さ…ぶ…な私
「さ…ぶ…な私」のノヴァイハサイド&後書きを分割して「唄う竜」にいたしました。
楽しそうな鼻唄が聞こえた。
それにカキーンという澄んだ音。
ふんふんふーん、ふんふんふーん
あ、わかった、誰か木をきってるんだ、だからカキーンて…
あれ?山の雲の上であのひよこの後輩くんが後光も眩しくサムズアップ。
何でサムズアップ?
ふんふんふーん、ふんふんふーん
カキーン
またあの鼻唄と音が…
あれ?カキーン?
木を切るのってカキーン?
夏の球児が球場で木を切るの!?
あの後ろ姿、野球のユニフォーム着て木を切ってるあのひと誰だろう?
頭は坊主だけど…振り返ったその顔
あっ!
その鼻は…
「ーーサッ…ブ…ちゃん!?」
がばっ!と起きる。
何だろう、思い出せないけど変な夢を見た気がする。
起き抜けに何か叫んだ気もするけど…
はあはあと上がる息とドキドキする心臓。
掛けられていた布団をギュッと握り、片手は心臓を押さえるように胸にふれた。
一体何の夢だったんだろう?
そっと…布団のうえの手にひんやりとした手が乗った。
「大丈夫?」
心配そうな声。
声のする方をむくとピンクと優しいチョコミント色の瞳が、心配そうな色を湛えて見つめている。
「うん…何か…変な夢を見てた気が…」
「思い出せる?」
「うーん…あ、ノーイ歌ってました?」
ぼんやりと思い出す。誰か歌ってた気がする。そう思って聞くとノーイはちょっと照れたように笑ってヨルサルクーレルという伝統的な歌を歌ってたんだと教えてくれた。
むかしから番に唄うんだと。
「いつか一緒に山に出掛けたら唄おう。その時に教えてあげるよ。」
その嬉しそうな顔に私も思わずつられて微笑んだ。
はい。いつか教えてと…答えようとした言葉は言葉にならず
「は、ひょぁわああ!?」
奇妙な叫び声になった。
ノヴァイハの後ろから大きな金色の竜の頭がこちらを睨んでたから。