入学式 11
会話が落ち着くと、急に私の背後で声がした。
「は、る、か。ただいま!!」
そう聞こえたと同時に、急にするりと腰に当てていた腕の隙間から手が飛び出し、背後から抱き締められた。
一兄は一瞬驚いた表情をしたが、相手が誰かわかるとすぐに怒りだした。
「おい、隼。おまえ、遥に何をしているんだ。」
「え、何ってスキンシップ。」
当たり前のように答える隼に、一兄はさらに言い募る。
「隼。前から言ってるが、姉に抱きついたり手を繋いだり、もう小さい子供じゃないんだからやめろ。」
私は抱きつかれたことに驚きはなく、始まった兄弟のやりとりに、やはりと苦笑いをした。
そう。この私に抱きついてきたのは、正真正銘、私の弟の隼である。
何故か小さい頃からスキンシップが激しく、そのまま成長してしまった今となっては、時々姉弟でバカップルと勘違いされる。
私からすると、甚だ迷惑な話である。
だが、私の下にはこの隼しかおらず、一途に慕ってくれていると思うと無下にできないのが悲しいところで。
「いいよ、一兄。私が言うから。」
一兄が絡んでくると隼も嫌がり、最後は力ずくに発展して私が痛い目を見るので、私は一兄に断りを入れて隼に話しかける。
「隼。ここ公共の場だから、お姉ちゃんから離れようか。」
「えー」
外でならこの一言でしぶしぶ離れるのだが、今日は珍しく離れない。
後ろから抱き締められているため顔は見えないが、拗ねた口調だ。
しかも、一層力を入れて抱きついてくる。
何かあったのかと、困惑しながらさらに言葉をかける。
「どうした、隼。学校で何かあった?」
今日は土曜日。隼はバレーボールの部活帰りである。
「昨日の分の補充。」
「・・・・」
確かに、いつも私が家にいればべったりな隼が、昨日はひっついてこなかった。もしかして、私のことを気にして控えてくれていたのか。
だが・・・
「隼、これ以上するなら家でもさせないけど。」
「すぐやめます!!」
それとこれとは話が別である。
この前二話分載せようと思い、難産したため載せれなかったので今回は二話分で。
こんな弟、絶対世の中にはいないだろうなと思いつつ書いてました(笑)