入学式 3
私と十哉は、一兄が去ってから顔を見合わせた。
「同じクラスだって。」
「見に行くか。」
私たちは歩き進めると、クラス分けの貼り出しがされている場所なのだろう、掲示板に人だかりができている場所を見つけて足を止めた。
後ろからも見えるように少し高めに貼り出されたクラス分けの紙には、AからEの合計5クラスで書かれている。
「本当だ。私たちはC組みたいだね。」
「これで、俺の1年目は大丈夫だな。」
確かに、C組の中には私と十哉の名前が見て取れた。
「私は十哉のガイドではないんだから。一緒のクラスの、中学での友達に頼んでよ。」
「それは無理だ。別のクラスらしい。」
十哉の方向音痴は、気心の知れた人間にしか知られていない。
芦ケ谷高校は少し偏差値が高い学校で、私たちの沢野中学からの入学人数はかなり絞られた。(ちなみに、十哉はサッカーをしているので推薦入試での入学だ。)
だが、そこは友人が多い十哉。十哉がつるむ男子グループでも何人かは入学しているのだ。
その誰とも一緒ではないとは。
「運に見放されたね。」
「それは遥もみたいね。」
「絢!」
後ろから聞こえてきた声に私が振り返ると、私の無二の親友の水沢絢が立っていた。
そして、その横には絢と同じ顔で絢より少し背が高い男子生徒。
「こんにちは、遥さん。」
「麗くんも一緒なんだ。二人並ぶと壮観だねぇ。」
絢の横にいるのは、双子の弟の麗くんだ。
二人は一卵性の姉弟である。
腰まであるストレートの髪を持ち、人形のようなぱっちりした目に小さな唇の可愛らしい顔立ちの絢。
そして、ショートのストレートの髪に、同じ顔ながらも勝気な顔つきの絢とは違い優し気な目元を湛えた麗くん。
純和風な顔立ちの二人は、並ぶだけで目の保養である。
「それはあなた達もよ。前以上にギャラリーが増えてるんじゃない?」
周りの反応など気にした様子もなく、そう言ってきょろきょろする絢を慌てて私は止める。
「それは十哉がいるからだよ。私は関係ない。」
「生徒会長と同じような顔してよく言うわ。」
呆れた調子で言う絢に、私は首を振って言い返す。
「私は一兄みたいに美人ではないよ。」
私も母親似ではあるが、美人な母さんとほぼ瓜二つの兄とは違い、私は口元が父親似であったり顔の造りがやや違う。美人とは言えない。
「まあ確かに、美人ではないけれど……王子だものねぇ。」
私は絢の言葉が最初の方は聞こえたが、最後の方が呟きのようで聞き取れず、慌てて絢に訊き返す。
「ごめん、最後何か言った?」
絢は素知らぬ顔で首を降った。
「何でもないわ。それより、私と麗はあなたとは別のクラスよ。」
「ええ!そんなあ。」
中学最後の学年で絢と麗くんと私で三人一緒だったので淡い期待を抱いていたのだが、儚く散ってしまったようだ。
「それに、沙耶ちゃんに万里花も別クラスよ。」
「嘘でしょう!!?」
沙耶ちゃんと万里花は、中学校で絢と私といつも一緒にいた友達だ。嬉しいことに、みんな同じ高校に入学できたのだ。
「本当よ。見てみなさいよ。」
慌ててC組のクラス表を見てみるが、2人の名前はなかった。しかも、顔見知りの女の子たちの名前さえない。
沢野中学からの入学人数が少ないからって、これは。
「酷すぎる。」
打ちひしがれる私を他所に、絢はしれっと言う。
「ちなみに、私は麗とは離れたけど沙耶ちゃんと一緒。」
「いいなぁ、絢は。」
羨望の眼差しで絢を見つめると、冷たい一言が。
「まあ、新しい高校生活だから新しい友達を作れということじゃない?」
「厳しいお言葉で。」
だが、どれだけ言おうが絢は勝ち組である。
「まあ、俺が一緒だし大丈夫だって。」
そう言って側で見ていた十哉が慰めの声をかけてくれるが、なんの慰めにもならなかった。
次は少し早めに投稿しようと頑張りたいんですが、念のため3話目も載せておきます。