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竜を討つ竜

金色の三つ首竜は、魔人の国と竜人国の境となる山の中腹に居た。既に魔人たちが交戦しており、視界を確保するためだろう、大きな光を灯す珠が空にいくつも浮かんでいる。


闇よりも濃くもうもうと上がる黒煙の中にギラリと輝く金色の鱗。

ひとつの竜の体に3つの長すぎる頭。


異形の竜だ。


3つの口からは次から次へと光線を放っている。かなりの高熱なのだろう、放たれた光線は当たったものを溶かし、それは一瞬のちに膨れ上がり、激しい爆発を起こすした。

爆風があたりをの木々をなぎ倒し、もうもうと黒煙があがる。


三つ首竜の足元では、魔人達のが必死の攻防を繰り広げていた。

三つ首竜よりも何倍も小さな魔人たちが、必死に三つ首竜の歩みをとめようとしている。


片腕を半分もがれた狼男は、残った動く腕一本で先頭に立ち戦っている。

同じようにぼろぼろの仲間に声をかけ、誰よりも果敢に戦っていた。地臥して動かぬものもの達をよけながら。


あの男が倒れた時がこの砦の落ちるときか。


そう思わせるほどの覇気が男にはあった。

友をなくし、腕をなくし、血と泥にまみれ、敵うはずもない三つ首竜に立ち向かうその姿。


砦の先の街を守るためか…

その向こうにある王都にいかせぬためか、

それとも仇討ちか…


何を思い戦うのかは、その姿からてはわからなかったが…

その命懸けな様は胸に響いた。


ふと、思う。

あの街に彼らの番がいるのだろうか、と。


失血が酷いのか狼男がふらりとよろける、その隙を見逃さずの三つ首竜のあぎとのひとつが狼男に狙いを定めた。


狼男は一瞬目を見開き、そして諦めたように目を閉じた。



ギイン!!



狼男と三つ首竜の牙の間に手に持っていた剣を滑りこませる。

牙に当たった剣が不快な音をたてるがきにせず剣をそのままの勢いで振り抜く。


三つ首竜は双頭の竜になった。


キリキリキリと竜らしくない高い声で吠える残りの2つの頭は

しかし、警戒音を出すように頭を振り上げたまま動きをとめた。


ひとつしかない胴体の真ん中に突き立てられたノヴァイハの手。

ズブリと抜かれるその手中には金色の竜珠。


ノヴァイハは血が溢れる前にその場所から離れる。


掌の珠をみる。

竜珠というほど丸くもなく、魔石と竜珠の間というべきだろう。

あの竜には竜人ほどの知性はなかったようだ。


剣をしまい、先ほど切り落とした竜の頭をつかみあげる。


金色の鱗ばかり沢山あってもツムギが困るだろうからお土産はこれだけにしよう。



「あ、ありがとうございます。」


半分千切れた腕を押さえた狼男が礼を言ってきた。

「いや、かまわぬ、亜竜とはいえ竜だ、それも三つ首。よく持ちこたえたな。」


そう言うと狼男がは獣面のままニヤリと笑った。

「あの、街には番がいるんですよ、行かせるわけにはいかないでしょう?

「ああ、そうか、街にいるのか。」

やはり、そうだったのか。

「ええ、ここの砦を守るやつらはほとんどあの街に番をおいてきてるやつらですよ。でも、三つ首竜退治も終わったんでやっと会いに行ける。」


その軽い口調の裏に潜む重さ。

死を覚悟していたものの重さだ。


「俺の番にはまだ、会ったことはないんですけどね…こんなに待たせたことを怒っているかもしれない。」


風にかき回された黒煙が、遠くに見える街の灯りをかすませる。

それを狼男は目を細めながら見つつ

「平手打ちの一つや二つくらいは、覚悟しなきゃなんねーな。」


そう、晴れ晴れと笑った。


周りの部下達のなのだろう、彼等も共に笑っていた。




随分と昔に忘れてしまっていた

生きて生活している者達の笑い声を。

それを聞きながら…戻ろうと思った。



番の眠るそのそばに行きたいとおもった。


三つ首竜と戦っていたのは

食べ物にまつわるえとせとらシリーズ

2作目の『腹八分目』

に出てくる狼男さんでした☆


『腹八分目』はムーンさんではR-18部分の加筆がされてます。





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