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花咲く竜

舐めた。

ツムギが頬の涙を舐めた。

私の頬に唇が触れた。



頭のなかに花が咲いた。

真っ白な、真っ白な花が咲いた。


先ほどまでの悲しみも喜びも

全てをおおい尽くす程の白い花。


「ちょっと甘い」


なんて微笑まないでくれ。

目を覚ましたツムギが可愛すぎて。

キラキラ輝く瞳が美しすぎて

咲いた白い花が溢れて、胸がはりさけそうで苦しい。


すこし照れて染まる頬。


どうしよう。


どうしてくれようかこの可愛い生き物を。





「ねぇ、とりあえずそこのお二人さん、そろそろ此方に戻ってらっしゃい?」

女性としては低すぎる声、メロデイアがベッドの横にいた。


「はっ!!すみません!!…えーっと…」

「メロデイアよ、お嬢ちゃん。よろしくね」

「はいっ!よろしくお願いいたします」

「やっぱり寝てるときとは違うわね、もっと大人しい子かと思ってたけれど…今も小動物みたいで可愛いわぁ」


メロデイアがツムギの頭をぐりぐりと撫でた。

腹の底がモヤッとする。


「近い 、それにツムギに触るな。ツムギ、メロデイアはこんな格好してるけど雄だ。近づいては駄目だよ?」

ツムギを胸の中に閉じ込める。

「ちょ、ちょっと、ノーイ!?失礼だよ!?」

もぞもぞと暴れるツムギを押さえ込む。


「いいのいいの、お嬢ちゃん、これは番のいる雄の普通の反応よ。体の調子はどう?視たところ魔力器に異常は無さそうね。」


腕の隙間からむぎゅーっと頭が出てきた。そして、顔を半分だけ出してメロデイアと話すツムギ。

「まりょくき?えーっと、体は凄く調子が良いです」

パチパチと瞳を瞬かせる様子は…もう、モイマフィフィーリルにしか見えない。


「なら良かったわ。まずは着替えて、お茶にしましょう、そしてお話を聞かせてちょうだい?」


「そうだね、私の愛しいモイマフィフィーリル、何を着ようか?君が眠っている間に沢山用意したんだよ、さあ、おいで?」


「モイマ?」

「うん、可愛い私のモイマフィフィーリルツムギ行こうか。」


もしかしたら…着せることがないかもしれない。と思いながら作り、クローゼットに納められた服の数々。

この元気なツムギには明るい色が似合うかな、それとも暗い色にしてその輝きを引き立たせようか。



きっとどの服も君に似合う。






『スナフの花』


番への愛に目覚めた雄竜人の脳内に時折咲く花のことを指す。

幻の花であるため花屋の店先に並ぶことはない。勿論、桶に入れられるものでもない。ただ、色や形状共に様々な花であることが聞き取り調査により判明している。

竜人それぞれの好みで胸に咲く美しい幻の花である。

幻の花ゆえ、誰が一番だと争うことは出来ない筈なのだが、時折雄竜人同士で「我が花がいちばん美しい」と争いになることがある。

一人一人違う愛の種を持ちそれを芽吹かせ、その花を咲かせることだけに愛を注げばいいのであるが、雄竜人の番への愛は綺麗事だけでは済まされないものである。

別名「背景花」番を美しく彩る幻想の花、微笑んだ番の後ろに頻繁に咲くという。


例)

「君への愛で咲くスナフの花は世界でひとつしかないんだ。」

「君が僕に咲かせるスナフの花の美しさを君にも見せたいから…(そっと抱き締める)」



竜人国世代を越えたベストセラー

「番に愛を伝える100万の手引き」

より抜粋




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