裂けるひよこと私
あ、またここだ。
何度も来たことのある場所。
終わりの、けれど始まりのあの日から何度も来ている場所。
歩いているのか、それとも浮いているのか…
どちらともつかないような奇妙な感覚に身をまかせて漂っていると
「あれぇ~?つむぎたん、またこっち来たの?君の竜が心配するから早く戻らないとだめだよ~?」
ひょっこりと黄色いひよこみたいなピヨピヨ頭の後輩君が少し先のほうから急に現れた。
ああ、やっぱり、ここにいるってことは…
「地球の人間は弱さMAXだからね!うん、今も軽く死にかけてるネ☆」
バチーンとウインクされてもどう反応すればいいか解らないよ!?
「僕の加護がきちんと効いててよかったねぇ~いつもギリギリ死なない加護、我ながらバッチリだねぇ!」
いい仕事してるわ~と満足げに笑う後輩君の後ろから、バタバタっと走ってくる音が聞こえてきた。
「おいっ!てめぇ!ツムギがきたらすぐ教えろっていってただろ!ちょっとまってろよ!加護を今、俺の加護を!!番回路も入れるから帰るんじゃねぇぞぉ!!!」
あ、苦労性の先輩だ。
必死の形相でもイケメンはイケメンだ。
そんな迫り来る先輩に後輩くんは何故かびくりととび跳ねた。
そして、左右をババッとみた後に猛ダッシュでこっちに向かってきた。
「ひいいい!センパイのおやつを盗み食いしたのは出来心っす!!怨みみとかないっす!嫌がらせとかでもないっす!ないっすよぉっ!!」
そういって後輩君が先輩からに逃げようとして、私の方へ走ってきた。
ちょっ!危ない!
ぶつかる!って、今の私って体って在るんだっけ?
それとも半透明的な感じ?
そして案の定、というか意外というか、ふよふよと覚束ない動きの私は後輩君と見事にドンっ!とぶつかり…
私はバランスを崩し真っ逆さまに落ちていく。
「テメェ~!!落としてんじゃねぇよ!!」
「わざとじゃないっす!わざとじゃないっすぅぅ!!ギャー!!!」
相変わらず先輩は苦労しているらしい。
見上げた先では金色ひよこが赤いものを噴き出しているのが見えた。
「お・ま・え・は、俺の世界を滅ぼす気なのか!?あ゛ぁ?」
「そんなことないっす!そんなことないっすううううう!!!ぎゃぁぁぁぁぁあ!裂ける!センパイ裂けるっす!!裂けるのはチーズだけにしてぇぇ!!」
うん、あのチーズ美味しいよね。
きっと盗み食いしたおやつは裂けちゃうチーズだったに違いない。
私はさかずに食べてみたいけど、さかずに食べたことのない小心者だったけど…
後輩くんはきっと丸ごといったんだろうな。
もっしゃーっていったんだと思う。
そういう感じすごくする。
そんなよくわからない確信をもちつつ私はゆっくり落ちていった。
落ちる先はあの腕のなか。
それがいいのか悪いのかわからない。
わからないけれど…
もう戻る場所はそこしかないんだと思った。