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考える竜

部屋に戻っる途中のツムギの質問はとても不思議なものだった。

当たり前のものも、そうではないものも色々と織り混ぜて質問してくるのだ。

そして難しい質問もしてくる。素材は何か、使われている総数はいくつか。およそ子供らしくない質問もある。そしてツムギは暗算が得意なようである。つくづくどのような環境にいたのか疑問である。


部屋に戻るとツムギは「つがいは何をするのか?」と聞いてきた。

返事に困る。

まずは側に居てくれればいい。と答えたがうまく伝わらないようだ。


竜王種である私が狂わないように側にいること。


竜人と世界にとってはそれが一番大事なのだが…

本来の番同士なら、私の卵を産んで…と頼むものであるが、流石にツムギにはまだ早すぎる。蜜月を共にすごそうなどとも言えない。そもそも竜王種が他の種族と勾配したという前例も無い、竜人は卵生であるし人族は胎生だと聞くし…互いの種がかなり異なるためこればかりは調べないと生殖すらどうなるかわからない。


まずは側に…ではなくもう今後ずっと私の側にるだけでいいと断言してもいいのではないだろうか。

ちらり、と視線をむけた先にはちょっと困ったような顔で首を傾げるツムギ。

かわいい。

非常にかわいい。


「ノーイは何をされているんですか?お仕事とか…」

そう聞かれてまた返答に困る。

仕事…はしてないか。以前は城の結界の維持や魔物の討伐もしていたが…ここ近年は荒ぶる己の魔力を抑えることに心血を注いでいたわけだし…思わずメロデイアと顔を見合せてしまう。

「ノーイはお城に住むのに仕事をしてないんですか?」

ツムギの顔が非常に困ったという顔になる。ああ、そんな顔をしないでほしい。

しかし…嘘をつくわけにもいかない。


「そうだね…城には兄上がいるからね。それにこの前までは城の地下にいたから、ここ暫くは外にも出てないね」

「お、お城の地下では何を?」

「…暴れないように縛られてたかな」

うーん…とツムギは考え込んでしまった。そこまで考え込む事だろうか?

マリイミリアがツムギの周りでおろおろとしている。


竜王種は定めをもって生まれる。現王ヘリディオフは国の統治を定められた竜王種、メロデイアは魔力の統制を定められた竜王種、私は世界の力の調整役である。大きすぎる力を持った者や歪んだ力を持つものを、世界の望む形にすることを定められている。

竜王種にしか解決できない課題が山のようにあるので、決まった仕事をするものではないのだが…

ツムギにそれをどう伝えようか。


「ノーイ、働かざる者食うべからずなんです。働かない人はご飯を食べてはいけないんです。私も頑張りますから一緒にお仕事探しましょうね!!!」


ひどく真剣な顔でツムギは言う。

心持ち顔色は悪かった。

そして発された言葉は…


衝撃的な言葉だった。



まだ大人の庇護のもとにあり、労働とは無縁であるはずの幼子が、必死な顔で言う、その言葉の異常さ。


働かざる者食うべからず。


つまり、ツムギは働かなくては食事すら満足に出来ない環境におり、その意識が頭に叩きこまれているのだ。

思わずぎゅうと抱き締める。


何もかもから君を護れるように。

君がそんな悲しい言葉を忘れるように。

君がいつでも笑えるように。


「うん、そうだね…では、兄上に仕事が無いか聞いておこうか。」

「そうですよ、ノーイ!脱ひきこもりです!」


ひきこもりとはなんだろうか?

まずは…

東の山に住む大きくなりすぎた黄金の三ツ又の亜竜でも討伐してくるかな。


あの鱗なら綺麗だから君も喜ぶかもしれない。


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