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しゃがみこむ竜

昼食の後は西の離宮の蔵書室へツムギを案内した。

マリイミリアは下がっていった、今ごろは厨房で食材の検討をしているのだろう。


西の離宮の蔵書室は城の蔵書よりも物語や図鑑が多い。体の弱かった母のために作られた美しい蔵書室なのだ。天井には張られた様々な水晶が、柔らかな光を届けとても美しい。

ツムギも天井を見て小さく感嘆の声を上げていた。蔵書は種類別に別れており、簡単なものから非常に専門的なものまで多岐にわたっていた。

蔵書の文字は人族の統一言語から古代語、魔族や精霊族の言語が全て混ざっていたが、ツムギは特に躊躇うことなく本を手に取っていた。ツムギには非常に高度な翻訳魔法がかけられているようだ。


「そういえば、マリイミリアさんに本をたのんでしまったんですが…」

ふと、きづいたように本から顔をあげたツムギの肩で髪が揺れた。

「では物語にしてはどう?そうすればマリイミリアの持ってくる本とは重ならないと思うよ?」

「そうですね!うーん、ノーイはどれがオススメですか?」

「…そうだね、ここの物語は読んだことのないものばかりかな」

本棚には恋愛色の強いタイトルがずらりと並んでいた。

タイトルを確認せずに適当に手に取った本を開く、横から覗いたツムギが首をかしげた。

「うーん?エマルニャルは薄青く染まった喉の鱗をマレリオルグの尾へとふれ合わせた。「私の逆鱗に触れるのは貴方だけと何度いわせるの?」そう言いながら尾の飾り鱗に指をはわせ…?」


母上ーーーー!!!!!

なんて本を置いてるんですか!!!


ツムギの口から紡がれた衝撃的な内容に思わず噎せそうになった。

噎せうになったが堪えた。

喉がぐうっと奇妙な音をたてたが、なんとか耐えた。


そしてそっと本を閉じる。

「確か逆鱗に触れると凄くおこられちゃうんですよね?」

ツムギは不思議そうに首をかしげる。

誰だそんな事を子供におしえたのは。

「怒られる時もある…かな?」

番以外に触られたら怒るだろう、普通は触らない鱗だ。番同士でそういう雰囲気になった時やなりたいときに触る鱗。


いつかツムギに…いや、ダメだ。


不埒な思考になりかける己をあわてて律する。

「ノーイにもあるんですか?逆鱗」

そんな純粋な顔で聞かないでほしい。「そうだね…ある…ね」

努めて平静を装い答えるのが精一杯だった。

「そのうち触らせてください」

にこにこと可愛らしい笑顔でそんな事を言う番に目眩がする。

「そ、そのうちに…必ず」

そう、答えつつ下の方にある本を見るふりをしてしゃがむ。

辛い。

番が純粋過ぎて辛い。

頭の中に逆鱗に柔らかな指が這う映像が頭から離れない。


ダメだ、何か違うことを考えよう…

そうだ、400年前に木を退かした時にうっかり目があったモモスラライの幼虫のことを思いだそう。幼虫といえどあの芋虫の口は気をつけなければならない鋭さだ、あの時は肝が冷えた…「よし!」


勢いよく立ち上がる。

「ノーイその本がオススメですか?」

先ほどの本を手に取ったままだった。

「いや!?違うのがいいとおもうな!?」

慌てて本棚に戻す。

「うーん、じゃあ、これかこれかかな『竜人にいたる病』か『竜と火をみつめて』どっちがいいですか?」

ツムギが2冊の本を差し出してきた。

『竜人にいたる病』は恋愛ではない。こんなミステリー恋愛棚に置いたのは誰だ。

とりあえずツムギにはもう一冊の法を薦めておいた。


タイトル的には火竜の話だろう。


「色んな本があって楽しかったです」

部屋に戻りながら話すツムギの頭を撫でる。

つるりとした滑らかなさわり心地を堪能しながら…早急に蔵書室を健全な部屋にしなくてはならない。


そう心に誓った。





「エマルニャル夫人」


タイトルにニャルが入っていることでもわかるように、非常にぬるぬるとした物語である。

エマルニャル夫人とマレリオルグのぬるぬるに始まりぬるぬるに終わる物話である。

大人しかったエマルニャル夫人がぬるぬるを経験し非常に過激に変わっていく様子が克明に描かれている。物語全体に漂う淫靡で気だるげな雰囲気が人気を博した。

特に己の逆鱗に尾を触れさせ、飾り鱗に触れた後舌を絡め口に含む場面では何人もの雄竜人がしゃがみこみ悶えた。


非現実的ながらもそのニャル具合は非常に参考になるので一読に値する。



竜島社発行

投票形式小説案内本

「竜人作家この恋愛小説がスゴイ!!」


より抜粋



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