一の過去編:プリン 6
「兄さん、本当にお菓子が好きなんだね。」
作り終えたあと、調理器具を遥が洗い、俺が拭いて二人で片付けていると、突然遥がそんなことを俺に言った。
「始めてっていうのもあるけど、丁寧に作ってたでしょ?私は大雑把なところがあるから、兄さんみたいにはできないな。」
「・・・」
遥が褒めてくれるのは嬉しいが、気になることがあり、俺は遥に訊いてみた。
「なんで、遥は俺がお菓子を好きだって知ってるんだ?」
そう俺が言うと、遥はきょとんとした顔をした。
「だって、兄さんいつも幸せそうに父さんの手作りのお菓子食べてるでしょ?よっぽど好きなんだなって。父さんも、兄さんの顔を見てると毎回作り甲斐があるって言ってたよ。」
「・・・」
普段学校では何を考えているかわからないと言われ、自分の無表情に落ち込んでいたのだが、そんなことはなかったらしい。
「ねえ、兄さん。今日のお菓子作りは楽しかった?」
遥にそう聞かれ、俺は躊躇うことなく答えた。
「ああ、楽しかった。」
遥の言うように、俺はお菓子に関わることなら料理でも好きらしい。
「なら、また一緒にお菓子を作ろう。」
「・・え?」
「兄さん、お菓子作り向いてると思うんだ。お菓子が好きなら、自分の好きな味を自分で作るっていうのも面白いし。」
遥がそんなことを言い、俺は考えてもみなかった発想にびっくりする。
でも、一人でなく父さんや遥に教わりながらなら、いいかもしれない。
「そうだな。じゃあ、またやってみるか。」
そう俺が言うと、遥は嬉しそうに笑った。
「やった!約束だからね。」
「ああ、約束する。」
「じゃあ、指切りしよう。」
そう言って、遥は小指を出してきた。
「わかった。」
そんな無邪気な遥の一面に、俺は可愛らしいなと思いながら、二人で指切りげんまんの約束をしたのだった。




