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気付け薬と竜

ドアから飛び込んできた強烈な臭いに

「キャーン!!」

と獣人のイリイが悲鳴を上げ飛びはね鼻を押さえた。

「うわぁっ!!苦い!辛苦いれふ!!」

「うおっ!くっせぇ!!」


臭いに敏感な砂竜のメロデイアと風竜のルエルハリオも涙目で鼻を押さえ悶えている。

地竜のミルエディオも思わず鼻を押さえたが、ノヴァイハは顔をしかめる程度だ。水竜は空気中の臭いを嗅ぐのはそれほど得意ではない。その上、水棲なので鼻を自分の意思で閉じられるため手で押さえる必要がない。


リーデオルグテマは色々気にしない性格なのでなので鼻をつまんただけで臭いの元を持ったレーゲンユナフに近づく。


「ほれは、なんなんは?(それはなんなんだ?)」

問われたレーゲンユナフは大きな布を顔半分に当て、飛行眼鏡をした状態で臭いの発生源であるカップを持ち上げた。

「お嬢ちゃんの気付け薬だ。人族はルコルア急性中毒による昏睡にはこの気付け薬を飲ませる。と書いてあった。おい、ノヴァイハこれを番に飲ませてやれ。」


ノヴァイハは差し出された液体にうろんげな目を向けた。

毒々しいほどに鮮やかな赤い液体である。


「この液体の安全性は?」


ノヴァイハのひやりとした視線にレーゲンユナフがすっと目線を外した。

「さて、どうだろうな…薬効は、まぁ、ほとんどないな。…あえて言うなら…恐ろしく不味いってだけだな!」

「そんな不確かなもの、この愛らしいツムギに飲ませられるわけないだろう!!」

「人族直伝の気付け薬だぞ?」

「だとしてもだ。どうみてもおかしな臭いだろ」

「気付け薬だからな」

「お前が先に飲め、料理人だろう」

「…まあ、そうだがな…」

レーゲンユナフの顔には、嫌だなぁ、飲みたくないなぁ…と書いてある。

「おれはうまいものを食うために料理人になったんだ」

「料理人ならば己の作った全ての料理の責任を、もつべきだ」

「これは断じて料理じゃねぇ!!」

「料理人がつくったらなら搾り汁も料理になるだろう?」


リーデオルグテマは鼻を押さえて涙目で震えている番のイリイの頭をなでながら、大人げない二人のやり取りに割ってはいる。

「まあまあ、待て、レーゲンユナフ、これは何が入っているんだ?この赤い色と臭いはオラジュだろう?」

その至極真っ当な問いにレーゲンユナフは少し言いよどんだ。そして、腹を決めたように材料と過程を説明した。

「この気付け薬は乾燥させたトゥガラの外皮と、乾燥させたジンジャの皮と実を煮出し、オラジュの果肉と皮をまとめてすりおろしたものを混ぜた後、濾して作ったものだ」


それを聞いた全員がなんとも言えない顔をした。

ノヴァイハはぶるぶると手を震わせ

「そんなもの、飲ませられるか!!」と吠えた。

そりゃそうだ。そのときだけは一同の心は一致した。

「何も一気の飲みさせろ!なんて言ってないぞ。おそらくひと匙分含ませるか嘗めさせる程度でもいいと思うぞ?」

多少勢いを失ったレーゲンユナフの言葉にミルエディオが腹を決めたように挙手をした。

「強烈な味覚刺激を与えることで覚醒させるのでしょうね…ここは医術を志すものとして私が一口、毒味をいたしましょう」

そういってカップに入っていた匙をぱくりと口に含み…ごふっ!!っとむせ、えずきながらミルエディオは実況をしはじめた。

「に、苦さの後に甘さが来て…おぇっ…喉に滲みる辛さですっぐっ…後味は辛苦い…臭すぎてもう臭いがわかりません…効果は…非常に…高そうですですが」

よろよろとしながら渡された口直しの水をガブガブと飲むミルエディオを尊敬の目でルエルハリオは見つめた。

ノヴァイハはまだ迷うそぶりを見せていたが、

「とりあえず1滴たらして様子を見よう」

というミルエディオとリーデオルグテマの言葉に渋々と頷き、ノヴァイハはレーゲンユナフから赤い液体を絡めた匙を受けとる。


そして、うっすらと、空いたツムギの口に赤い液体をぽとりと1滴落とした。






ーーーーーーーーー




「トゥガラ」

竜の爪のような形をした赤い実、非常に強い辛味が特徴。中の種は辛くはないが、消化されにくいため取り除いて使用すること。

その昔、竜に遭遇した旅人が、調味料として持っていたトゥガラの粉袋を竜の目に向けて投げ、九死に一生を得たという逸話のある実。

諺『竜の目にもトゥガラ』はこの逸話から来ている。



「ジンジャ」

ジュランメルジャネの木になる実。果皮は黄色、果実は白。

乾燥させた皮は煮出すと非常に苦い汁となるが、果実は甘味が強く甘味料として使われる。不思議なことに皮と実を一緒に煮出すと苦味と甘味が増すと共に凄まじい臭いを放つようになる。その臭気はオラジュよりは果実感がある。

また、ジュランメルジャネは猛毒のジュメルネ茸が生える木であるが木には毒性がない。



「オラジュ」

茶色い果実。中は赤く、食べると吐血したかのように口が赤くなる。あまりの臭さと苦さに飲み込めず吐き出すものが多く、毒はないものの、その様子から死の果実とも呼ばれる。

その昔食べた農夫が『オラ……ジュ…… (オラ、またこれを食べるくらいならジュメルネ茸(猛毒)を焼いて食べるサ)と言って倒れた』という逸話がそのまま名前の由来になった。



竜人画報社発刊

調味料大全集 第5集


「癖のある料理を好む竜人のための調味料」


より抜粋。


他のが終わってないのに…

「俺にうさみみが生えるとか…誰得だよ!」という新連載をはじめた…

アホのちかーむです。

気分転換作品ですので「竜つが」に支障のない程度のゆっくり更新です(*^^*)


ついでにコラボもので「亡国のガブリ」も発生していますが…こちらは、二次創作作品となります。

もとネタわかる人はほとんどいないんじゃないか!?なドール関係のお話なので…

お人形が苦手な方はうっかり検索をかけないようお願いいたします。

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