文学と私
庭園を散策した後に、昼食までは少し休憩してらっしゃい。そう言われて私とメロデイアさんは別れた。
レーゲンユナフさんと別れた後は気まずかった空気も戻り、メロデイアさんはノヴァイハとの昔話を面白おかしく話してくれた。
この庭園で二人でイタズラした話とか、マリイミリアさんとヒューフブェナウさんも子供だった頃の話とか。
見た目では年上に見えるマリイミリアさんだけれど話を聞くと二人の幼馴染みなんだとし納得できる。そしてマリイミリアさんが結構なお転婆だったってことも。
それにしても…
少し休憩、というがこの部屋には時計がない。
他の部屋にも無い。
それになんとなくだけれど…竜人の少しは人間的にはかなり長い時間のような気がする。私の腹時はまだ全然空腹を訴えてない。
そこで、私はこの前蔵書室で借りた本を読むことにした。
『竜と火を見つめて』
とある事情で仕事の休暇をとることとなり、別荘を訪れた火竜の主人公とある水竜女性と出会うことになる。
その女性は鱗か剥がれるという難病に侵され海辺に近い別荘に住むこととなり、様々なものを諦めて過ごす日々、その日偶然海辺を散歩中に主人公と出会う。
二人は同じファンシンティガーズをこよなく愛するもの同士意気投合する。
出会った瞬間に主人公が番だと気づ いた女性だけれど、自分に残された時間が少ないこともまた知っていて…番だとは気づかぬふりをした。
そして、主人公もまた事情を抱えていたために、お互いに本名とは異なる名前を名乗りながら交流を深めた。
街に戻るという主人公は遠くでも話せる魔道具と転送機能つきの日記を渡し二人の遠距離恋愛が始まったーーーー
「この本は悲恋系な気がする…」
全体的になんだか薄暗い…そしておそらく…かなり昔の話らしい。本の中盤は二人の交換日記の内容だった。
ーーーー女性は病気が悪化し鱗の大半が剥がれてしまう。人型をとってもその影響があり顔の半分は包帯で隠されてしまっていた。
再び二人は会うことになったが、女性のその姿を見て主人公は覚悟を決める。
己が番だと名乗ることを。
これからの時を共に歩もうと。
そして運命の日…
とうとう動けなくなってしまった女性の部屋を訪れた主人公は番となるべく女性をだきよせた。
その瞬間、女性は燃えた。
「あなたは生きて…」
と女性は火の中で笑って死んでいった。そしてその火をみつめながら主人公は悲嘆に暮れて呟いた。
「そんなにも私が嫌いだったのか…」
「え?ええええーー!?」
ちょっと、ちょっと話のオチが解らないよ!?
どういうこと!?
何で燃えるの!?
火竜と水竜だから?
しかも嫌われてたってなんだ!?
異世界は文学も異世界だ。
うーん、これは今度ノヴァイハに解釈を聞こう。