表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/134

モシャモシャと私

「この野菜はちょっと酸味があって、こちらは甘味と苦味が強いの。これはそのまま食べておいしくて、こっちは丸かじりが最高なの…」


メロデイアさんが来てから始まった昼食会は食事会というよりイリイさんの野菜解説&試食会だった。

どうやらメロデイアさんは私が食べられる食材の確認をしたかったらしい。

きれいに洗われた色々な野菜がテーブルにどんどん上がってくる。

目にも鮮やかな色々な野菜を、イリイさんの真似をして少しづつかじる。そんな私たちをノヴァイハとリーデオルグテマさんは楽しそうに見て、メロデイアさんはメモを取っている。


なんだろう、この不思議空間。


モシャモシャたべていると気分はウサギ。


最初は固かったイリイさんもすっかり馴染んでいる。

ノヴァイハ達にすすめたけれど竜人はそこまで野菜の味にこだわらないらしい。

人間もそこまで拘らないよ。とは言えない。

目の前のウサギさんの期待に輝く瞳を曇らせるようなことは言えない…。今だって

「うふふ、だれかと一緒にいろんな野菜を食べるなんて、とっても久しぶりで嬉しい。まるで家族と一緒みたい」

そういいながらニコニコ笑顔で葉っぱをぱりぱりモシャモシャ食べていく。


そうね、竜人は葉っぱあんまりたべないものね。竜人国で草食動物はかなり浮きますよね。

うんうん、と頷く。

喋らないのは口の中の野菜…というか葉っぱの繊維が固かったから。


これは食べにくいないなぁ…味も草だ。といわんばかりの


「リーデオルグテマはリュタタビマの葉っぱしか食べてくれないから…私はあの葉っぱあんまり好きじゃないし…ちょっとつまらなかったの。でも、ツィー様が葉っぱ好きなら私と一緒にお散歩行って、葉っぱの味くらべ出来るの!リーデオルグテマは食べ比べしようと葉っぱを差し出しても『うん、草だな!』しかいってくれないし…」


そうですよね、もうこれ野菜じゃなくて葉っぱっていうか草ですよねイリイさん。


私も口のモシャモシャなければリーデオルグテマさんと同じ返事すると思いますよ…


散歩しながら葉っぱ味くらべは、さすがに付き合えないかな…洗いたいし。


それにイリイさん、横でリーデオルグテマさんがショック受けてますよ?

そう話したいけど口の中のモシャモシャが消えていかない。


「あら?ツィー様、その葉っぱは硬い?やっぱり柔らかくて、歯切れのいいものが好きなの?」

モシャモシャしながらこくこくと頷く。話せない私の代わりにノヴァイハが私の頬をつつきながらイリイさんの言葉に返事をする。

つつかないでほしいなぁ…そんなふわふわ笑顔で見つめられても、この口の中の繊維は消えないし…

「ツムギは肉も崩れるように柔らかいものしか食べられないんだ」

「竜人の方々が好むお肉は固すぎです。私が食べられるのは仔ゲヌルドのお肉までです」

ごくん。と繊維を飲み下すと、すかさずイリイさんがニコニコ笑顔で新しい植物を差し出してきた。


「この根っこは食べると体がポカポカするの」

そう言われて食べた赤くて丸い野菜の輪切り。見た目はラディッシュに似てる。

エンドレスだなぁて…そろそろお肉食べたい。そう思う私の考えを読んだようにノヴァイハが

「これを食べたらつぎは肉にしようか」

そういった。うん、お肉食べたい!


「肉も色々用意してあるんだよ。」


…お肉も同じパターンか…


イリイさんから渡されたラディッシュに似た野菜をひとかじりする。意外にも辛味はなく、サクリとした歯ごたえが瑞々しい少し甘い野菜だった。

「おいしい?」

イリイさんのその言葉にうんうんと頷き、噛み砕いた野菜をごくん。と呑み込む。するとお腹が急に熱くなった。おお、これがポカポカ暖かくなるってことね。

「食べやすくて美味しいです」

ポカポカというよりカッと熱い…?

美味しいので手に持ったものをサクサク食べるとイリイさんがにっこり笑って

「寒いときにたべると、とても体があたたかくなっていいんですよ。それに…えいよう…もとても…よく…」

あれ?なんでだろう?イリイさんの声が遠くなっていく。


ああ、でも…ほわほわポカポカいい気持ち。

目の前のイリイさんの耳がゆらゆらしていてかわいい。


「ふふっ」なんだかとっても楽しい気分。


視線を横に動かすとノヴァイハの差し出したフォークの先にはお肉。

そうだ、お肉食べたかったんだ。パクっと食べると肉汁が口に広がる。

あぁ、シンプルに塩と香辛料で焼かれていて美味しい。

少し筋があるけどそれも肉って感じで嫌いじゃない。


「おいしい?じゃあ、こっちは?」


差し出された肉は小さい塊のちょっと固そうなお肉。煮てあるのかな?ぱくりと口に入れるとほろりと崩れなかった。…味は美味しい。美味しいけれど結構硬い。シチューの煮込んで柔らかくなる前のお肉みたいな…


ふわふわほわほわした頭でいい例えを考えるけれど思い浮かばず…

とりあえず頑張って飲み込んだ。


「ちょっとかたそうだね」


ノヴァイハが何か言っているのだけれど…


なんだろう、ぐわんぐわんしてきた。


ぼんやりする私の目の前に骨付き肉が差し出された。

これはね~見るからに無理っぽいねぇ~

あ~でも~もしかしたらミラクルに柔らかいかもしれないし?


ガブリと噛んだ。


歯が立たないってこういうこと言うんだ。まさかお肉でその意味を知るなんて予想外だなぁ…

これもかじりかけになるのかな?かじれてないけど。

どんどん霞がかかる頭のなか。

色々考えてているつもりでも纏まらない思考のなかノヴァイハを見上げる。


そうか、ノヴァイハにたべてもらえばいいんだよね。

そうすればお肉も無駄にならない。

「ツムギ?どうしたの?」

お肉から口を離し、唇についた肉汁と脂を舌で嘗めとる。うん、味はいい、これならノヴァイハの口にも合うよね。ノヴァイハの手からお肉を奪う。


「はい、あーん」


驚いた顔のノヴァイハの口に無理やり骨付き肉を突っ込んだ…



所で私の意識は暗闇に沈んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ