一の過去編:プリン 3
ガチャ
「・・・!」
ない・・・。
結局、二人とも特に会話することもなく4時を迎え、俺は二人で食べるおやつを求めて冷蔵庫を開けた。
しかし、父さんの手作りおやつは入っていなかった。
父さんは、家で仕事をするため、主夫としても生活している。
そして、3時のおやつにとクッキーやホットケーキにゼリーなど、色々作ってくれるのだ。
そのおやつは、今日は作ってないらしい。
「おやつ、今日はないみたいだね。」
「!!、遥。」
後ろから急に声がしたので驚いて振り返ると、本を読んでいたはずの遥が冷蔵庫を見つめて立っていた。
「父さんが作らないって珍しいね。慌ててたのかな。」
そう言いながら、遥は冷蔵庫の中、というよりも中身をじっと見つめている。
と思ったら、急に歩きだして戸棚を開けて中をチェックしだした。
「・・遥、何をしているんだ?」
戸惑いながら訊ねると、遥は俺の顔を見てにっこり笑うとこう言った。
「兄さん、一緒にプリンを作ろう。」
「・・プリン?」
「そう。今あるもので簡単に作れるし、兄さんはいつもおやつを楽しみにしてるでしょ?」
「!!」
確かに毎日の楽しみだが、家族の前で言ったことは一度もなかった。
何故知っているのだろう。
俺はびっくりして黙りこんでいたが、遥は俺の様子に気付かず、戸棚から調味料やら引き出しから鍋などの器具を出したりと忙しない。
「兄さん、冷蔵庫から卵と牛乳とってくれる?」
「・・!ああ。」
「卵は4個だから。」
「わかった。」
遥にそう言われ、俺はぎこちない動きで、言われた通りに冷蔵庫から牛乳と卵を取り出して机に置く。
「じゃあ、準備できたね。始めよう!」
そう遥が楽しそうに宣言をし、俺の始めてのプリン作りはスタートした。