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それを運命とは言いません  作者: 穂波幸保
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隼の過去編:友だち 8



そろそろ夕方が近づき、(はるか)との楽しかったデートも終わりの時間が近づいてきた。


『遥。あと乗れるの、ひとつぐらいだね。』

僕が腕時計を見て言うと、遥も頷いた。

『そうだね。やっぱり、遊園地は時間が経つのもあっという間だったね。』

本当に。

僕は、心底そう思った。

本音は遅くまでいたいところだけど、明日は学校だから早めに帰らないといけない。


(はやと)、乗り物は何にしよっか。』

携帯を見て乗り物の待ち時間を確認しだした遥に、僕は言った。

『最後は、遥が決めてくれていいよ。』

『え?』

『僕は、乗りたいものに大体乗ったから。最後は、遥が決めて。』

あのジェットコースター以外は、二人で決めながら乗り物に乗っていた。

それは、基本僕が遥になんでも譲るから、いつの間にか二人の時は一緒に決めるスタイルだからだけど・・・。

遠くてなかなか来れないんだし、最後は遥に好きなものに乗ってもらおうと決めてたんだ。

『いいの?』

『いいのいいの。 』

『うーん、じゃあ。』




「いーやーだー。こーれーにーのーるー!」

「諦めなさい!石段に乗ってサバ読んだって、乗れないんだから。パパ、この子を担いであそこの汽車まで連れてって。」

「わかった。ほら、今度はあの汽車に乗ろうなー。」

「やぁだー。これぐらいなら僕だって乗れるー!」

入口手前の身長確認で背が足りなかったらしく、子供が父親に捕まり連れていかれるのを僕たちは目の前で見送った。

そして、その背後にそびえる子供向けジェットコースターを、僕は無言で見つめる。

『・・・。』

『やっぱり、駄目だった?』

反応がない僕を心配して、遥が訊いてくる。

それに、僕は正直に返す。

『いや、駄目じゃないよ。意外だったから、ちょっとビックリしただけ。』

ジェットコースターに乗るにしても、こんな高低差が少なくてすぐ終わるものに乗るとは思ってなかった。

『確かに、いつもは過激なものばかりだもんね。』

遥も自分でそう思っているのか、僕の手を引いて入口に向かいながら笑った。

『どうしたの、急に。』

僕は、不思議に思って訊いた。

二人で最後尾に並ぶと、遥はジェットコースターを眺めて話し出した。

『隼、覚えてる?初めてジェットコースターに乗ったときのこと。』

『・・・、覚えてるよ。僕も怖いけど一緒に乗ろうって、僕が遥を誘って家族で乗ったんだよね。』

あれは、僕が小学3年生の時だ。

僕は遊園地もあの時が初デビューで、遥も乗ったことがないって言うから、一緒に乗ってみたくて無邪気にジェットコースターに誘った苦い思い出。

『隼、もしかしてまだ気にしてるの?』

僕の様子に気付いて、遥がこっちを向いて訊く。

それに、僕は気まずくてジェットコースターの方を向いて答えた。

『・・だって、僕が知らなくて誘ったから。』

僕は、あの時はまだ遥はただ年齢より頭がいいだけで、前世の記憶があるなんて知らなかった。

だけど、僕が言ったあとに僕と()()気遣う家族に何かあるのかなと感じて、数日後に遥に訊いたのだ。

そうしたら、前世の話をされて、前は跳ねられて亡くなったから浮遊感は不味いかなと思ってジェットコースターに乗ったことなかったなんて聞いたら・・・・・・・・・・・・。

そんな大事なこと言ってよって、なるよね。

盛大に傷ついて、一回寝込むよね。

しかし、これに黙っていなかったのが遥だった。

『だから、私怒って言ったよね?隼が怖いけど一緒に頑張ろうって言ってくれたから乗ろうと思えたし、後遺症は出なくて好きだったジェットコースターに乗れるようになったし。』

『『終わり良ければいいんだから、落ち込まないで。』』

昔この事で遥に言われ、自分でもたまに言う言葉が見事にハモり、遥の方を向いた僕と遥の目が合った。

『・・・。』

遥は、ビックリした顔で僕を見る。

そんな遥に、僕は笑った。

『わかってるって。もう落ち込んでないから。それで、それがどうかしたの?』

『・・あっ、そうだった。このジェットコースター、あの時のに似てるよね?』


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