秘匿されしこども
竜のしにかけつがいも50話になりました~
皆様お付き合いありがとうございます!
感謝の気持ちを形に!
というパッションのおもむくままにムーンさんで番外編というか…裏話をかいてみました。
猛烈にムーンさん仕様な上、色んな意味で閲覧注意な作品になっております(^_^;)
ご覚悟の上お読みください。
むらさきちかーむ
ピンクな竜のピンクな小咄
http://novel18.syosetu.com/n4414do/1/
メロデイアはツムギの様子を報告するため現王ヘリディオフのもとへ向かった。部屋につくと宰相のヌェノサスが仕事の手をとめメロデイアに話を向ける。
「急に目を醒ましたとききましたが、番の方の様子はどうでしたか?」
ヘリディオフも書類を繰る手をとめた。
「はい、不安定だった魔力器が突如として安定し、ノヴァイハの影響により変異した魔道具の呪縛から自力で意識をもどしました。原因は特定できておりません。現在は会話、食事共に大きな問題はなく、長い眠りの副作用である筋肉の衰えや強張りも非常に少ない状態でした。おそらく残留していたヒューフブェナウの時限魔法が作用していたと思われます。自身に関することについては特に記憶の混濁がみられ、個人についての情報は年齢以外は収穫なしです」
ふむ、とヘリディオフは考えこむように顎をなでた。
「番の方の出身国を特定するため、会話に多言語を用いて会話をしたところ…古語を含む現存するほぼ全ての言語を網羅しており、非常に高度な翻訳魔法がかけられていることが判明。また、16歳より結婚が可能と認識しており、部屋の外に出るという選択肢を持たず、空を窓の外から見たことがない様子でした」
話を進めるうちにヘリディオフは非常に不快そうな顔をしている。
宰相のヌェノサスは「空を見たことがない?」と確認してきた。
「はい、ノヴァイハには空の魔素ゆらぎについて聞いておりました。それを聞き、窓から見てた空はこうなっていたのかと答えていました。また強い光を苦手とするようです」
なるほど、とヌェノサスはモノクルの位置をなおした。
メロデイアは再び報告を続ける。
「知識には非常に偏りがあり、日常的に使うものですら知らぬことがあるようです。しかし、素材やその特性などに興味を示すことも多く、計算においては学者並の速度でした。あとは…そうですね、ノヴァイハに仕事をすることを進め<働かざる者食うべからず>と言い切りました。年齢よりも細い体をしている点を鑑みると…食事を制限され、外界から遮断された閉ざされた環境で育てられていた。と考えられます」
話を進めるたびに深くなっていった現王ヘリディオフの眉間の皺は、既に限界まで深く刻まれていた。宰相もおなじく苦々しい顔をしている。
「まさに駒だな。聞けば聞くほど嫌気がさす」
ヘリディオフが吐き捨てるように呟く。
「権力者に飼われていた憐れなこどもか…」
深くなりすぎた眉間の皺をぐりぐりともむ。
「まあ、そう考えるのが妥当ね」
報告は終わったとばかりにメロデイアは口調を崩した。
「幸いなことに暴力は受けていなかったみたいよ?ノヴァイハ以外が頭を撫でても平気だったしね。お嬢ちゃんの精神も環境を考えたらとても健全だわ」
救いがそれだけとは…まったく救いようがない。
宰相は資料を取り出してメロデイアに渡した。
「こちらでも調べてみましたが黒髪のこどもについてほぼ情報はありませんでした。現在の人族の王族に黒髪は居ないとも報告がありました」宰相の言葉にヘリディオフは頷いた。
「黒髪故に隠されたか、駒にされたのか…真相はわからぬが…」
憐れなことだ。
ヘリディオフは胸のなかでつぶやいた。
「ノヴァイハはどうだ?」
「今はお嬢ちゃんが起きてるからそっちに付きっきりよ、でも…夜には動くでしょうね」
「人族の殲滅か?」
「番をあれだけ痛めつけられたのだもの雄竜人としては当たり前の行動ね」
「まったく…どこまでも頭の痛い問題だ」
人族を殲滅したら世界のバランスが崩れてしまう。しかし怒れる雄竜人をなだめるのもまた容易ではないのだ。
今夜は荒れそうだ。
ヘリディオフは重いため息をついた。