芦の祭 13
「いたいた。おーい、遥ちゃん!」
火口先生に次いで、今度は東雲先輩が教室にやって来た。
東雲先輩は、学生服姿に祭りでよく羽織る水色に縁が黒の、赤字ででかでかと生徒会と書かれた法被を羽織っていた。
「あ、東雲くん。どうしたんですか?」
私よりも先に、火口先生が声をかける。
「俺は、王子様を迎えに来たの。まっつんは、文芸部の売り子?」
「そうなんです!今から頑張りますね。」
仲良く東雲先輩は火口先生と二人で気軽に話しながら、私たちの前にやって来た。
「遥ちゃん、一がお待ちかねだよ。もうそろそろ時間だってさ。」
「・・はい、わかりました。」
とうとう来たのかと思いながら返事をして立ち上がると、東雲先輩がいたずらっ子のような顔をして訊いてきた。
「緊張してる?」
「そりゃあ、緊張しますよ。」
「だよねー。でも、俺は練習をちょっとしか見てないけど・・・。」
そこで、何故か東雲先輩は言葉を止める。
「けど?」
「うん。兄妹そろって、凄いと思ったわ。」
「東雲先輩、それってどういう・・?」
私の質問に、東雲先輩は私を見て笑った。
「さ、ちゃっちゃと向かいましょうか!」
「!!?」
東雲先輩は質問には答えてくれず、急にきびきび来た道を戻りだしたので、私は慌てた。
「ちょっと、先輩!待ってくださいっ!!絢、一緒に来る?」
「うん、舞台見るから一緒に行くわ。」
そう言って、絢は立ち上がる。
「了解。麗くん、売り子頑張ってね!」
私が声をかけると、麗くんはにっこり笑った。
「うん。遥さんも、舞台頑張って。」
その言葉に、私もにっこりした。
「お互い、頑張ろう!」
そう言って、私は絢と駆け出した。
「水沢くんは、行かなくてよかったんですか?私が店番をするので、一緒に行っても良かったんですよ。」
3人が出ていってすぐ、火口先生は僕にそう言葉をかけてくれた。
しかし、その言葉に僕は首を降る。
「チケット制なので、僕は見れないんです。それに、まだ交代時間じゃないですし、売り子を頑張りますよ。」
「そうなんですか?すごい人気ですね!なら、僕たちも負けずに一緒に頑張りましょうね!」
そう言って息巻く火口先生を見ながら、僕は頭の中で別のことを考えていた。
「隼くんに言ってないって、かなり不味いんじゃ・・・。」
隼くんの遥さんに対する想いは、誰が見ても姉弟の粋を越えている。
姉さんの言っていることも何となくわかるが、黙っている方がさらに不味いと思うのは、僕だけなのだろうか・・。
「すみません。文芸部はここですか?」
そんなことを考えていると、教室に一人の女性が入ってきて、そう訊ねられた。
「そうです!・・・水沢くん、 誰か買いに来てくれましたよ!!」
「本当ですね、・・・?」
はしゃぐ火口先生に、僕は相槌をうちながら女性を見て言葉を止めた。
その女性はサングラスをかけており、170cm以上ありそうな長身で、腰まである長い髪を下ろしていた。そして、着ている紺色のパンツスーツは、すらりとした細身の体型によく似合っている。
一見、スーツなので他校の先生に思えたが、言葉を止めたのは見覚えがある気がしたのだ。
相手も、近付いた時に火口先生の横に座る僕に気付いたようで、笑顔で話しかけてきた。
「あれ、君は麗くんかな?2年ぶりだね。」
そうして、女性が笑顔のままサングラスを外して現れた顔に、僕は目を見開いた。
2カ月超えないように頑張ろうと思ったのですが、ぎり無理でしたね。
いつも通り亀足更新です。
やっと、芦の祭当日を迎えました!
今年、文化祭編を終わらせられることを願っていますが、どうなることやら。。
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