隼の過去編:友だち 7
報われない恋なんて、人からすると無意味なのかもしれない。
でも、仮初めでも幸福な一時があったのなら。
僕も、クローディアスの最期のように、幸せだったと言えるんだ。
圭吾のやつ・・・。
僕は、話が終わったラ◯ンの画面を睨み付けた。
圭吾のせいで、最高の気分だったのに少し下降したじゃないか。
『・・・。』
僕は、携帯の画面を消して、少しの間だけ心を落ち着けるために目を閉じた。
そして、目を開けるとすぐに携帯の画面から顔をあげて、大好きな遥を見た。
『遥、お待たせ。終わったから、行こっか。』
『え?もういいの?』
驚いてこっちを見る遥に、僕は笑う。
『うん、終わったよ。』
『早いね。みんな、なんて?』
『遥の料理、楽しみにしてるって。あ、それと・・・』
他愛もない話をしながら、僕は心のなかで圭吾に向けてもう一度言う。
そんなの、わかってる。
そう。これは、僕のわがままだ。
遥に恋人ができるまでの、僕のわがまま。
友だちをいつの間にか好きになっていたなんて、ありきたりな話だけど。僕は、絶対に実りはしない。
だったら、遥が誰かを好きになるまでは、目一杯思い出作りさせてくれたっていいじゃないか。
・・・まあ、それで遥を困らせるのはお門違いなんだけど。
芦の祭の時も、僕がこんなだから遥が言えずにいただけで、僕が普通の弟なら言ってくれていたと思う。
でも、まだ分別がつく大人になりきれないし、抗っていたい。
そんな自分が、もどかしかったり、まだいいじゃないとも思ったり。
だから、僕も悪いけど遥もだよね?と言いたくて舞台に出た。
これが、圭吾が言う遥を困らせるなんだけど、痛み分けだとわかってほしいな。
だって、遥の反応に満足半分傷ついてもいるんだから。
でも、そんなことでウジウジなんてしてられない。
人生は、短くて時間は限られてるんだから。
楽しまなくちゃね。




