6話
「私はお前の事など聞いていない!! 帰れ!!」
「お母さんそこらへん適当だからねー」
「いいから帰れ!! そしてなぜ腕に抱き付いてるんだ!! それは私のだ!!!」
「良いじゃん別にー」
「はは……お前のではないからな……」
現在、第一回アテラ姉妹会議中である。
帰らせたい姉アテラ。
それを軽く流す妹へティア。
そして巻き込まれた俺。
「ぐぬぬぬぬ……!!」
「へへへ」
「ははは……」
「お前は抱き着かれているからとヘラヘラするな!!!」
「何で!?」
「わわっ」
痛い、超痛い、殴られた。
「家庭内暴力だ……」
「お姉ちゃん暴力はダメだよ?」
「う、うるしゃい!! ……」
「お姉ちゃんしゃいって何?」
「……」
「しゃい(笑)」
「しゃい(笑)」
「うっさい!!」
「べぶ!?」
ぐぉおおおお……は、腹が……!!
何て力してやがる……それで痛いで済む俺もおかしいが……おぇ、さっきのラーメンが……。
「あーあ、お兄ちゃん可哀想……アタシが直してあげる」
「……へティアマジ天使……」
「なっ!? う、浮気……これが浮気……」
「ふぅ……ありがとなへティア」
「えへへ、もっと褒めて良いよ」
「……こうなったら、母上に直接お前を帰らせるように言って来るからな!! 首を洗って待ってろ!!」
あ、飛び出して行った。
俺たち結婚してないんですがね。
ちょっと違うがコレがあの『実家に帰らせてもらいます!!!』というやつだろうか。
やべ、ワクワクしてきた。
「お姉ちゃんって可愛いのに馬鹿だよねー」
「……」
言ってやるな妹よ。
アイツ気にしてんだから。
「さてお兄ちゃん、2人きりだねっ」
「そだな」
「それだけ? 女の子と2人きりだよ?」
「そだな」
女と2人きりか、アイツが毎日ほぼ毎時間くっ付いてたからな。
特に何もないな。
「ぶーぶー、つまんないよ。私はとてもショックだよ」
「そうか」
「……ねぇお兄ちゃん、ちょっとこっち見て」
「あ? なんだ……よ……」
「ふふ、どう? 髪色とか服変えてみたんだけど?」
「馬鹿かお前は!? 透けてんじゃねえか!!」
「別に気にしないけど」
言われてへティアの方を見ると、モロに透けた服を着て髪を下ろしたへティアがいた。
咄嗟に視線を外したが……見えてしまった……。
「どうどう? 可愛い? 意識する? 会ったばかりの女の子の胸と下着見た気持ちってどんな気持ち? ねえどんな気持ち? 」
「……さっ、俺は部屋に戻るから、勝手に寛いでてくれ」
「はっ! これはこれから1人で今のをオカズに!?」
「……」
なーんでこうもこの姉妹は似ているのかなー?
アテラも以前同じ事をして同じ事を言ってたわー、凄いデジャヴ。
「無視は酷くない?」
「はいはい、可愛い可愛い」
「うわー! たらしだー!」
「アホか……」
女神ってまさか全部こんななの?
本当俺の幻想を次々とぶち壊していくなコイツら。
「じゃあな」
「……ん」
リビングにへティアを一人残し俺は部屋へと戻った。
のだが……
「ハァイお兄ちゃん。さぁさぁ、こっちに」
「なぜだ……」
俺のベッドに横になり毛布をペラリと捲っているへティアが居た。
「本当もうやだ……」
「スキンシップだよスキンシップ! お姉ちゃんも居ないしこの機会に距離を縮めようと思ってるんだよ」
「縮めに来過ぎだ馬鹿姉妹。普通の人が100m10秒で来るとしたらお前達は1秒で来てるようなもんだぞ」
「え? 100mなんて1秒もかからないじゃん」
そりゃお前達には瞬間移動とか転移、ワープとかあるからな。
「とにかく出て行け……もう来るなよ」
「あうっ」
ベットから引き摺り出し部屋の外へ追い出す。
「はぁ……厄介な事になったな……」
これから先の事を思うと頭が痛くなる。
賢い分アテラ以上に厄介だ……
「はぁぁぁあ……」
「そんな溜息ばっかしてると幸せが逃げちゃうよ?」
「……どう入ったのかは聞かんが原因である内の1人が何を言ってやがる……」
「てへっ」
チッ。
「今舌打ちした?」
「……いいや? 気のせいじゃないか?」
「ふむむ、とおぉい!」
「のあ!? ちょっ、入ってくんな!!」
「はふ……暖かいのぉー……」
へティアベッドを占領され下に落とされる。
そしてそのまま眠ってしまった。
「……叩き起こすか? いや、もっと何か酷い起こし方をしたいな……辛子を口に突っ込む、それとも水ぶっかけるとか?」
どれにしようか、と悩んでいると誰かに腕を掴まれる。
そして──。
「退避するのを忘れていた……」
「んふふふ……あったか〜……」
「ふっ!! こ、の!! …… はぁ、抜けない……」
本当に寝てんのかよ……どうせ一度こうなったなら絶対この腕から逃れることができないのはアテラで学習済みなので諦める。
無駄に抵抗しても疲れるだけだし。
まぁ……美少女に抱き枕にされるのが嫌なわけではないし……。
「アテラがブチギレるだろうな……」
最後にアテラに殴られている自分の姿を浮かべ、俺は眠りについた。