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薄荷色にまどろむ私

ノヴァイハのピンクに染まった髪をみていたら急に眠くなってきた。


「あれ?なんで?ねむい…」

さっきあんなにすっきりしてたのに。

「魔力を使ったからだよ。ここにいるから寝ていいよ」

ピンクの髪をさらりとうしろに流してノヴァイハは椅子に座った。


「ノーイここにいるの?」

「うんここにいるよ」

「椅子で寝るの?」

「寝ないよずっと君を見てる。誰からも守るよ君の眠りを私の可愛い番」

「つ…がい?」

この時私は猛烈眠かった。

つがいってどこかで聞いたな~っておもったけど、眠さが勝った。

ものすごく眠い、とにかく眠い。


それにちょっと思い出したのだ。

ここが知らない場所だって。

眠たかったけど心細かった。

ここが飛ばされた場所だって気づいたから。なのに、気付いた端から忘れていく。忘れていくから酷く心細くて…


だから…甘えたんだと思う。

どこまでも優しいこの人に。


「うん、ノーイもいっしょに寝よう、おふとんあったかい…」

そういうとノヴァイハは凄くびっくりした顔をした。

「え!?えっ!?同衾はちょっとまだ早い!?」

何でそんなに慌ててるんだろう?

この時の私は本当に解っていなかった。

「どうきん?」

「いや、うん、ごめん添い寝だね。ポンポンしてあげる」

ノヴァイハはちょっと布団を持ち上げて私の横に滑り込んできた。

そしてポンポンって布団を軽く叩きはじめた。

お母さんが子供にするように。

「ノーイはわにさんみたい…ね…」

縦に裂けたその瞳孔は昔読んでもらった絵本のあのワニさんみたい。

「ワニ…さん…好きだったの…チョコミントも…」


「えっツムギ!? ワニさんって誰!?チョコミントもって!?」



起きてからこの事を思い出して私は羞恥に悶えることとなった。

19歳がすることじゃないよね!!!




愛らしい番の横でノヴァイハは悶々とする。

ワニって誰だ。

私に似てるワニさんって誰だ。

しかもチョコミントもって…


しかも好きだったって何だ!?



くうくうと胸のなかで眠る番の姿の可愛さは筆舌に尽くしがたい。

先ほどの言葉は気になるが。


ツムギは丸くなって腕の中で寝てる。


やっぱりモイマフィフィーリルに似てる。

頬をつんとつつくとするりと指にすりよってそしてほにゃりと笑った。



うわぁ!!!

な ん だ こ れーーーー!!!!



ビッタンビッタンと尻尾が床をたたく。

興奮のあまり尻尾がでてしまった。


番って、番って…こんなに可愛いんだ!!


息が苦しい。

可愛いって苦しいんだ

知らなかった。

こんなことツムギに会わなかったらずっと知らないままだったのだろう。


ツムギは何歳だろう?こんなに小さいのだから150歳くらいかな?

きっと成人前だろう。

同衾をしらなかったくらいだからもっと小さいのかな?

只人は小さいから年がわからないな…

こんな小さい子の未来を変えてしまったことに…微塵の後悔もない。


…後悔はないけれど罪悪感はある。


この胸の痛みはずっと消えない。

だから…

だから君を誰よりも幸せにしてみせよう。



ビッタンビッタンいっている尻尾がうるさかったのかツムギの目がゆるりとあいた。

私は慌てて尻尾をとめた。


「…ん…そうだ…つがいに…あうって…いわれ…」


て…って言いながらまた眠りの中に沈んでいってしまった。



私は優しくあたたかな思いが急にさめていくのを感じた。

変わりに沸き起こる黒い怒り。


つがいに会うって言われた?

誰に?

誰が君をここに送ったの?

君をあんな姿にして?



ねえ、君は…君はどこにいたの?


どろどろと黒い怒りが私を染め上げる。

許せない、許せない。

この子を、あんな姿にした奴等を一人残らず殺してやる。

ガチガチと歯がなった。

獲物をどうやって探そうか。

どうやって仕留めようか。

私の番に手を出した愚か者どもを。


いっそ人族の住む大陸を全て水に沈めてやろう。やつらはどの大陸にもいるか竜人国の回り全てを焼き付くしてしまう方が



暗い部屋の中で薄い赤い髪がツムギにかかる。

ツムギの好きなピンク色。

あの日から自分も好きになった番からの贈り物…それをみていたらスッと煮えたぎる怒りが熱を引いた。


違う。



どろどろとした怒りが萎んでいけば、残るのは後悔。


怒るべきはそこじゃ無いじゃないか。


どうして私はこの子の側にいなかった?


ずっと探してた。

ずっと会いたかった。

長い、長い間待っていた。

心が壊れるまで君を待ってた。

君が産まれるのを。


けれど…


ここ数百年はどうだ?

狂気にとらわれ城の地下で悲嘆にくれていただけじゃないか。

そんなことをせずに世界中を飛んで探せばよかった。

そうすればもっと早くツムギに会えていた。

全く感じない気配が作為的なものだったとしても、


近くにいけば解ったはずだ。

目が合えば、解ったはずだ。


見つけられたはずだ私のつがいを。


私は…

どうして私はツムギのいちばん辛いときに側にいなかった?



四肢をくだかれ、臓腑をつぶされ、息も出来ずに死に逝くだけになるまで見つけられなかった。

番が死の恐怖に晒されているときに涙をぬぐうこともできなかった。

上げた悲鳴の一つすらきいてあげることができなかった。



助けられなかったこの子を。



救ってあげられなかった、誰よりも大切なはずの番を。



ボロボロと涙がこぼれた。



ごめん、ごめんね、私のつがい。





いちばんの愚か者はこの私だ。





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