表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/134

スープと私

ノックとともに優しそうな年配の女性が朝食を運んできてくれた。

女性はてきぱきとベッドのうえに朝食を広げいく。


「ノヴァイハ様からツィー様とお呼びするようにと…」

「はいっ!みねまえ つむぎと申します!!」


緊張しすぎて、もの凄く元気な子みたいに答えてしまった。

…恥ずかしい…

「私のことはマリイミリアと、ツィー様のお世話を陛下より仰せつかりました」


にっこり。


目の端の皺が凄く可愛くみえた。

私もこんな風に歳をとりたいな。

そう思える素敵な微笑み。

「マリイミリアは見た目と中身の差が激しいからツムギも気を付けるんだよ」

見惚れてたらいつの間にか戻ってきてたノヴァイハがちょっと失礼なことを言っていた。

「マリイミリアと私は一緒に育った仲なんだ」

年がずいんぶん離れてるのに?そう聞こうとしたけれど

口元に寄せられたスープの入ったスプーンに意識を持っていかれてその問いは口から出ることはなかった。


「はい、どうぞ、ずっと食事をしていなかったからまずはスープだけで我慢してね」


キラキラ笑顔で微笑まれて『嫌とは言えない雰囲気』ってものを身を持って知ってしまった。


ここは、いやいやいや、自分で食べられますから!!っていう王道を…


ピンクの頭のキラキラ美形は私がスープを飲むことを微塵も疑ってない。

無理だ。

この状況で断るの無理だ。


ううっ…食べます…いただきます。


「おいしい」


ちょっと栗みたい味のするほんのり甘いミルクスープだった。

色は薄い緑だけど。

口の端についてしまったのを舌でペロリとなめる。

うん、やっぱり栗みたいな味。



横を見たら顔を真っ赤にしたノヴァイハが顔を口を押さえて猛烈照れていた。

縦に裂けたチョコミント色の目がうるうるだ。



ねえ、そっち!?照れるのそっちなの!?







朝食は大変だった。

少し困った顔のツムギにスプーンに掬ったスープを飲ませたその瞬間頭の天辺に雷が落ちたみたいに体が痺れた。

伏せられた睫毛とか、

濡れた唇とちらりとのぞいた舌

こくりとうごく喉。


私は思わず口を押さえた。


つがいが可愛すぎて辛い。

もう、可愛すぎて色々出てきそうだ。



鱗とか尻尾とか。



でも、ツムギは尻尾も鱗も無い人族だから竜人の番同士がするように尻尾をからませたり鱗を擦りあわせたりはできない。


それにまだ何も知らないツムギを驚かせてしまう。



顔をあげるとまたちょっと困った顔のツムギ


そうだ、

まず私がすることはこのスープを恙無く番にのませることだ。


動揺してこぼさないように。


それだけに細心の注意を払おう。

すべてはそれからだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ