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潰れる竜

ノヴァイハは闇のなかでバサリと羽を拡げる。


しなやかな、けれど頑丈な皮膜に覆われたその羽は、髪と同様に番の好む色に変わっている。

鱗もまた、全てが番の色に染め変えられている。

しかし、夜の闇が深すぎて繊細なその色はただの色なしの白にしかみえない。


それでいい。


ツムギがくれた優しい色を、愚かな人族どもに見せていいはずがない。



グルルルと喉がなる。

べろりと舌で尖った牙を舐める。



さあ、愚かな人族の全てを終わらせにいこう。






ぶわり




飛び立とうとした瞬間。



突如頭上に魔方陣が展開され…

大きな塊がノヴァイハの頭上に現れた。


ノヴァイハは咄嗟に結界を展開するも間に合わず、パリンと割れる音の一瞬後に、ズシンと地響きと共にノヴァイハを押し潰した。




「ぐぇっ!!」








空に展開されていたままだった、魔方陣からマリイミリアがスカートをはためかせながら、ストンとノヴァイハの側のへ降りてきた。

塔にかけられた結界は、先ほどの衝撃を見事に防ぎ、並べられた石に乱れは微塵もない。


ノヴァイハを潰したものの正体は…竜体のヒューフブェナウだった。

しかも、ヒューフブェナウは何故か、目をまわしている。

そんな番の様子を心配することもなく、マリイミリアはスカートの乱れを直すと


「まあ、ノヴァイハ!潰れたピョソキッチュのようなお声でしたわね。」


とコロコロと笑った。










「ピョソキッチュ」

竜人国の湿地や水辺に生息する生き物。

特徴的な進化を遂げた後脚を持ち、その後脚をバネのように使い脅威的な跳躍力で敵から逃げる。その後脚は食用となる。

色は緑色、茶色と生息地によって変わる。

黄色のピョソキッチュも極希に発見される。


困らせると大量の汗をかき、その汗はピョソキッチュ油として古くから軟膏の原料として重用されてきた。

円らな瞳をしており、幼児向けの物語では非常聡明で頼りになる相棒として、描かれることが多い。

珍しい黄色いピョソキッチュは、幸せを招くとされる。

また、黄色いピョソキッチュに白い布を被せ、勢いよく押し潰すとピョソキッチュ拓が出来る。その際、腸を飛び出さぬようにするのが至難の技であるが、非常にうまくできた場合、そのピョソキッチュ拓には精霊が宿り、話し出すといわれている。



(例)

「君の円らな瞳はまるでピョソキッチュのように愛らしい。」

「君は僕の幸せの黄色いピョソキッチュだ。」




竜人国世代を越えたベストセラー

「番に愛を伝える100万の手引き」

より抜粋




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