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それを運命とは言いません  作者: 穂波幸保
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入学式 2


その後、隙を見て蹴り返そうとする十哉とおやを躱しながら進んでいると、前方から声ががかかった。

「おい、そこの二人。何じゃれあってるんだ。」

その言葉に前を向くと、私たちと同じ学校の制服に身を包んだはじめ兄が立っていた。腕には赤字に白で生徒会と書かれた腕章をつけている。

「一兄!」

そう言って、十哉が私の手を放して嬉しそうに兄の元へと走っていった。

いつも思うが、十哉の一兄への懐きようは、まさに主人を愛してやまない犬そのものである。

一兄は、土ケつちがや家の長男で高校三年生。そして、芦ケあしがや高校の生徒会長様である。

「一兄、生徒会の仕事はいいの?」

忙しい中で会いに来てくれたのではと思い、私も一兄の側に行き話しかける。

すると、引き締まっている顔がほんの少し緩んだ。

「仕事の最中だよ。新入生の様子を見に来たんだ。」

一兄と私は、母さん似の少しつり目の顔をしている。だが、友人いわく、私は柔らかい雰囲気で感情も顔に出るらしいのだが、一兄は表情がほぼ変わらず怖い印象らしい。

私に言わせると、そんなことはないのだが。

今も、私たちの前ではうっすらとだが笑みを浮かべてしゃべる優しい兄である。

「一兄、生徒会長で大変だな。」

十哉が生徒会の仕事を想像してか、宿題を目の前にした子供のように嫌そうな顔をして言う。

その言葉に、一兄は腕を組んで頷く。

「そうだな、誰かさんが迷子にならないように様子を見に来ないといけないしな。」

からかい交じりに一兄が言って十哉を見つめると、見つめられた十哉はドヤ顔をした。

「今日はまだ迷ってないよ。」

「さっき道を間違いかけたのはどこの誰だろうね。」

「おい、遥!それは言うなって。」

しれっと私が告げ口すると、慌てる十哉に一兄は笑った。

「おまえたちは相変わらずだな。悪いが遥、しっかり見ていてやってくれ。」

そう言って頼む姿は、まるで父親である。

こうやって小さい頃から一兄に頼まれて現在に至るのだが、兄から頼まれると私は無下にはできない。

「わかってるよ。友人が迷子になって入学式に出席できませんでしたなんて嫌だし。」

「ありがとう。遥はえらいな。」

一兄はその言葉に笑い、私の頭を撫で始めた。その行動に、私は慌てて声を上げる。

「一兄、ここ学校!」

「ああ、そうだな。」

こんな時、私は恥ずかしいと手をすぐに退かせばいいのだが、それをすると一兄がひどく落ち込むので無闇にできない。そのため、本人から止めてもらうのを待つしかない。

だが、これを始めると気が済むまでが長いのだ。

「みんな見てるって。」

「そんなことないだろう。」

「…いや、たぶん見てるよ。」

やはり止めそうにないので言い募るが、どこ吹く風だ。

いつも極力周りを見ないようにしているが、一兄が来たことにより見ている視線は増えているだろう。

それなのに、頭を撫で始めるって。


十哉は、昔から人気がある。

ハーフのため顔の彫りが深く、甘いマスクをして人懐っこい。やや幼い部分が欠点ではあるが、見た目にも中身にも女子には受けがいい。

それに加えて一兄。

一兄は母似と伝えたが、つり目で気の強い美人な母の血を私より色濃く継いでいる。

そのため、表情が乏しくきつい印象と女生徒は寄っては来ないが、遠目からでも目の保養になる色男である。


そんな男たちが、一人ならまだしも二人揃うと一気に注目度は上がり、目線を引き寄せるはずだ。

私はどうしても気になってしまい、試しに歩いている生徒をちらりと見てみた。

すると、歩きながらこちらをガン見する一人の女生徒と目があった。相手は慌てて目をそらしたが。

やはり、見られているじゃないか。

私は、やっと満足したのか手を下す一兄と、いいなと溢しながら見つめる十哉にため息をつきたくなった。

もう少し、己を自覚してほしい。

「じゃあ、俺はもう戻る。おまえたちは、二人揃ってC組だ。仲良くしろよ。」

そう言葉を残して、一兄は去っていった。


時間が経つのは、あっという間ですね。

載せよう載せよう、でも考えてない先の話どうしようなんて考えていたら2カ月経っていました。

とりあえず、本当にすいませんでした。

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