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目を閉じる幼竜

久しぶりの更新です。










「今の貴方は番に出会ったばかりの竜人そのものですよ」



いつも穏やかな医術師団長のミエルディオ様のその言葉が頭から離れない。


そう言われてみれば思い当たる節がある。

熱にうかされたようにふわふわと落ち着かない頭も、時折指先まで痺れるように力が入らなくなる体も、早すぎる動悸も…まるで竜煌熱のような症状も番を迎えるために体が変化しているとなっているならばそれで説明がつく。


番。


もし、自分が本当に番に会っているのならば…その人は一体誰なんだろう?

いつ会っだろうか?


うーん、と首を傾げてからふと、ルエルハリオは包帯を使いやすく巻きなおしていた手がいつのまにか止まっていることに気付いた。


慌ててくるくると手繰るように手を動かした。


失敗しても迷惑をかけないような単純な作業だったのに。

ついつい考えに没頭しすぎて手が止まってしまう。





自分は変わってしまうんだろうか。

成体になったとはいえ、まだ雄でも雌でもない自分の体が…本当に大きく変わろうとしているのだろうか?


出会ってもいない番のために。


その実感はまだわかなかった。

けれど、不安な心とは裏腹に本能が、魂の奥深くが花畑で舞う精霊のようにふわふわと浮き足立っているのはわかる。


けれど、浮わついた気持ちは持続することなく再び沈んでいく。


変わった自分に友は何を思うだろう?

あんなにも番の愛を求めてる友は…

番のために変われないことを嘆いている友は…



「ルエルハリオ?ぼうっとしてどうしたんだ?」



声をかけられてハッとする。


目の前には透き通るような青い瞳。

揺らめく魔素がごく薄い時にだけ見える空の向こうの空の色。

昔はもっと薄かったのに今ではこんなにも濃くなってしまった友の瞳。



同じ時に卵から孵ってからずっと一緒にいる友。

その瞳の色が変わっていくのはどういう意味なのか。



気づきたくない。

変わりたくない。

何も望まないから。

番なんていらないから。



なのに…



「モステトリス…その卵どうしたの?」




君の持つ篭からとてもいい匂いがするのは何故なのか。

君から獣の血の匂いがするのは何故なのか。



ああ、お願いだから。



ルエルハリオは目眩をこらえるように目を閉じた。





本能の叫びを聴きたくないんだま。





その卵みたいに。

殻に閉じ込もって丸まっていたいんだ。








竜煌熱

竜人が時折かかる病。特に幼竜に多い。

竜気のバランスが崩れた時や、魔素を過剰に摂取、排出した場合に起こりやすく、ごく僅かな発熱、希高熱を引き起こす。

地竜は特に高熱になりやすく、注意が必要。特に番が水竜の場合は決して看護はせず、避難を勧める。

高温になった地竜が大地を溶かし、地殻の底につくことが希にあるため、竜煌熱の地竜は周辺に燃えるものがない場所に放置することが推奨される。この時、非常に高温となった鱗が煌めくようにががやくため竜煌熱と名がついたとされている。

一方、水竜や砂竜は竜煌熱になった場合は微熱で済むことが多いが全身の倦怠感、食欲不振等が見られる。


<対処法>

特になし。

睡眠をとるとこで快癒する。

また、体内の気を整えることで治りが早くなる。気を整える方法は掌を気脈に沿ってゆっくりと撫でる等がある。(気脈の章参照)


竜煌熱は快癒ののちしばらくすると鱗が剥がれ落ちることがある。

その場合、下から新しい鱗が生えているので特に問題はない。

希に鱗の色が大きく変わる個体がいるが、幼竜の場合は尾の付け根にある薄い青みを帯びた鱗が生え変わることが多い。

竜種によってはそれを成人の印とすることもある。


『鱗の生え変わっていない子竜』や『尻(尾)の青いガキ』という表現は竜煌熱の一連の流れから来ている。(諸説あり)


竜治出版

『よくわかる看護~番との絆をより深める好機とその手順~』より抜粋。



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