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幸せを知る竜

ゴホッ押さえた口からこらえきれず中身が溢れた。


昔からマリイミリアの拳は容赦がない。


今はそのくらいしないと私が正気に戻らないのだから仕方ない。

…さっきは半分正気に戻っていた気もするが。


血で番の眠るベッドを汚さぬために後ろを向く。

ゴホッと噎せると潰れた肺にたまった血が垂れた。


竜人の特に竜王種は治癒力に優れているので傷は既に塞がっている。

肺に溜まった血を吐き出せばもう問題はない。

とても頑丈だと思う。

この頑丈さをわずかでいいから番にわけてあげたいくらいだ。はあっとため息をつくと



そっと、暖かなものが腕に触れた。


「だ…い…じょーぶ…ですか?」


息がとまる、呼吸さえわすれて振り返れば髪よりも透明感のある深い茶色の瞳。

その瞳と目があった。


ああ、こんな素敵な色を瞼の向こうに隠していたんだ。


吐息は甘い香り、瞬きのたびに光が舞い鈴を鳴らすような涼やかな甘い声が私を包む。


すべてが何よりも輝いていた。

そのすべてが私を魅了した。



それに…


「あのっ…ち…血が…」


私の番は世界でいちばん心優しい。




伸ばされた手をそっと掴む。

血は浄化魔術で綺麗に消した。

この優しい手を汚さないように。



「大丈夫、もう痛くないから」



やわらかな手をそのまま頬にあてて目をとじる。

もうどこも痛くない。

ずっと…

ずっと痛かった胸の奥も。



「え!?えぇっ!?」


驚いた少しかすれた声が耳をくすぐる。

目をひらくと少し驚いたような困ったような顔

そんな顔をしていても君は誰よりも可愛らしい。


「私はノヴァイハ。ねぇ、君の名前は?」


問いかける声が甘いのが自分でも解る。

君に触れられる幸せ

君に名前を告げられる幸せ

君が私の目を見つめ返してくれる幸せ

君の返事を待てる幸せ

君の名前を聞ける幸せ


ああ、こんなに私を幸せにしてくれる君に私は何を返せるだろう?



「えっと…みねまえつむぎです」


「ミエーマツィーギ?」


「みねまえつむぎ です。つむぎ。」


「ミェーマツゥーギディス?ツーウギ?」



嫌な汗が背中を流れた。



番の…番の名前が…難しすぎる。






異世界転位恋愛ランキング3位!

日間総合ランキング26位!!


びっくりして二度見、三度見しました。


喜ぶっていうか…逆にびびるよ!?なちかーむです。


ここまでお付き合いありがとうございます~(*≧∀≦*)

読んだあなたがわずかにでもニヤリとできれば幸いです。



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