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大人しい方


ツィー様は大人しい方である。



それがマリイミリアの印象であった。

魔道具の影響下にあったときも、そこから抜け出された今も、会話をしているとその謙虚さが伺えた。


怒って壁を壊したり、何気なく手をついてソファーを壊したり、うっかり花瓶を割ったり、意図的にドアを壊したり、部屋であろうと闘いを挑んできたり…というようなことはなかった。


竜人では当たり前のように起こる事。

そこため、修繕の手間を省くため城には復元魔法が常に展開されている。


壊れないようにはしていない。必ず一度壊れるようになっている。それは他の種族との共存には必要不可欠なためであるが不便であることは否めない。


けれど、ツィー様にはその様子も見られず、そもそもそういった破壊行為や戦闘を行う認識すらないようだった。


大人しい方である。


そして…必要なものは無いかと聞いた返事は


「うーん、そうだ、本を読みたいです。竜人国のことを知りたいので」


とても控えめな回答をお答えくださいました。

気の強い竜人の雌ならばここぞとばかりに様々な要求をするのですが…

どうやらそういったことにも不馴れなご様子。


「わかりましたわ、解りやすいものを何冊かご用意いたしますわ。後で図書室もご案内いたしますね」


ノヴァイハ様とメロデイア様の微かな声のやり取りが聞こえてくる。

只人のツムギ様には聞こえぬ音。


「お前が幸せにしてやるんだ」


その通りですわ。メロデイア様。


幸せとは言い難い環境置かれていたと思われるツィー様。


念のため今はまだ、あの怪我の原因を聞くのは止めようとメロデイア様が提案しているのが聞こえる。死に直結するような、記憶を思い起こさせることは危険を伴う。安定したとはいえ魔力暴走の可能性はゼロにはならない。


そして、もしツィー様があの怪我のことを忘れているならば、あえてゆり起こすこともない、と。


そして、やはりツィー様の記憶には混濁があるようで…考えても思い出せない。というようなお顔を時折みかけます。


「お庭にお散歩に行くのもいいと思いますわ、とてもお花がきれいに咲いてますし、もう少しお元気になられたら街にもいきましょうね」


きっと、ノヴァイハ様が素敵にエスコートしてくださいます。


「えっ!外に出ても良いんですか?」


驚いたように返される言葉に胸がつまる。

まさか出られるなんて…というお顔で少し困惑すら滲ませる。


外に出るということが出来るわけがないというその思考にツィー様の過去がのぞく。


「ええ、たくさんお出かけなさってください、そして好きになってくださいこの国を」




そして、番のノヴァイハ様も。




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