表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/134

唄う竜


鼻唄を歌いながら窓の側におかれたテーブルで昨晩狩った金色の3つ首竜の鱗を剥がして積んでいく。

金の鱗は指でつまみ上げるとくぐっとしなりそして剥ぐ力に耐えかねるとカキーンと澄んだ音をたてながら剥がれる。


「うーん…」

寝台に眠っていたツムギが唸る。

少し苦しそうだ。どんな夢を見ているのだろう?潜めた眉がその夢が決して良い夢ではないものだと訴えている。


『サッ……ブ…ちゃん!?』


そう叫ぶとツムギは飛び起きた。


はあはあと苦しそうに胸を押さえる。


サッ…ブ…チャン…とは何?


そうツムギに問おうとしてハッとなる。

拷問に使われる魔物『サッレブニュルヂャン』を思い出したからだ。

あの生き物が関わる記憶だとしたら…それは…

いや、まさか、こんな子供にそんな……。


不安な気持ちを押さえつける。

今はツムギの様子を見ることが重要だ。

緊張で冷えていく指先で、きつく布団を握りしめるツムギのその上に手に合わせる。


暖かいツムギの手に触れると緊張が緩む。

そうだ、ツムギはここにいるのだ。過去に何があったととしても。

「大丈夫?」


そう聞くと少し困ったように

「うん…何か…変な夢を見てた気が…」

と答える。その答えにホッとする。

「思い出せる?」

「うーん…あ、ノーイ歌ってました?」

思い出した!

と言うように聞き返され、少し気恥ずかしくなる。

1度は皆が番と唄うその歌を歌うほど浮かれていたのを知られてしまったから。


その気恥ずかしさを隠し、歌の説明をする。そして…ツムギが夢を覚えていないことに安堵する。

サッレブニュルヂャンについては夢なのか過去にあったことなのか、それはわからない。そして、出来る事ならば…思い出さぬままで居てほしい。



3つ首竜の頭に驚いて…奇妙な声をあげてしまう、繊細な可愛い君のままでいてほしいから。


「ヨルサルクーレル」


特徴的な旋律を繰り返すことで有名な竜人国の古典民謡。

諸説あるが、繰り返される旋律部分は、番を迎えるために、巣の床をピカピカに磨く雄竜人が振るう尾の打撃音を表したものと言われている。

繰り返す特徴的な旋律を番と掛け合わせ唄う。古くから存在し、非常に簡単な旋律を繰り返すため、元々は竜体で歌われていたものと考えられる。現存する歌詞は後付けであり、そのため数多の歌詞が存在し、また、その部分に独自の歌詞を当てはめ、番に捧げる歌にすることもある。

番と山に散策に行く時に唄うの定番の歌。



(例)

「あの山の頂上で君と一緒にヨルサルクーレルを歌いたいな。」

「僕が君に捧げるために考えたヨルサルクーレルを聞いて!!」




『サッレブニュルヂャン』


湿気の多い場所に現れる非常に珍しいスライムの近親種。古くから拷問に使われる事が多く非常に危険なためサッレブニュルヂャンの被害と思われるものが出た場合、討伐隊が結成され速やかに捕獲される。そのため実際に目にすることはほとんどない。


しかしその凶悪な用途と不透明な実態から、実現不可能な罰として古来より口約束を破った時の処罰方法の1つとして登場する。


(例)

「俺に嘘をついたらサッレブニュルヂャンを飲ますよ?」

「僕の愛を疑うなんて…そんな君にはサッレブニュルヂャンが必要だね。」



竜人国世代を越えたベストセラー

『番に愛を伝える100万の手引き』

より抜粋

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ