芦の祭 11
「私のことはいいのよ。それより、せっかく一さんが来たんだから、さっきの話の続きをしましょ。」
絢は自分の話題を避けようと、さっきの話を持ち出してきた。
「何の話だ?」
一兄の問いに、私が答える。
「さっき、一兄が劇を楽しみにしてるって話をしてたの。」
「ああ、そのことか。」
一兄は、そう言って笑った。
「生徒会の仕事のこともあるから、あまり喜んではいけないんだが。楽しみにしているな。」
「それは、遥と出るからですか?」
「ちょっ、ちょっと!」
絢の問いに、私は慌てた。
そういう理由で、私が頑張る訳じゃないから!
「一兄は、その質問に一瞬きょとんとしたが、笑いながら話し出した。
「まあ、それもあるが。行事に直接参加できるのが、楽しみなのもあるな。俺は、基本的に生徒会での関わりしかしてこなかったし、一年のときは裏方だったしな。」
「一先輩、裏方だったんですか!?」
「先輩方が、ほっとかなさそうなのに。」
万里花と沙耶ちゃんが驚きの声をあげる。
「昔からだが、打ち解けるまでは近寄りにくいらしい。俺にも、母さんのようなことができればいいが。」
一兄が苦笑してそう言うので、私はすぐに止めにはいる。
「一兄、母さんは特殊だから真似しなくていいんだよ。一兄には、一兄の良さがあるんだから。」
というよりか、似ないでほしい。
「遥ちゃんのお母さんは、どんな人なの?」
「ホストね。」
「ホスト!!?」
光希の疑問に絢が答えるが、私が訂正を入れる。
「絢、人の親の職業を詐称しないで。出版会社の編集長だから。」
「・・冗談よ。」
私は絢の目を見るが、絶対冗談だと思っていない目だ。
「「・・・・・」」
「え、えっと。編集長なんてすごいね!でも、すごく忙しそう。」
黙って見つめ合う私と絢を気にしてか、光希が慌てたように話し出す。
「確かに、働くのは楽しいらしいが、忙しいみたいだな。芦の祭に父さんは来るが、母さんは今年も来れないようだし。」
光希の言葉に、一兄が返す。
「でも、平日だからなかなか来るのは難しいですよね。私の親も仕事で、学生がメインだから目一杯楽しんでって言われました。」
「万里ちゃんのとこは二人とも弁護士さんだもんね。私は、・・・」
万里花が話すと沙耶ちゃんが続き、誰が来るのかという話で盛り上がりだした。
私はその話に混ざって聞いていたのだが、不意に絢が声をかけてきた。
「そういえば、遥。」
「何?」
「隼くんには、芦の祭のこと話したの?」
皆さま、お気づきだったでしょうか?
一番の問題を、絢さんがぶっこんできました。
あ、そうだよね!というところで、今回はここまでです。




