表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/134

われにかえる竜

久しぶりに見るヒューフブェナウは頭から血が噴き出していた。

しかしそんなことより彼の言っている言葉が気になる。



オ゛エッ!?



口に人が二人も入るとさすがの竜体でも苦しいものがある。


「番の方は生きておいでです。ノヴァイハ様がこちらにおいでになられる前に時限魔術で時を止めさせていただきました」



生きている状態ではあります。かろうじてですが。


そう言いながらヒューフブェナウは半分呑み込みかけていた番をずるりと喉の奥から引っ張り出した。



オ゛ェェェッ!



唾液にまみれた番を抱いて私の口からずるりと降りた。


ヒューフブェナウに抱かれた番をよく見ると確かに彼しか使えない時限魔術がかかっていた。


「私が抱いていて宜しいのですか?」


ヒューフブェナウが頭から血と唾液をたらしながらイタズラっ子のような顔で笑った。

遠い昔、王城の庭で共に遊んだ時のような顔。


「いいわけがないだろう」


竜から人の姿になりヒューフブェナウから番の体を受け止めた。


涙が出そうだ。

先ほどとは違う暖かな涙が。

時を止めて生きているのだ。



私の番

ずっと待っていたあなたを。




「王城から治癒師が派遣されているそうです。半刻もせずこちらに到着するでしょう。番の方はひどい怪我ですから安心はまだ出来ませんよ」


王城から情報を運んできたのだろう。

ヒューフブェナウの周りにいた泉の精霊がふいっとこちらに近より祝福するかのように私の回りでくるりと舞った。


きらきらと優しい光か降り注ぐ。

私が狂気に蝕まれてからは近寄ってこなかった優しい精霊たち。



あぁ、涙がとまらない。



万感の思いを込めて番の頬に唇を落とす。

柔らかな頬は王城に咲く花びらのようにすべらかで


…唾液でぬるりとしていた。



「危うく番を食べるところだった」



番を抱き締めながらつぶやくと

「生きてる番を食べたなんて洒落にもなりませんよ」

頭の血と唾液を嫌そうに拭いながらヒューフブェナウが言った。

「ついでにヒューフブェナウ、君まで食べるところだった」

「悪食にもほどがあります。私は例え私より先に死んだとしても愛しのマリイミリアを食べはしないですよ。彼女には暗い胃袋の中より花が似合う」



そうだね、マリイミリアには花が似合う。

私の番にはどんな花が似合うだろうか…




でも…




私の番は凄く美味しい。


血は甘露のように甘かった。

その肉もきっと柔らかく甘いのだろう。


只人の君は私より先に逝くだろうからその時は血の一滴も残らず食べてあげよう。



そうひそかに心に決めた。



近くを舞っていた泉の精霊はもうヒューフブェナウのもとへ戻っていた。




私は番と出会ってもやはり半ば狂った竜のままだから。










アクセス数の見方をさっき知った初心者ちかーむです。思いの外アクセス数が凄いことになって…こんな辺境の地にいらっしゃるなんて皆様なんて暇…げふんごふん…ありがとうございます。ランキングに登場する方々には遠く及びませんが細々と猛烈こっそりのつもりだったのでとーっても嬉しいです(*≧∀≦*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ