍しく、二人の言葉が被った。
「隼は、普段から教えてあげて大変だもんね。今日の午後くらい、私が・・」
「っ遥、何言ってるの?遥もテスト勉強があるでしょ?」
驚いた様子で、私の言葉に重なる形で話し出した隼に、私は笑った。
「大丈夫、私は復習もある程度は終わってるから。みんなが夕方に帰るぐらいまで、どうってことないよ。」
前世を思い出してから、中学の授業内容は頭に入っていたので、ならば先に勉強しておこうと高校の勉強は終わらせていた。
だから、高校受験は一度きりなので頑張ったが、テスト勉強はそこまで必死に時間を割かなくてもいいのだ。
「どうする?隼。」
私の話を聞いて、何故か下を向いて顔を覆いだした隼に、圭吾くんが質問する。
「毎日、大変なんでしょう?私のことは気にしなくていいからね!」
隼が任せることに後ろめたいようだったらと思い、私は拳を握って力強く言うと、隼が小声で何かを言った。
「え?なんて言ったの?」
聞き返すと、隼が勢いよくこっちに顔を向けた。
何故か、貼りつけた笑顔で。
「・・ありがとう、遥。心配してくれて。でも、もう大丈夫だから。」
「え、でも・・」
「へこたれてたら駄目だよね。もっと強気でいかなくちゃ。」
「う、うん・・・?」
目が異様にギラついてるような気がする隼に、私は気圧されながらも頷いた。
「最後なんて、受験があるんだし。今から頑張らないとね。」
「・・・・。」
どうしよう。隼が順也くんに対して、頑張るなんて言葉を聞いたことがないんだけど・・・。
そう内心で思いながら、本気のスイッチが入ってしまった隼を、恐々見つめたのだった。
ご無沙汰しております。
皆さま、お元気でしょうか?
私は、なんとか生きております。
蔓延る病で生活環境が変わって生きる活力も減り、更新遅くて申し訳ない限りですが、なんとか頑張っております。
お話としては、こんな展開になった隼くんに謝っておきます。
だって君、追い込まないと頑張らないんだもん。
圭吾くんは、そんな隼くんを笑いを堪えながら見ていることでしょう。




