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それを運命とは言いません  作者: 穂波幸保
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芦の祭 17

芦の祭の最後に向けてラストスパート、頑張っております。

一気に最後まで載せれればと思ったのですが、最後の最後で苦戦しておりまして(汗)

短い文章ですが、3話分お届けします。


「ガートルード!なんということを!!」

「母上!!」

クローディアスは叫び、毒薬を飲んで崩れ落ちるガートルードの肩を掴んだが、支えきれずに膝をついた。

ハムレットも、慌てて母の側に駆け寄る。



開演直前、何故か舞台裏の一ヶ所がざわついていたが、私が覗きに行く前に時間が押しているからと、あの後すぐに舞台は始まった。

それからは、騒ぎも一時的なものだったようで終息し、光希みつきは緊張を乗り越えて無事に演技を終えた。

そして、今は最終局面を迎え、ガートルードが死に逝こうとしていた。



ガートルードは、クローディアスに背を預けて支えられながら、自嘲気味に笑った。

「私は、なんと愚かだったのでしょう。夫を殺した男の妻となり、今もその男に(いだ)かれて死にに逝く・・。しかし、これが私の復讐で罪滅ぼし。」

「何を・・・。」

クローディアスは、呆然と呟いた。

しかし、ガートルードはクローディアスに見向きもせず、そばで自分の手を握るハムレットにか細い声で話しかけた。

「ハムレット、息子を信じてやれなかった母を許してちょうだい。」

その言葉に、ハムレットは悲壮な顔で首を振った。

「何を言うのです、母上!そんなこと、僕は気にしておりません!!それより、早く医者を・・・。」

ハムレットはそう語りかけるが、もうガートルードはハムレットを見てはいなかった。

恍惚こうほつとした顔で天井を見て、話していた。

「ああ、これで私はあの人のもとへ行ける。ハムレット、あとは任せま・・し、た・・・。」

そう言ったかと思うと、ガートルードは目を閉じ、かくりと力なく首が下へと傾いた。

「母上ーーー!!!!」


「「・・・・・・・・・・・・・・」」


その後、ハムレットは項垂れ、クローディアスはガートルードの顔を見たまま、お互いに放心状態で沈黙していた。

だが。


「・・おまえの。おまえの、おまえの、おまえのせいだ、ハムレット!!!!!!」

急にクローディアスは声を荒げ、狂気じみた顔でハムレットを見た。

それに対し、ハムレットも徐々に顔をあげると、怒りに満ちた目でクローディアスを見返した。


「おまえが言うか、クローディアス!そもそもの元凶は、おまえだろう!!」

しかし、クローディアスはハムレットの声に耳を貸さない。

「おまえが気付かなければ!おまえが調べなければ!!全て丸く収まっていたのだ!!」

「まだ言うか、クローディアス!おまえが、母上の恋心を成就させようなどと思わなければ、こんなことにはならなかった。」

「おまえに何がわかる。これ程までの恋い焦がれる愛を!苦しみを!!」

「わかるとも!!おまえのせいでオフィーリアを失い、彼女に恋い焦がれた日はなかった。・・おまえを、殺してやりたいぐらい憎らしいさ!!」

「は!それには私も同意見だ、ハムレット。そうか。なら、あとは・・・殺し合いをしようじゃないか。」

そう言って、クローディアスはニタリと笑い、そっとガートルードを横たえらせて立ち上がったかと思うと、腰のさやから剣を抜き放った。

「さあ、おまえも剣を抜け、ハムレット。決闘をしようじゃないか。どちらの愛が強いのか、勝負をかけて。」



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