芦の祭 1
(改稿)ですが、万里花の名字がなかったので載せています
あの入学式の後、光希と私は他の女生徒とも仲良くなったが、普段は二人(と、時々十哉)で行動して仲を深めている。
そして、光希は私の友達である中学メンバーとも親しくなり、友好関係は順風満帆。
嫌なこともあったりするが、ゲームの世界と身構えていたのが嘘なくらい、穏やかに過ごしている。
・・・と思っていたのは、昨日までのお話です。
とある教室の中央で、その演説は繰り広げられていた。
「紗良さん、いいですか。一様は、入学されてから今まで、テストで全教科100点を更新されている秀才でいらっしゃいます。さらに、合気道で黒帯をお持ちで、スポーツもできて文武両道。また、生徒会長として、あの凛々しいお顔立ちでみなさんを指導され、まさに王子といっても過言ではないかたです。」
少しきつめな顔つきの、長い髪を綺麗に編み込んだ少女が、相手を睨みつつそう言い切った。
その言葉に対し、睨まれている少女は、長い髪を下ろして毛先をカールさせ、彼女とは対称的なやさしい顔立ちに微笑みを称えている。
その少女は、こう切り返した。
「まあ、凛お姉さまはお考えが古いのですね。遥様は、太陽のような暖かな笑顔で別け隔てなくみなに接され、女性に優しく、男性からも親しまれて人望がおありです。そして、王子のように凛々しくもあります。先日も、私たちのために横暴な先生に果敢に立ち向かってくださいました。ああ、あのときのお姿を思い出すだけで、私、胸がいっぱいに・・」
考えてみてほしい。
私が悪役というのなら、私が光希をいじめる側であって(する気はないが)、いじめられる側ではないはずなのだ。
だというのに、この状況はどういうことだろう。
「ですから・・・」
「いいえ、それなら・・・」
延々と教室の一角で繰り広げられる一兄と私の賛美大会は、私への新手のいじめとしか思えない。
一兄は、王子かどうかはわからないが、言葉通りの素晴らしい自慢の兄である。
そんな一兄と比較される私って。
・・・聞いているだけで、逃げ出したくなるんですが。
「水無月先輩、一先輩のファンクラブの会長だけあって貫禄があるね。」
私の右横で、万里花が感心したように言った。
瀬戸万里花は、中学時代の友人で、背は170センチと女性としては高く、テクノカットをしている。
パッと見で男性と勘違いされたり、スポーツをしているんですかとよく訊かれているが、美術部でインドアだったりする。
放課後、私が呼び出された時にたまたま一緒にいて、着いてきたのだ。
「それに対抗する花園さんも、水無月先輩の従妹って聞いたけど、遥のことなのに渡り合ってるわ。すごいわね。」
そして、私の左横で私を貶しつつしゃべるのは、今回も私を呼び出した張本人の絢である。
「あのー、絢さん。この状況で私を呼び出して、私にどうしろと。」
ちなみに、私が呼び出された場は何かと言うと、今度行われる文化祭である芦の祭の実行委員の集まりである。
入学して早々に文化祭というのは大変と思うが、なんでも、新しいクラスになった生徒たちの交流を深めさせ、かつ受験生に秋の行事での負担を軽減させるためだそうだ。
集まりでは、各クラスで決まった男女一名ずつの実行委員メンバーと、各部活の部長と副部長たちが集まり、生徒会が進行を行う。
ここの学校は、各クラスと各部活がそれぞれ必ず参加するのだそうだ。
絢は、ここで実行委員のメンバーとして出席していたので、私を呼び出した。
ここで、絢の性格を知る人なら、絢が実行委員!?と驚き、さらに自ら立候補したという事実にさらに驚くだろう。
どんな行事でも、面倒事としか思っていない絢である。
そんな絢が、何故わざわざ実行委員をしているかというと、自分がなった方が仕事が楽ということらしい。
・・・確かに、中学二年の時の文化祭を思い出せば、私には納得の理由である。
「そもそも、一兄がいてもこの調子なんでしょう?なら、私を呼んだってどうにも・・」
よく考えてみれば、生徒会が進行する集まりである。
二人に気をとられていたが、一兄がいるはずと辺りを見回すと、声をかけられた。
「遥、なんでここにいるんだ・・?」
「一兄!」
一兄が私たちに気が付いてくれたようで、驚いた様子でこちらにやって来た。
「一先輩、ご無沙汰してます。」
万里花が、丁寧に一兄に頭を下げた。
「ああ、久しぶりだな。確か、万里花も遥と同じで委員じゃなかったと思うが。」
「私は、遥が呼ばれたときに一緒にいたので、付いてきたんです。」
万里花がそう言うと、絢がすかさず手を上げた。
「一さん、私が呼びました。」
「・・やっぱり、呼んだのは絢か。」
一兄は、なんとなく予想がついていたようで、納得したように言った。
「俺でも、彼女がああなると手が出せない。遥を連れてきても、解決はできないと思うぞ。」
予想していた展開に、ほら!と私は絢の顔を見たが、絢はさらに言葉を重ねた。
「私は遥を呼びましたけど、そう指示を受けたので呼びました。」
その言葉に、一兄は怪訝な顔をする。
「指示を受けた?」
というわけで、とりあえず1話載せます。
今日中に修正して、もう1話載せる予定です。
よろしくお願いします。
投稿すぐに読んでいただいた方、申し訳ないです。
名前また似たようなの被ってるので、さすがにこれは変えます!
観月 凛花先輩から、水無月 凛先輩に。
よろしくお願いします。




