入学式 10
「そこまで気にされると、重いしうざい。」
「う、うざい。。」
私の正直な気持ちを伝えると、一兄はショックを受けた顔をした。
そんな一兄を見つつ、私は間髪入れずに真剣な表情から笑みの表情に変え、さらに言葉を続けた。
「一兄がそこまで気にかけてくれたことは、嬉しいんだよ。でも、私のことは昨日はほっといてくれて良かったの。」
「・・・ほっといて良かった?」
私が次に言った言葉に一兄は反応し、今度は不思議そうな顔をして私を見た。
そのきょとんとした表情に、私はわからないんだろうなと感じて苦笑した。
「声をかけられたらその分意識するし、心配してくれた分相手のことに気を使ったりするでしょう?昨日の私は、そんな余裕なんてなかった。だから、ほっといてくれてありがたかったの。」
「父さんたちは・・。」
一兄は、父さんたちが私に昨日どう接したのか訊ねた。
一兄は昨日入学式の準備にかかりきりで、家族とまともに話していなかった。
「父さんたちも気にかけてくれてはいたけど、声をかけずに見守ってくれた。」
そう。昨日はずっと家にいたのだが、他の家族も私の様子や入学式のことには触れないでくれた。
それは私にとって、嬉しかったのだ。
「だから、一兄がそこまで気にする必要はないんだよ。ちょっと寝不足で失敗しちゃったけど、それは私のせいなんだし。」
そう言って、私は一兄に笑った。
そんな私の様子を一兄はじっと見つめたあと、おもむろに口を開いた。
「・・・・今回はそうだったんなら、構わない。だが、遥。一つ約束してくれ。」
「何?」
「ちゃんと、昔みたいに何かあればすぐに言ってくれ。体調が悪いなら、別に無理してまで代表挨拶をしたり、入学式に出席しなくていいんだからな。」
「・・・一兄っ。」
一兄の言葉に、私は胸が一杯になった。
心配しすぎるきらいはあるが、本当に言葉通り一兄は頼れる自慢の兄である。
私は照れくさくなり、わざと両手を腰に当てて怒ったように言う。
「一兄は心配しすぎ。今度は気を付けるから。」
「本当だな?」
探るような目で見られ、こちらも挑むような目をして返す。
「本当だよ。」
「よし、ならこの話はもう終わりだ。」
そう言って一兄は笑った。
悩みながら書くと、文章がおかしいのかおかしくないのか、わからなくなってきますね(苦笑)
今回のやりとりは、書いては消しを繰り返したので難産でした。。