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赤とうさぎ

ノヴァイハ様の差し出したとろみのある赤い液体は匙からぽたりと番の方の唇に落ち、そのまま口の端からこぼれた。

まるで血のようだとイリイは鼻を押さえながら思った。

昔森にいた頃に魔狼に首をかじられた仲間の最後を思い出す。あの子も口の端から血をひとすじ垂らしていた。


イリイはぬぐうこともされぬ赤い液体を不思議に思う。

赤い筋はそのまま髪に触れて消えてしまった。

きっと髪の毛に臭いがついてしまったはず。

イリイの番のリーデオルグテマはこんなとき甲斐甲斐しく拭いてくれたりするのに。


ちらりと視線をノヴァイハ様に向けると青い顔で固まっている。


やはり臭いからかな?


そのノヴァイハ様からリーデオルグテマが緑に染まった爪のある指でひょいと匙を奪う。

イリイの好きな柔らかで美味しい新緑のような緑色の爪。


「それじゃ全然飲めてないだろ。ほれ」

そう言いながら匙を持たない空いた片手で素早く番の方の口を開け、赤い液体と共に匙が放りこんだ。


…そんなに入れていいのだろうか。


こんなに臭いのに。


リオは時々凄くおおざっぱだ。イリイはそう思った。

そんなところもすきなんだけれど、とも。


案の定、ノヴァイハ様が抱えていた番の方の体がびくりと震えた。

そのままカタカタとふるえたかとおもうとがばりと飛び起き、口をおさえた。


「ん"ーーーーー!!!!」


すかさずレーゲンユナフ様がお水を差し出した。

「お嬢ちゃん水だ!!」

ごくごくごくごく

すごい勢いで杯をあける番の方に今度は焼き菓子が差し出された。

「さあ、菓子も食べろ!!」

もぐもぐもぐもぐ


ぼろぼろ涙をこぼしながら渡されるものを元気に頬ばる姿にほっと心がなごむ。


「これもどうぞ、甘いです」


イリイもポケットにいれてあったとっておきの飴玉を差し出す。

綺麗な包み紙に包まれた橙色の飴玉。

リーデオルグテマが買ってくれる宝物みたいなお菓子。

誰かにあげるのは初めて。

その飴玉をありがとうと言いながら受け取り早速口のなかに放り、コロコロと転がした番の方は「はーっ」と大きなため息をついた。


「ひぬかとおもひまひた(死ぬかと思いました」


疲れたように呟かれた言葉にふふっと笑いが込み上げる。雨が大きくてはなしずらいみたい。



番の方は優しい。


イリイがすすめたルコルアのせいでこんなことになってしまったのに。

怒りもしないしイリイの差し出したものをまた食べてくれた。


このひと好き。


そう思ったのが伝わったのかリーテオルグテマが私の頭を撫でてくれる。


「とりあえず会食はまた今度にするか?ノヴァイハと番の方は部屋に戻って休憩するといい」

リーデオルグテマの言葉にイリイは

部屋を振り返りみた。


メロデイアとルエルハリオはブルブルと震えながら鼻を押さえながら床に膝をつき、

毒味役をかって出たミルエディオは青い顔で番のかたの脈をはかっているし、料理長のレーゲンユナフも吐き気を堪えるように口をおさえている


その景色にイリイは、死屍累々ってこういうことを言うんだなって思った。


イリイは

少し賢くなった気がした。



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