可能性に気づく私
服を見に行こう。と言われて立ち上がろうとした私をノヴァイハは抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこである。
「ひゃぁっ!!」
びっくりして変な声でた。
そして、慌ててノヴァイハの首…というか肩?いや、全体にしがみついた。
だって落ちるって思ったから。
「おお重いから、おろしてぇ!」
動揺しながら叫ぶ私にノヴァイハは凄く不思議そうな顔をした。
「どうしたの?ずっとこうやって移動していたのに…」
「うそぉ!!」
知らされた衝撃の事実。
そういわれてみれば、こうやって移動していたような…気もしなくもないような?
「これまでもずっと落としてないから安心していいよ、もちろんこれからもそんなことは起きないからね」
そういう問題じゃないよぅ!
「無理ぃ!降ろしてくださいぃぃ」
誰だこれが乙女の夢だっていったやつ!
凄い安定感ないよ!?
凄く居たたまれないよ!?
見た目より重いとか思われてたらどうする!?
あまりに私が暴れるのでノヴァイハは私を下に降ろしてくれた。とても残念そうな顔で。
地面に立つと足がふらついた。
ずっと寝ていたからからかもしれない。
そんな私をノヴァイハは嬉しそうな顔で支えてクローゼットに連れていってくれた。
「さあ、好きなのを選んで?」
と開かれたクローゼットは…軽くひと部屋分はあった。
なんという無駄遣い…
そしてフリルふわふわーリボンわっさーなメルヘンドレスがてんこ盛り!な中から無難なワンピースを選んで着た。
薄いブルーとホワイトのストライプ。避暑地のお嬢様風。
ギリギリセーフ、年齢的に非常にギリギリなデザイン。
もしかしたら私は異世界ものの定番、年齢をとても幼いと勘違いされる。
という珍現象を体験中なのかもしれない。
ノヴァイハはアリスのようなエプロンドレスを勧めてきた。
…それは…
明らかに子供服だよね?
それともそういう趣味…なの!?
すこし心を抉られる体験をした後に、続きの間に行くとテーブルにはお茶がお菓子と共にセッティングされていた。
「まあ、可愛いわ~さあ、お嬢ちゃん座ってちょうだい、色々と聞きたいことがあるのよ」
そういってメロデイアさんは私に向かい側の椅子を勧めた。ノヴァイハは隣に座った。近い、とても距離が近い。
「その隣に座るヘボ竜じゃ、きっと聞けないだろうから私が色々と聞くわ。貴方は何処からきたの?あの怪我は何?」
そう、問われて思い出す、異世界についての情報は調整が入るって言われたことを。どう入るんだろう?
異世界については伏せなきゃダメなんだろうけど…
「私は小さな島国の…」
そこから先が、思い浮かばなかった。
ううっ…これか、調整って。
考えるだけなら思い浮かぶのに、口に出そうとすると一気に考えが纏まらなくなる。
「うーん、と…なんだろう?…島国の…高い…住む?」
高い山の麓にある家に住んでいて、って言いたいのに全く言葉になっていかない。
うーん、唸る私にノヴァイハが心配そうに手を握ってくる。
「ツムギ、無理をしなくていいから。」
「そうね、魔力に乱れはさほどないけれないけれど…無理はしなくていいわ。年はいくつなのかしら?」
「年は19です」
『19歳!?』
ノヴァイハとメロデイアさんが驚いて立ち上がった。
こくん、と頷きを返事とする。
「ちょ、ちょっと…ノヴァイハ…これは流石にひくわ。なんて子供を番にしてんのよ。ほぼ赤ん坊じゃないの。年齢を確認してからにしなさいよ!」
「ごめん、ツムギ…君の成長をそんなに早くに止めてしまったなんて…」
ノヴァイハを足蹴にして怒るメロデイアさんと、青い顔で踞って震えるノヴァイハ。
えっ!?ちょっと待って、19歳は赤ん坊なの!?