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ギザードと私





痛い。




ぎりぎりと押し潰されるような痛みに目がさめた。

真っ暗な中、全方向がぬるつく何かとでこぼことした弾力のあるものに挟まれていることに気づく。

それに…


「はっ…ぁ…」


息が苦しい。

体を挟む壁は時折ぐにりと撓み、その度にずるり、ずるりと体が下へ下へと僅ずつすべり落ちていく。


「ぅ…」


ずきり、ずきりと酷く足先が痛む。

どうやら足の先から硬い何かに挟まれているらしい。

辺りには石同士がゴツゴツとぶつかりギシギチと砕ける音がそこかしこで聞こえていた。

音と痛みだけが真っ暗闇の中で酷く鮮明だった。


ハッハッっと薄い空気を吸おうとするけれど、あせればあせるほど、どんどん息が苦しくなっていく。


ああ、もう何が何だかわからない。


何で私はこんなところにいるんだろう?

さっきまで花の溢れる庭園を散歩していたのに。


真っ暗闇のなか、急に床というか壁というか…私が包まれている空間そのものがぐわんとたわみ、それに伴い足首をギリギリと押し潰していた硬いものが膝の上まで這い上がり…


「ーーーッぁ!!」


ごきり、と何かがつぶれる音とそのあまりの痛みに、私の意識は目の前の暗闇に吸い込まれていった。






再び目を覚ましたその場所は案の定というか、安定のあの場所。



「あれ?つむぎたん何でこんなとこきてんの?」



寝転がってマンガ読んでたのはヒヨコみたいなふわふわの黄色い頭の…


「まずったな~今センパイ居ないんだよね~あ、ポテトチップス食べる?」


えーッと…今ここに来てるってことは…


「ん、つむぎたん今死にかけだね☆」


やっぱり!!

そうだよね、そんな予感してました。


「大丈夫だって~安心していいよ!いつでもギリギリ瀕死で助かる加護つけてるからさ、魂ごと消滅しなければうっかりマグマの中で泳いでも死なないよ?熱いけどネ」


いや、泳ぎませんから!!


「ええー?だって君の恋人は竜じゃん?デートで行かないの?」


え!?いくものなの!?

マグマデートって定番のデートコース!?


「あ、水竜だから行かないか、んー深海の圧力で圧縮されても瀕死で助かるヨ?」


いやいや、深海デートもしないですよ?っていうか水圧で圧縮されても瀕死って…ちょっと意味が


「えー分かりにくいかなぁ?あ、ほら、地球的には象に踏まれても大丈夫みたいな?百人のっても大丈夫なので物置小屋の下に居ても瀕死で助かる的な?まあ、ちょっと潰れちゃうけどさ、ほら、あっちは魔法あるっしょ?」


わぁ!解りやすい~


…かなぁ?



っていうかそこまでされても瀕死で助かるとかそれもう加護っていうか呪いなんじゃ…





「ええー?そんなことないよ~管轄違うからあっちの世界にはあんま干渉できないんだよ?これでも結構目一杯頑張ってるんだよね~」


そうなんですか…ありがとうございます。

ところで先輩は今どちらに?


「ーん、ココアを作ってくれるっていって今給湯室に…」


ええ~それって呼んだら来れる場所に居るじゃないですか…


「まあ、あっちで呼ばれるまで時間ありそうだし、つむぎたんの体が結構面白いことになってるからのんびり待ってればいいよ~」


え?私の体が面白いことに?


「あ、つむぎたん焼き鳥って好き?砂肝って美味しいよね~」


うーん、私は砂肝よりはねぎまの方が好きです。あと、タレよりは塩の方が…っていうか今、焼き鳥関係ないですよね?


私のごく当たり前のツッコミに黄色いヒヨコ頭の後輩くんはにっこりと笑った。



「砂肝ってさぁ、コリコリしてて美味しいよね。あれってさ、筋肉なんだよ。歯がない鶏が丸のみした餌を砂嚢って場所に溜め込んだ石とか砂で擂り潰すんだ、それを動かすための強靭な筋肉の部分だけとって食べてるんだよ」


うん、知ってますよ。高校の生物で習ったもの。


「鳥と爬虫類ってさ、見た目は違うけど中の仕組みは結構同じなんだよね」


へぇ~それは知らなっかたです。


「それにあっちと地球ってモトが同じなんだよね。ボクと先輩の管理してる場所は兄弟みたいなものなんだ」


あぁ、だからやたらと似てるような似ないような感じだったんですね。

っていうかこれって聞いていい話じゃないですよね?


「ん、大丈夫。下に戻ったらこういうのは忘れてるからさ。でもホント良かったよね!!いきなり強烈な消化液の中にドボン!ジュワーッ!!じゃなくってさ!」


え?消化液?



バーン!!



私が首をひねると扉が開くような音とこぶしの聞いた怒声、あ、これは苦労性の先輩…



「おい、このくそ野郎!ココア作るのにカカオ豆乾かすところからとか何の罰ゲ…って、おい!!お前なんでこっちいんだよ!!」


カッと目を見開いたイケメンがこっちを睨んだ

あわわ、先輩はちょっとつり目だからにらまれると怖いです。


「なんでって!ブハッ!そりゃ死にかけてるからッスよ先輩!!」


私と先輩の間で後輩くんはゲラゲラ笑ってる。


「笑い事じゃねぇだろぉぉぉぉ!!」

「やだなぁ、センパイ大丈夫ッスよ~ほら、加護あるから!今日もギリギリ死なない加護バッチリっすよ!!って顔!顔がマジすぎて怖いっす!!」


確かにキレる手前の人の顔は怖いよね。

だって先輩明らかに怒ってるもの。

手に持ったココア入りのマグカップが怒りのせいかぶるぶる震えている。


あ、嫌な予感。


そう思った次の瞬間、黄色いヒヨコ頭は茶色く染まった。

あ、違うか、茶色だけじゃなくて斑に白い。


「ギャー!!!ココアは熱いから、かけるのはマジ勘弁っ!あ!マシュマロ!マシュマロまで入ってるとかセンパイまじ神!!マジゴッド!!でもとけたマシュマロ鬼熱い!!おかわりは、おかわりはフツーにぃぃ!!」


ダッシュで逃げる後輩くんに向かってもう1つのマグカップ、おそらく先輩用を相撲の大一番の塩のようにぶわっと盛大に撒いた。

白い湯気と茶色いココアの飛沫が舞った。

あ、マシュマロも見えた。


そう思った瞬間にドン!と何かが私にぶつかった。


「てめぇの加護だけだと弱すぎるからかけ直すって何度も言ってるじゃねぇかぁぁあ!!!ってう゛ぉい!落ちてんじゃねぇよ!!!」


ち、違います、おちたんじゃなくて落とされたんですぅぅぅ!!!

そこのテヘペロ顔のヒヨコ頭にぃぃ!!


「くっそぉぉぉ!!このやり取り何回目だよ!!」

「えーっと、20回目?」

「こんなときにボケるんじゃねぇこの糞ヒヨコっ!!」


見事なアッパーカットで黄色と茶色斑のヒヨコが赤く弾けるのを見ながら私は落ちた。



あの、二人ほんと相変わらずだなぁなんて思いながら。






今回も今までみたいに目覚めたらベットの上だと安心していたんだ。





そんな確証どこにもないのに。





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