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クリスマス小話

クリスマスに間に合わなかったクリスマス小話。

いつもお読みくださりありがとうございます~!!


書いてたんですけどね、手直し前にアルコールと睡魔にまけて…を2日繰り返しました。


ちょうど90話ですよ!!


なげぇ!!


この話こんなに長くなると思わなかったんですけど…

脱線ばっかりするからだよ?

わかってるよ!


うわーん!ごめんなさい~!!


ということで、いつもお付き合いしてくださる皆様に感謝を込めて…

その木を見たときクリスマスツリーと飾られたオーナメントのようだなって思った。



庭を散策中にツムギは色とりどりな綺麗な丸い実のなる木を見つけた。

柊のような縁がとげとげとした葉を持つ木。

樹型はクリスマスツリーそのもの。


実の大きさは鶏の卵よりは小さい。

色はさらりとしたマットな表面と相まって淡いパステルカラーだ。


枝も葉も白く、風にゆられると光の加減か微かに銀色に光ってとても綺麗。


背丈よりも少し高い程度のその木に近寄りそうっと実に触ってみる。

さわり心地は意外にも固く、厚い殻のような感触。


木の実かと思ったのに…違うのかな?


木の枝に咢もなくぽこりと付いているその様は実といえば実のようだし…虫の卵にも似ている。


…虫の卵だったらちょっと嫌だな。



ザアッと強い風が吹くとその木は

シャラン、シャランとベルのような音をたてた。


(わあ、不思議!)


どの部分がこんな音をたてているのだろう?

実を爪先でコツコツとつつくけれどベルのような音は鳴らなかった。


「うーん…葉っぱかな?」


白銀の葉にそっと触れるとさくりと音がしたような気がした。


あれ?


触るはずだった葉は指先や掌に深々と刺さりその縁を赤く染めている。


「うあっ!!」


慌てて手を引くと赤い滴を溢しながら指先から刺さった葉が抜けた。


傷を自覚するとズキンズキンと急に痛みが襲ってきて、慌てて傷ついた手をもう片方の手で押さえた。


傷は思いの外深いらしく、血は指の間から溢れスカートや袖をどんどん濡らして、地面にもこぼれていく。


綺麗な葉にふれてみたかっただけなのに…


起きてしまった予想外の事態にあわあわと慌てるばかりで、何をすればいいのかわからない。

止血が先かそれともすぐに宮に戻って誰かに治療してもらうべきか…

ああ、でも凄く痛いし血もたくさん出てるからとりあえず止血?

止血ってどうするんだろう?布をきつく巻くんだっけ?あれ?でもきつく巻きすぎると手が腐っちゃうって…じゃあ、どのくらいのキツさが正解?


「ツムギ!」


突然ノヴァイハが目の前に現れた。

これは瞬間移動というもの!?ワープ的なあれ?!


目を丸くする私の血だらけの両手を見てノヴァイハ息をのんだ。


「ーっ!血が!!痛みは?すぐに治療しに行こう。」


そういって手を押さえる私を抱き上げて…医務室までは瞬間移動ーーーなわけでもなく、徒歩で移動した。


徒歩とはいえそこは竜人。

徒歩なのにもの凄く早くて…というかジェットコースター並の移動の激しさに走っていないのに結界ごしに息苦しさを感じるほどの早さだった。


途中あまりの負荷に意識か途絶え…


きづいたら医務室で治療を終えた後だった。




「ーーー失血による昏倒ですが一時的なものですね。傷口に毒もついていませんでした。しかし、ずいぶんと鋭利な刃物で切ったようですが…何をお触りになったんですか?

「痛みと動揺が伝わってきてすぐにかけつけたが…側に凶器になるようなものは無かったな。」

「傷の様子から見ると攻撃を受けたというよりは番の方が鋭利なものに触れた可能性のほうが高そうですね。」

「ツムギの手は非常に柔らかいからなーーーツムギ?目が覚めた?」


話し声が聞こえるな…ってぼんやり考えていたらノヴァイハの心配そうな顔が目の前に広がった。


「指は動く?かなり深く切れていたからね魔術で治したけれど、しばらくは少し違和感が残ってしまうかもしれない」


血だらけだった手は綺麗に洗われて、傷跡はひとつも無かった。

少し痺れたような感覚があったけれど幸い手の動きに問題はなかった。


ミルエディオさんに動作確認をさせられて問題無しと太鼓判を押されたので、私はノヴァイハに横抱きにされながら移動することとなった。


お姫様だっこは嫌だと抵抗はしたのだけれど…

倒れた番を歩かせるなんて竜人の雄にとってはありえない行動だと言い切られてしまった。


それにお姫様だっこをするときノヴァイハは物凄くいい笑顔なので断りにくい。

美形め。これぞイケメンパワーかもしれない。


部屋に戻る途中で、先ほどの出来事をノヴァイハに話した。

とても綺麗な木があって綺麗な音が鳴ったことを不思議におもって、触ったら手がサックリと切れてしまったこと…。


そうこうしているうちに部屋についてしまった。


「冬に偉い人が生まれたお祭りがあって、その時に精霊が宿るといわれている木に飾りをするんです。丸い色とりどりのボール。昔は林檎っていう真っ赤な果物をかざっていたそうで…林檎はメルルみたいな赤い果物なん…あっ!」


ソファーに下ろされて目の前にあるノヴァイハの白い服がまだらに赤い色に染まっていた。どうやら血がついてしまったらしい。


「ごめんなさい!服が!」

「うん?、いいよ、このくらいすぐに消せるから。

それより傷が繋がってよかったとノヴァイハはにっこりと笑って私のおでこにキスをした。

繋がったってなんだろう…この出血量を考えたら確かにちょっと切った程度じゃないとはおもってたけど…


「こうやって…指定したものだけ集めるんだよ。」


ノヴァイハは私の手首にべったりとついたままだった血を指で撫でた後掌を上にした。

するとぼんやりと赤いもやが集まりくるくると回りだした。

そしてスーパーボールほどの深紅の玉がころりと出来上がった。


「ほら、綺麗になっただろ?」


そう言われ自分の服を見おろすと血で真っ赤だった部分にはシミひとつなくなっていた。そして、ノヴァイハの服についた血も。


「凄い便利!!」


こんなに綺麗になるなんて!!驚きの効果!!

洗剤のCMじゃないけど。


私はノヴァイハの掌にある赤い玉を指でつまみあげる。

硬い石のような感触。

くんっと匂いをかぐと血の匂いがした。


「うえっ…綺麗なのに血臭い…」

「そうかな?美味しそうな匂いだよ?」

「美味しそう!?」


レバー的な感覚?

竜人は時々肉食なコメントするなぁ…


ノヴァイハは私の手から玉をつまみ、ひょいと取り上げた。

そしてぱくりと赤い玉を口に含んだ。


「うん、おいしい」



ぽかーんとした顔を私はしていたことだろう。


ノヴァイハは飴のようにころころとそれを口腔内で転がしたあと。

とろりととろけるような微笑みを浮かべた。


こんな綺麗な笑顔を浮かべてこの人は美味しそうに私の血をたべている。


やっぱりこの人は人間じゃないんだって、こういうときに思い知る。

本当は竜だって…なら、人間を食べることだってあるのだろう。


その昔クリスマスツリーの起源となったその木には、子供が生け贄になってたんだと本で読んだことを思い出す。


じゃあ、クリスマスカラーの緑と赤は?緑は樹の緑で…赤は血の色なのかな?


ノヴァイハの腕の中でとりとめのないことを考える。


もしも私が食べられるなら…


クリスマスのごちそうの定番、七面鳥のように焼かれてお皿に盛られるのは嫌だな。


…凄く嫌だな。



「生がいいな」

ぽつりと、私はつぶやいた。

「うん?」

「丸焼きより、生がいい」

「う、うん?ツムギ?なんのこと?」

「調理法」




その日の食堂では困惑した顔でレーゲンユナフさんが運んできたのは…


大きな毛むくじゃらの豚みたいな生き物が、口に林檎的な果物メルルをくわえた状態で大皿に盛られたものだった。




「無理ーー!!!!」



「だよなぁ、ほら、ノヴァイハ人間は生肉喰わねぇんだよ。」

「えっ!?でもお昼に丸焼きより生がいいって…」

「や、焼き林檎の話、焼き林檎…焼きメルルはやっぱり丸ごとオーブンにいれるべきだよね!って話!!」



その日、竜人国に焼き林檎ならぬ焼きメルルの調理法が伝わった。





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