入学式 13
とりあえず、整理してみよう。
あれから、私は家に帰って家族といつも通りの日常を過ごし、今は自分の部屋にいた。
そして、寝る前に落ち着いてゆっくり考えようと、勉強机でノートを広げてペンを手に取った。
自分が説明書を見て知っているキャラクターと、主人公が恋する相手のことをノートに書きだすためだ。
だが、ここで問題になってくるのは、私はある程度の登場人物は知っていても、ストーリーは一切知らないということだ。
なぜ知らないのか?
それはもちろん、私がゲームに興味もなければ、受験勉強の合間に手伝っていたからである。
そのことを思い返すと、なぜ少しでも見ておかなかったのかと後悔するが、仕方ない。
こうなるなんて、思いもしなかったのだから。
まあ、とりあえず書き出してみよう!
そう思って書いてはみたのだが・・・。
「一兄に、隼。十哉に、麗くん・・・」
私は、また思い返したくもない現実と向き合うことになり、名前を書くだけで気持ちが沈んでいく。
そう!そうなのだ。
思い出したときに一緒に判明したのが、ゲームで選択するキャラクターと私がほとんど関わりのある事実である。
確か、あとは先生が二人だった。
ゲームは、キャラクターを一人選ぶと、そのキャラクターのストーリーと一緒に彼らが担当する教科を勉強する仕組みだった。
一兄なら数学、十哉なら英語、麗くんなら国語という感じにだ。
そして、あとの二人の先生は社会に理科である。
毎回右下に顔が表示されて解説されるので、顔と教科は嫌でも覚えてしまった。
そんな中で、なぜ年下の隼が選択するキャラクタ一の中に入っているかというと、勉強の復習用だそうだ。
全教科をクリアすると選択できるようになり、隼に勉強を教えながら恋を育むストーリーを選択できるようになるらしい。
本当に手が込んで・・・。
もう、その話は置いておこう。
今後の対策を考えていかないといけない。
光希をいじめるなんてことはしたくないので、いじめは断固拒否する方向だ。
そして、光希が誰かと恋愛をする。
それは、あの四人だろうが、先生二人だろうが、私は誰と光希がカップルになろうが全然ウェルカムである。
だが、一番方法としてとりたかった、関わりのない人でというのは無理なようで。
そうなると、私がいじめたり恋愛を邪魔する行動にならないようにしないといけない。
先生は今のところ関わりがないので大丈夫そうだが、他の四人は無理である。
どうしたらいいんだろう。
考えなくちゃとは思うのだが、今日いろんなことがありすぎて頭がぼーっとしてなにも浮かんでこない。
コンコンコン
そんなとき、誰かが扉の外をノックした。
「ちょっと待って。」
こんな時間に誰だろうと考える間もなく、私は慌ててノートを仕舞ってすぐ扉を開けた。
「はい・・っ!?」
すると、開けたドアの隙間からするりと誰かが俊敏に部屋に入りこみ、そっと静かに扉を閉めた。
「ごめん、驚かせて。こうしないと、一兄さんに見つかると思って。」
誰かとは、なんと隼だった。
隼は、いつも寝るときの長袖のTシャツにジャージのズボンを履き、手に枕を持っている。
「・・・隼、その枕はなに?」
「なにって、一緒に寝ようと思って。」
私の問いに、隼は当たり前のように答えるが。
・・・・・いやいや、待て待て。
「それは、」
「ほらほら、もう夜も遅いし明日は何もないんだから。布団に入って入って。」
私がしゃべろうとすると、隼は言葉をかぶせて私を連れてベットへと歩き出した。
「ちょっ・・・」
「ほらほらほら。」
ベットの前に来ると、隼が私の後ろで急かすので私はしぶしぶ布団の中に入ると、隼も一緒に潜り込んできた。
「・・・隼、狭いんだけど。」
ベットは、小さい頃に父さんが時々うなされる私を気にして、買うときに両親のどちらかが添い寝できるように少し大きめにしてくれた。
だが、今は大人と子供ではなく大人の体格に近い二人のため、横を向いて寝てもベッドはやや狭く感じる。
「大丈夫、大丈夫。僕は構わないし。」
「いや、私が構うんだけど。」
後ろから抱しめられて横になっている状態に、さすがに一緒に寝るのは小さい頃以来なので、私はやや落ち着かない。
隼、お姉ちゃんは君の抱き枕じゃないんだが。
色々と言いたいことを言おうか言うまいか悶々としていると、隼がおもむろに話し出した。
「ねぇ、遥。」
「うん?」
「今日帰ってきてからも元気ないけど、何かあった?」
「、え?」
その一言で、私の頭は瞬時にフリーズした。
今月入学式の最終話、必ず載せます。
今回は一話のみ一旦載せます。
思ったよりも修正に時間がかかり反省です。