第2話
千里に再会したのも、そんなことを思っているときのことだった。
彼女は僕の幼稚園、小学校、中学校とずっと一緒の、まぁ幼馴染といってもいいだろう。
まぁ、みんなが思うような幼馴染ほど、よく話すわけでもないけど・・・。
ベターな物語みたいだけど、僕の初恋の人でもある。
今でも好きだ。
彼女は、都立の進学校に行ってしまって、高校も一緒とは行かなかった。
僕は先生ウケが悪くて、私立じゃないと、ロクな高校に行けなかった。
彼女が行きたいといっていた高校には、試験で平均80点くらいとらないと・・・、と担任に言われていた。
まぁ、都の共通問題とはいえ、さすがに僕の頭では無理だった。
また挑戦する根性もなかった。
再会は、よく考えれば、
テスト前で珍しく塾の自習室ではなく、図書館で勉強するという、気まぐれを起こしたからだった。
彼女は見慣れない制服を着て、熱心に勉強していた。
悪い気がして話しかけたくなかったんだけど、彼女の前の席しか空いていなかったから、そこに座るしかなかった。
座って、30分くらいたってからだろうか?
「忠明・・・?」
と彼女が言ってきた。
「おせぇよ。」
まったく、よく集中力が続くもんだ。
「かなり久しぶりじゃない?今日何時までいるの?」
「終わりまでいるつもりだよ。千里は?」
「私も。一緒に帰らない?」
「ああ。いいよ。」
それからはただひたすら、勉強するのみだ。
彼女の前だから手を抜くわけにもいかず・・・。
いつも図書館だと、漫画読んだりしちゃうから、嫌なんだけど、自習室並みに集中できた。
で、閉館。
彼女とは、家の方向が違うんだけど、夜道を一人で帰すのもこのご時勢、物騒だ。
家まで送ってくことにした。
僕の家は、図書館の前の通り。
「じゃあ、また今度。」
僕の家の前を通った時、彼女がそう言った。
「いや、送っていくよ。物騒だからな。」
「ほんと?じゃあ、お願いね。」
「まぁ、お前襲う物好きもいないだろうけどな・・・。」
つい、皮肉が口を出る。
正直、彼女は可愛い方に分類される。
中学時代も結構モテてた。
だから、僕の台詞は間違いなんだけど。
すかさず彼女も
「忠明の腕力で守れるかどうか・・・。逆に私にもまられたりしないでね!!」
「さすがにそこまではいかねぇよ。」
まぁ、僕は体育の成績万年2。
3すらとったことない。
「でも、体育の成績2だったじゃない。」
「よくそんなこと覚えてるな・・・。」
「だって、忠明くらいだよ。中学の時成績2だったの。」
うっ・・・。言われてみればそうだ・・・。
「水泳できるのに何で、陸に上がるとダメなの?ペンギンみたいよね。水中だと速いけど、陸に上がると・・・。まぁ、足の速さはそこそこだけどね。球技は・・・。」
僕は球技はダメだ。
ボールがパスされても上手くキャッチできないんだよね。
「お前、下らないことほんとよく覚えてるよな。」
「長い付き合いなんだから、それくらい覚えるわよ。ずーっと、そこんところ変わらないんだから。」
「だよな・・・。みんな色々と変わってってるのにな。」
先述のことを思い出して、また少し考えてしまう。
「どうしたの、急に・・・?」
自分の世界に、入り込む一歩手前で、現実世界に引きもどされた。
「いや、色々と思うところがあってさ。」
僕は、先述のことを話した。
「忠明らしくない、悩みだね・・・。そんなことで悩むとは思わんなかった。」
「そう?僕は昔から哲学者肌じゃん?」
彼女は笑いながら
「いやいや、そんなことで悩む時点で、昔と変わってるよ。下らないことで悩みすぎ。じゃあ、送ってくれてありがとね。」
「あっ、ああ。またな。」
気づいたら、もう彼女の家だ。
気づかぬうちに、集中していたようだ。
「あれ、気づいてなかったの?まったく、もう・・・。そんなこと悩んでる割には抜けてるのね。」
笑いながら言われてしまった・・・。
「まぁ、おばさんによろしくな。」
「うん。じゃあ。」
彼女は家に入ってった。
少し気持ちが楽に明るくなっていた。
さぁ、かえってもう一頑張りするかな。
千里は僕の初恋の人をモデルにしました。
彼女は高校で彼氏を作ってしまいましたが・・・。
ふたりはどうなるんでしょうか?