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5話 来訪者 義妹、現る

 

「なぁ、さっき運動って言ってただろ?」

「あ、ああ! 遂に私と夜の運動を……!!」

「違うから落ち着いて。目輝かせんな、眩しいわ」

「チッ、つまらん男だ、ヘタレめ」

「……」

「何も言えないのか? 情けない」

「……」

「……無視するな……」

「あっ、本返せよ、面白いとこだってのに」


 何なんだよ、全く。

 つまらん、ヘタレ、情けないとな?

 そのつまらなくてヘタレで情けない奴の膝の上に乗せらてるヤツはどこのどいつだ。


「黙って聞いてやるから続きを話せ」

「はぁ……運動で思い付いたんだが、もうちょっと大きくできないのか?」

「胸か? ついこの間少し大きくなっていたぞ」

「……この俺たちが居る、何て言うの? この星? 球?」

「あぁ、できるぞ、今迄一人だったからな。この大きさにしていたんだ。ちなみにここは、そうだな……聖域とでも言ってくれ」

「へー、じゃあデカくできない?」

「何でだ?」

「俺だけが住む家造ってくれよ」

「……断る」


 上目遣いで見んな。

 てか泣くなよ冗談なのに……。


「冗談だから……下界から俺の物って持って来れないか? 部屋の荷物とかさ」

「……ああ」

「じゃあ頼むよ、んで新しく作ったとこによろしく」

「あっ、まだ……」

「シャワー浴びるだけだ」


 膝の上からアテラを退かし庭のテラスに作られたハンモックを降りて家のなかへ戻る。

 生前の物をこっちに持ってこれるのは大変助かる。

 俺は施設を出て一人暮らしだったからウチのなかには色々と見られたらマズイものがあるのだ。

 一応その類の物はダンボールに締まってあるしカモフラージュもしている。

 パソコンは……まぁ大丈夫か。

 使い方知らないだろうし。


「シャワーシャワー、ん?」


 服を脱ぎ浴室へ足を踏み入れ固まる俺。

 目の前では揺れる何枚もの女物のパンツ。

 浴室に不自然に置かれた3箱のテイッシ。

 そしてそのティッシュの横に俺が1度お願いして下界へ行った時にこっそり買った秘密の本がボロボロになり無惨にも破られた状態で置かれていた。


「……アテラァァァァァァァァァア!!!!!」


 俺の怒号が小さな聖域全体へと轟いた。



 ◇◆◇◆◇



「クソ……よくも俺のマイブックを……ちゃんと隠していた筈なのに……どうやって……」

「ふふっ、風呂で随分頑張ったようだな? 最後は私で果てたのか? ん? 言ってみろほら、外に居る私にまで聞こえたぞ?」


 無視。


「チッ、お前に頼まれた通り荷物を運んどいたぞ、ほら、家も」

「はぁ、ありが……なぁ、アレ、何?」

「さぁ?」


 俺が見た物、それは洗濯に使う物干し竿に洗濯ばさみで吊るされた俺の生前お世話になったマイブック達、それから色々なキャラが描かれたゲームパッケージ。

 そして剣で貫かれた俺の、PC……


「お前さぁ……物に妬くなよ……」

「……私は悪くない」

「はぁぁぁ……」


 俺は何も言わず新しく建てられた家へ向かい、荷物を整理した。

 ベッドまで持って来ているとは、正直ちょっと驚いた。




「あら? アテラ?」


 一時間程持って来てもらった漫画を読んで家へ戻ったのだが、アテラが居なかった。

 一応アテラが何度か部屋に訪ねて来たのだが、全て追い払っていた。

 どうせ拗ねてどっかに居るんだろうな。

 と、そう思いながら8つある部屋を一つず見たがどの部屋にも居なかった。

 自分の部屋にも居ないとは、出掛けたのだろうか?


「もういいや、何で俺が探さなきゃいけないんだっての」

「おい」

「うぉっ!? ビビった……どこ居たんだよ?」

「お前の後ろを気配を消してずっと付いて歩いていたぞ」

「オーケー、その何かよく分からん凄い能力使うの禁止な」


 完全に嫌な予感しかしねぇ。

 本当に気づかなかった……。


「仕方ない、ならあとこれとは別に姿も一緒に消すのもあるんだが、それは良いか?」

「お前が馬鹿で助かったわー、それも禁止なー」

「なぜだ!? ちょっと姿を消して入浴タイムや無防備な顔を近くで見るだけじゃないか!?」

「それアウトだから。俺の中では普通に盗撮と同レベルでアウトだから」

「そうか……! その手があったのか!」

「その手とやらを使ったらお前と別居な」

「……鍵なんていう物は私には通用しないからな?」

「そうか。お前2度と俺に触るのも追加で禁止な」

「なっ!? 脅しではないか!?」

「お前の言ったこと冷静に思い出してみな?」

「……」

「な? 落ち着いたら家入ってこい、今日俺飯作るから」


 本当何で見た目は飛び切り良いのに頭がダメんだろうか……神にも完璧はないということか。

 さて、ヤツが恥ずかしさで悶えてる内にちゃちゃって作っちゃいますかー。


「キ○ーピー3分クッキング」




「という事で3分だからもう良いぞ」

「……お前が料理をすると聞いて楽しみにしていた私を殴りたい……」

「あっ、お前カップ麺馬鹿にしてるのか? カップ麺は……立派な料理だろうが!!! この戯けが!!!」

「……そうだな」


 虚ろな目で食うのやめてくんないかな?

 本当に俺が悪いことしたみたいな、なんか変な罪悪感わいてくるから。


「はぁ……楽しみにしていたというのに……手料理……」

「早かったからオカシイとは思ったが期待していたのに……手料理……」

「食いたいなぁ……手料理……」


 うぜぇ……麺啜りながらチラチラ見んなよ。

 どうやって話てんの……。


「そんなに食いたきゃ、店に……ふぅ、行け」

「私はお前の手料理が食べたい」

「あのさぁ……元一人暮らし孤児院育ち17歳が料理作れるとか思ってるのか? 今時いないぞそんなハイスペックな17歳なんて……できても卵かけご飯とかチャーハン、卵焼き、オムレツとかだぞ? ちなみに俺ができるのは卵かけご飯だけな」

「なら覚えろ、そして主人の私に振舞え」

「主人じゃないし」

「お前は私の世話係だ」

「お前の中で俺を勝手に世話係にしてもらっても困る。俺は嫌々、無理やり連れて来られた訳だし」

「ぐっ……」


 確かに今こうして暮らしているのは夫婦みたいで新婚みたい、かもだけどさぁ……無理矢理だったじゃないですかー。


「いきなり腕を掴まれ気付けばこの聖域、転生はダメ、帰さない、嫌なら冥界。心当たりは?」

「……ふふ。ない、かなっ」

「そんな笑顔だけどダメだから」

「あいたたたたたっ!? 待て待て待て! 冗談だ!!」


 少しはにかみながら笑顔で可愛いとこ見せとけば男なんて楽勝っしょっ。

 とか思っていたのかもしれないが俺はそんなに甘くない!!

 制裁のアイアンクロー。

 こういう時だけ意図して可愛いとこ見せて来るからな、甘やかしちゃダメだ。


「てかさぁ、今更なんだけど、俺って死んでるだろ? なのに何で下界に行けるんだ?」

「まぁ簡単な事だ、新しく肉体を生前のコピーとして作って中身だけを移し替えた。要は着ぐるみみたいなものだ」

「記憶とか人格だけを移し変えたと?」

「惜しいな、答えは否だ。魂そのものを移し変えた。記憶、人格、感情、癖、聴覚、味覚、視覚など、それら全てを総じて私達は魂と呼んでいる」

「へぇ……俺知らない間に体弄られてたのか……」

「……今のもう一回言ってくれ」


 こいつの中身チェンジできないかな?

 本当に中身が残念だ……。

 誰か良いお嫁さん居ないかな……。


「って、今思ったでしょ?」


「「!?」」


「久しぶりお姉ちゃん……えへへ、来ちゃったっ」


 突然、食卓に第三者の声が加わった。

 いつの間にかソファに、1人の金髪ツインテールの少女が座って寛いでいた。


 言わせてもらうが、最初の二つは確かに思ったが、三つ目のは思っていない。

 勝手に言わないでくれませんかねぇ……。

 それとアテラよ、今のあのニコッという笑顔を見習ってほしい。

 あれこそが真の笑顔だ。


「な、何でお前が!?」

「何でって、お母さんから聞いてないの?」

「は? 何をだ?」

「私、今日からここでお世話になるから、よろしくね? お兄ちゃんっ」

「なっにぃいいい!?」

「どういう状況だ……」



 どうやら、また面倒くさい事になりそうだ……。



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