評価5000ポイント御礼小話
いつも読んでくださってありがとうございます~!!!
沢山の方が評価やブックマークをしてくださって、とてもとてもとーっても励みになってます!!
☆ありがとうございます☆
さて、竜のしにかけつがいも気づけば75話。
連載開始から2ヶ月。
おかしいな…こんなに長くなるはずじゃなかったのに…(;´д`)
そうおもっていることは秘密です。
書いてるけどね!
これ、このままじゃ100話こえるんじゃないか…
そんな不安に苛まれてるちかーむです。
さて、いつものように感謝の気持ちを小話に代えて。
今回の小話は…
只今、絶賛空気になっているウサギのイリイさんとリーデオルグテマ姉さんが部屋の隅で何をしているか。です。
では、皆様の大切なお時間をいただけることに感謝をこめて…
その日は前の晩から森がざわめいていた。茂みや枝葉の影で小さな生き物たちが声をひそめながら話し合っている。
怖いものが来るよ。
遠くのもりに。
こわいものが来たって。
ヒソヒソと囁き会う声があちこちから聞こえる。
サワサワ、ザワザワさざめくように。
探してるんだって。
なにを?
わからない。
でもいるんだって!
何が?
わからない。
こそこそ、ひそひそ。
姿は見えなくてもそこかしこで声がする。森の中の小さな生き物たち。
怖いね。
こわいの?
こわいよ。
なんで?
だって大きいよ。
だいじょうぶだよ。
だって…
ザアアッ!!
大きな風が吹いた。
最後の言葉は擦れる枝や葉の音で聞こえない。
イリイはぴんとたてた長い耳をそばだてるのをやめた。
森の皆は今朝から同じ話をしてばかりいる。
遠くから大きな何かが来るらしい。大きくて怖いけど怖くない。
隠れなくても大丈夫、怖いのは探してるだけ。
まとめるとそういうこと。
ならば大丈夫だろう。
本当はこんな日は、外にでない方がいいのだけれど。
長雨が近いから、食料は多めに集めないといけない。
イリイはウサギ獣人だから、雨に濡れると毛がなかなか乾かなくて風邪をひきやすい。
とくに長雨の季節は冷え込むから濡れるのは良くない。
濡れた体で長雨の季節に少ない食料しかなかったら…そう考えるとぶるりとからだが震えた。だから必死に食料を集めるために森のなかを走る。ひとりで走る。
ひとりは怖い。
イリイはウサギなのにひとりだから。
寒くても身を寄せる相手が居ないから。
必死に森を駆け回って食料を集める。
でも、篭にいっぱいに入れすぎないように。
重くて逃げられなくなったら大変だから。
少し前までは弟がいたけれど、魔獣に追われて逃げている時、すっかりはぐれてしまった。
だからイリイはもうひとりぼっちだ。
昔はもっと家族が多かったのに、ウサギはよく他の生き物に食べられるから、ひとり減りふたり減り、一度数が減ってしまうとどんどん少なくなってしまった。
どこか大きな群れに入れればいいのだけれど…このあたりの森にはウサギ獣人が居ない。
イリイは頭がよくないから、どうすればいいのかわからない。
わからないから、弟とはぐれたあの日からずっとひとりぼっちだ。
ザワザワ、さわさわ
ほら、くるよ。
もうすぐかな。
かくれる?
かくれなきゃ?
だいじょうぶだよ。
なんで?
だってこわいのはさがしてるんだよ。
なにを?
声が、さざめきが、ピタリとやんだ。
不自然なほどの静けさ。
鳥どころか虫さえ息をひそめた。
イリイもとっさに草の中にしゃがむ。
大きいこわいのはどこにいるのだろう?
小さいものたちの様子だとかなり近づいてきてるんだろう。
地面に耳をつける。
まだ足音は響いてこない。
息をひそめたまま身を起こすと、かさりと草が小さな音をたてる。
それにドキリとしながら草の間から辺りをぐるりと見渡す。
ザアアッ!!!
突風のような強い風が吹いた。
バサバサと髪の毛が舞い上がる。
イリイの髪の毛は明るい茶色だから、緑の草のなかだと目立ってしまう。
咄嗟に髪を押さえて体を低くする。
すぐ側の石のうしろで小さな声。
ねえ、怖いのはなにを探してるの?
しってる?
うん、知ってる。
それはね
ーーーうさぎだよ。
イリイの背筋ひやりと冷える。
家に戻ろう。
そう思って踵をかえそうとしたその時、草の間からこちらを覗く目に気づく。
金色の目
魔狼だ。
持っていた篭を投げ捨て、全速力で走り出す。
なんで気づかなかったんだろう。
大きなものの気配がしているから?
いつもならもっと早くに気付くのに。
走って走って方向転換をして、また走って。
けれど、ダメだ魔狼の方が早い。
ドン!!
背中に体当たりされ、草の上をゴロゴロと転がる。魔狼がべろりとしたなめずりをして走り寄ってくる。
勝利を確信した強者の目。
けれど、よろよろと再びイリイは走り出す。
おおきくて怖いのよりも怖いものが後ろにいる。
弱者は強者に食べられるだけだ。
そして森に還っていく。
わかっているけど最後まで足掻くのだ。それが森にいきるっていうこと。
狼の牙はもうすぐうしろ。
ふと、足元が急に黒くなった。
回りの土も草も何もかも急に黒く。
ーーー違う。
これは影だ。
ザアアッッ!!
一際強い突風がふきつける。
「みつけた」
地を這うような低い声。
見上げた空には、大きく開いた真っ赤な口。
生き物を殺すためにギザギザと尖った牙から、ドロリした唾液がぼたりと垂れた。
それが真っ暗になる前にイリイが見た最後のもの。
ばくり
ザアアッ!!!
再び突風が吹き、ウサギのいた場所にはなにもいなかった。
魔狼も居なかった、ただ白い灰だけが小さな山を作っていた。
ほらね。
ほんとだね。
うさぎを探してたんだよ。
うさぎだね。
食べられたね。
一口だね。
こわいね。
怖いのはこわいね。
でも、だいじょうぶだよ。
あのこが食べられたから?
そう。あのこがたべられたから、ぼくたちはだいじょうぶだよ。
森はいつもと同じ。
鳥も虫も動物もいつもの通りに動き出す。
狼がどこかにいって。、
うさぎが一匹食べられただけ。
それは森ではよくあること。
ーーーーーー
強すぎるノヴァイハ様の竜気が部屋を満たす。
息が苦しくなるほど濃い怒りの気配。
たたきつけるようなそれを、リーデオルグテマがイリイの前に立ち防いでくれる。
「イリイ大丈夫?」
リーデオルグテマの心配そうな声に頷く。
「大丈夫、あの時よりは怖くないから」
そう答えたらリーデオルグテマの眉がへにょりと下がる。
それを見ていイリイはふふっと笑う。
「ごめんね。もう怖くないですよ」
あの日からイリイはひとりじゃなくなった。
森には住めなくなったけど、ひとりぼっちのウサギじゃなくなった。
あの日、竜の口の中で唾液でどろどろになったイリイは、かじられるどころか傷ひとつ負うことなく、山のてっぺんにあった竜の巣穴に連れていかれた。
そして、そのまま竜の番になった。
しばらくの間は竜のおやつになったんだって思ってたけど。
するりとリーデオルグテマに近づくと、優しい腕が腰に回る。
森のような緑の髪が目の端にうつる。
肌から伝わるウサギよりもずっと低い体温。
寒い日に身を寄せるには竜は硬くて大きくて冷たくて不向きだけど。
「怖くないです」
リーデオルグテマにしがみつきながらそう言う。
「リオが優しい竜だって知ってるから、怖くない。
ひとりぼっちじゃないなら、怖い竜の前でも大丈夫。
だってイリイは知ってるんです。
ウサギだから頭はあんまり良くないけど、知ってるんですよ。
弱い生き物は強いものに食べられちゃうものなんだって。
森の生き物はみんな知ってるから。
そういうものなんだって知ってるから。
だから、あの子供の竜が怖い竜に食べられてもそれは仕方がないこと。
ね、そうでしょ?」
「そうだな。その通り世界は弱肉強食だ。イリイは頭がいいな」
リーデオルグテマが頭をぐりぐりと撫でてくれる。
リーデオルグテマの手は雌なのに大きくて気持ちがいい。
「いやいやいや、違うでしょ!あんたたちも止めなさいよ!!」
離れた場所にいたのにメロデイアさんがそう叫んだ。
なんで止めるんだろう?
イリイはやっぱり頭がわるいのでよくわからなかった。
でもね、おいしい葉っぱのことには詳しいんですよ。ね、リオ。
Q.絶賛空気なふたりが部屋の隅で何をしているか。
A.イチャイチャしてる。
となる予定でしたが…
おかしいな、これ軽くホラーじゃないか?
森でメルヘンな邂逅シーンを…
って思って書き出したのに。
微妙なホラーテイストになってしまいました。
なんでだろう?